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木野龍逸の「ニッポン・リークス」
                   2017/6/3(No.49)
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[目次]
1.東電福島第一原発事故トピック
【No.49】調査するほど廃炉が見えなくなる現実
2.メルマガ後記
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1.福島第一原発事故トピック

<調査するほど廃炉が見えなくなる現実>

 東京電力は5月22日に開催された「特定原子力施設監視・評価検討会」(1F検討会)で、格納容器内部の調査について新たな計画を発表した。中長期ロードマップで明記されている「号機ごとの燃料デブリ取り出し方針」を夏までに決定するという目標に資するよう、調査を実施したい考えだ。

 しかし今年2月と3月に実施した調査で燃料デブリを確認することができないなど、状況にそれほど大きな変化はなかった。このような状況でほんとうに取り出し方針が決められるのか、格納容器内部の調査は東電や政府の思惑とは違い、現実の厳しさを浮き彫りにした形だ。

 新たに発表された計画は2号機と3号機について。2号機は今年度中に圧力容器下部の調査を再度実施する。その際はロボットではなく、長い棒の先にカメラを装着して差し込むシンプルな方法で実施する。

 東芝が2号機調査用に開発したロボットは、2月に実施した調査の途中で凸凹の堆積物に乗り上げ、動けなくなった。そのため大きな目標だった圧力容器下部には到達できず、有線のケーブルを引っ張って動ける場所まで移動し、引き返してきた。調査終了後は、格納容器から取り出して原子炉建屋内に残置している。今後、キャタピラに付着している物質を詳細に分析する予定になっている。

 3号機については、燃料デブリ取り出し方針の決定前に、格納容器内部の調査を実施したい考えだ。しかし原子力規制委員会の更田豊志委員から調査目的を問われた資源エネルギー庁の湯本啓市・原子力発電所事故収束対応室長は、「水位が高いことがわかってから、時間をかけて開発してきた。なにを使ってどう見れるかということを追求した結果として、この夏にいったん、開発したロボット使って中の様子を見てみようということ」と説明。これでは、予算をかけて作ったんだから使ってみるか、というていどに聞こえる。

 このためか更田委員は、「それぞれにとりついて(調査)するのは一見、けっこうだが、リソース配分を考える必要がある」と指摘。来年度以降に優先順位を検討したいと述べた。東電や資エネ庁の意気込みに比べると規制委は、格納容器内部調査が燃料デブリ取り出し方針に与える影響を限定的に見ていることがわかる。

 さらに更田委員は、中長期ロードマップに沿って今年夏までに東電と政府が決めるとしている「号機ごとの燃料デブリ取り出し方針の決定」について、少し言葉を選びながらも次のように厳しい見方を示した。

「これまでに私たちが知っている情報に基づいて決めるっていう方針である以上は、そんなに確定的な方針であろうはずがない。基本方針というと、例えば水中で行うとか中間的なハイブリッドのやりかたと考えがちだが、今年の夏に決められる方針はもっと、もっと基本的な、もっと大枠の方針にならざるをえないと思っている」