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木野龍逸の「ニッポン・リークス」
2018/8/1(No.56)
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[目次]
1.東電福島第一原発事故トピック
【No.56】賠償の責を果たさない東電と経産省
2.編集後記
2.編集後記
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1.福島第一原発事故トピック
【No.56】賠償の責を果たさない東電と経産省
賠償、廃炉を「やり遂げる」という言葉の嘘臭さと、事故処理作業で空手形を乱発する東電と政府
<賠償支払いを拒否する東電の姿勢は、事故の責任から逃げるものではないのか>
東京電力福島第一原子力発電所の原子炉がメルトダウンしてから7年以上が過ぎた今、東電と政府が事故の責任から逃れようとしている。原発事故に係る民事訴訟では、これまでに前橋地裁、千葉地裁、福島地裁、東京地裁、京都地裁、福島地裁いわき支部などで東電に対し、避けられたはずの事故を起こした責任を認め、前述の地裁のうち千葉地裁を除いては国の責任も同様に認めている。
もちろん裁判は三審制なので責任が決定したわけではない。それでもこれまでに裁判所に出された証拠、資料からは、東電は国の防災対策に口を出しているほか、津波対策を先延ばしすることで3.11の被害を招いたとしか考えられないような対応をしてきたことが明らかになっている。また国は、電力会社の意向を汲んだのか(国会事故調は、事業者の虜になっていたと批判している)、電力会社に厳正な対処をしてこなかった。
そうした中、後述するように、東電は、賠償の支払いを渋ることが増えてきている。一方で東電は、国と歩調を合わせるように風評被害対策に力を注いでいる。最後までやり遂げるという言葉と、最近の実績が一致していないのが現状だ。
<東電叩きの会合>
5月30日に原子力規制委員会は臨時会合を開き、東京電力ホールディングスの小早川智明社長ら東京電力関係者のヒアリングを行った。内容は、更田豊志委員長が「(今回の会合は)意見交換と称していて、一方的にこちらが叩く会ではほんとはないはずだが」と発言したほど委員からの批判が続き、ヒアリングというより東電の姿勢のダメさ加減を徹底的に洗い出すような会合になった。
もっとも個人的には、そんな東電を放置している政府の態度も、本来は同じように批判されるべきものではないかという印象を強く持った。
東電を叩くことなった問題のひとつは、福島第一原発のタンクに大量に溜まっている、トリチウムを含む汚染水(規制委や東電は処理済み水と呼んでいる)の処分方針が決まらないことだった。
更田委員長をはじめ複数の委員は、処理方針に関して東電に主体性が見えないと追求し続け、東電の小早川社長は「国の小委員会の結論を踏まえて国が責任を持って決定すると聞いている」と繰り返す。実際、トリチウム水の扱いは資源エネルギー庁が設置した小委員会で検討することになっているので、小早川社長の言うこともあながちトンチンカンなわけではない。
しかし更田委員長は、「東電がまず方針を示してから国に聞くならわかるが、国に判断を委ねようとしている」と指摘。さらには、トリチウム水の扱いすら決められないとなると、「燃料デブリの取り出しが始まったら、搬出するのか、置いておくのか、こういった判断のたびに東京電力が判断するのではなく国の判断を仰ぐべきという、そういう態度、方針をとり続けるのか」と、なかば呆れた調子を隠さずに東電の姿勢を質した。
これに対して小早川社長は、言葉と言葉の間隔を開けながら、「いくつかのお話しをいただいているが、今回の処理水の扱いについては、廃棄物をどう保管するかというよりは環境に対して……、まあ、あの……」と語尾を濁した。
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