岩井志麻子「オンナのウラガワ ~名器大作戦~」

第286回 ドライになり切れないウェットな物事のウラガワ(1)

2021/06/30 22:00 投稿

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オンナのウラガワ ~名器大作戦~
第286回 ドライになり切れないウェットな物事のウラガワ(1)

◆もくじ◆

・ドライになり切れないウェットな物事のウラガワ(1)

・最近の志麻子さん 
 徳光正行さんとの共著『凶鳴怪談 呪憶』発売中
 『でえれえ、やっちもねえ』角川ホラー文庫より6月15日発売
 万年アクリルカレンダー再販中
 2/25発売『再生 角川ホラー文庫ベストセレクション』に作品収録。重版決定!
 映画『遊星王子2021』に出演 8/27公開!
 TV「有吉反省会」にヒョウ姿でひきつづき出演中

 カドカワ・ミニッツブック版「オンナのウラガワ」配信中
 MXTV「5時に夢中!」レギュラー出演中

・著者プロフィール

===

梅雨の六月。湿気が多い日本のこの季節だが、
人の性格も人間関係も、同じくウェット、ドライにはなり切れない。

そんなカラッとしていないエピソードをお届け。
先月から書いている、かつての人気漫画家・新州しな乃(仮名)のこと。原稿を売って金策に走っているというが、彼女の話をある男性編集者からも聞いて……。
そしてふっと思い出した、韓国でも日本でも人気があった女性歌手Kのこと……。

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2020年1月「愛しい南国の怖い話のウラガワ
2月「ひきつづき東南アジアの怖い話のウラガワ
3月「どこか心残りの別れのウラガワ
4月「未経験な世の中のあれこれのウラガワ
5月「「あの人実は」「あの人やっぱり」のウラガワ
6月「アマビエ的なものや人のウラガワ
7月「怖い話をエンタメとして楽しみたいウラガワ
8月「どこか楽しめる怖い話のウラガワ
9月「エンタメとして味わいたい人の怖さのウラガワ
10月「いい大人なのに未経験のウラガワ
11月「まだ猶予があるのかもという気分のウラガワ
12月「私なりに引っかかる物事のウラガワ
2021年1月「ゆるく共存していくことを考えさせられるウラガワ
2月「いつの間にか入り込む怖いもののウラガワ
3月「もはや共存するしかないあれこれのウラガワ
4月「変わらぬもの、変わりゆくもののウラガワ
5月「子どもっぽい大人、大人になっても子どもな人のウラガワ


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2014年1月~10月 ベトナムはホーチミンでのウラガワ/ベトナムの愛人のウラガワ/永遠のつかの間のウラガワ ~韓国の夫、ベトナムの愛人~/浮気夫を追いかけて行ったソウルでのウラガワ/韓国の絶倫男とのウラガワ​/ソウルの新愛人のウラガワ​/風俗嬢の順位競争のウラガワ​/夏本番! 怪談エピソードの数々のウラガワ​/「大人の夏休みの日記」なウラガワ​/その道のプロな男たちのウラガワ​

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 六月といえば梅雨なわけで、台風被害は別にするとそんなに雨は嫌いではない。
 やんだ後は空気もきれいになるし、何やらしっとり風情があるというのか、雨音を聞きながらまだ読んでなかったあの本を読もうとか、家にいるのを楽しむ気持ちになる。

 南国のスコールを思い出せば、南国の愛人の物語をまた書きたくなる。常夏の国は雨季と乾季で季節を分けるが、雨季でも長雨はあまりなく、勢いよく降ってすぐやむ。
 そもそも日本は湿度が高く湿気が多い国であるし、人の性格も人間関係も同じくウェットな感じ。どうも、ドライになり切れない。

 というわけで今月は、そんなジメジメ万歳、カラッとしてなくて何が悪い、てな話を書いてみる。例によって全編に渡り、登場人物はすべて仮名にした上で、本人や周りを特定できそうな職種だの経歴だの居住地だの、みんな変更もしくは脚色してある。

                    ※

 先月、ある漫画家達の話を書いた。若いとき漫画を描いていたがあまり売れず筆を折り、しかし金持ちと結婚して優雅な有閑マダムになった岡谷眞子が、往年の人気漫画家である新州しな乃と知り合った。

 最初はファンとして憧れの先輩に舞い上がっていたが、しな乃が生原稿を買ってくれだのナントカの権利を買えだの、猛烈な金くれ攻撃に転じ、困り果ててしまった。
 どんどん、ねだる金額もアップしていくし、話の内容が詐欺になっていったのだ。

 しな乃と長年の付き合いがある男性編集者の永野によると、六十半ばになってネトゲにハマり、そこで知り合った身元不明の変な奴らにタカられているそうだ。

 眞子が助けてもキリがないし、そこまでして助け続ける義理もないので、連絡はブロックした。しかし永野は私を通して顛末を聞き、相談に乗ろうとしな乃に声をかけた。

 ……ここまでが、先月に書いた話だ。その後の進展があったと、眞子に聞いた。なんとなく予想通りとも、想像の斜め上をいった、ともいえる。

 しな乃は永野に対しても、今すぐ五十万貸してくれたら来月は百万にして返すとか、まさに恥も外聞もなく支離滅裂になってきた。

 永野もついにしな乃に向かって、まずはネットゲームやめましょう、ときつくいったら。
「なんかもう、ぼくもどう答えていいかわかんなくなることをいってきました」

 

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