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木野龍逸の「ニッポン・リークス」
                   2017/1/4(No.47)
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[目次]
1.東電福島第一原発事故トピック
【No.47】除染は国費で負担できるのか──説明できない経産官僚
2.メルマガ後記
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1.福島第一原発事故トピック
除染は国費で負担できるのか──支離滅裂な経産官僚の説明

 政府の原子力災害対策本部は2016年12月20日に開催した会議で、「原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針」(以下、加速化基本指針)を閣議決定した。この中で政府は、帰還困難区域の除染費用を東電に求償せず、国費で賄うことを明記した。これまでの環境汚染対応の大原則を崩したこの施策は、今後の公害問題に大きな禍根の残すおそれがある。

 なにしろ環境汚染が大きければ大きいほど、原因を作った事業者は自らその責任を果たさなくてもいいことになりかねないからだ。

 福島第一原発事故で大量にまき散らされた放射能汚染を除去し、原状回復するための費用は、第一に、汚染者負担の原則に基づいて東電が負担することが大原則だ。

 第二に、この原則は、放射性物質汚染対処特措法(平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法)で、第44条で「当該関係原子力事業者の負担の下に実施されるものとする」とされ、東電負担が明確に規定されている。

 その後、2013年12月20日に原災本部が決定した「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」(復興加速化指針)で、最終的に国が保有する東電株を売却した利益を除染費用に充てることになった。

 実はこの復興加速化指針ではそれ以外にも問題のある記載があった。この指針が出た時点で計画されている除染以外のもの、つまり16年度以降の除染については「公共事業的観点」で取り組むことが記載されていたことになる。

 この記述は2015年8月31日に原災本部が決定した「帰還困難区域の取扱いに関する考え方」に引き継がれ、「公共事業的観点からインフラ整備と除染を一体的かつ連動して進める方策を、地元の意向を踏まえつつ検討する」ことになった。この時点でメディアや研究者などは、除染費用を東電に求償しない可能性を強く指摘するようになった。

 それでも政府は方針を変えなかった。当然だろう。考え方自体は2013年12月の復興加速化指針で示されていたのだ。

 もっとも現在の担当の経産官僚にしてみれば、決まってから2年も経過しているため、なぜこのような方針になったのか、基本的な考え方は引き継がれていなかったのかもしれない。

 そのことが明確にわかったのが、今回の加速化基本方針だった。12月20日に内閣府の会議室で行われた記者ブリーフィングでは、なぜ除染費用を国費で負担できるのかについて質問が集中。ところが経産省大臣官房福島復興推進グループ統合調整室長を併任している、内閣府原子力被災者生活支援チームの新居恭人参事官は、明確な回答を避け続け、理由を説明することができなかった。このためブリーフィングは2時間近くも続いたのだった。