結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年3月15日 Vol.207
はじめに
おはようございます。
いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
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新刊の話。
『数学ガールの秘密ノート/場合の数』 の初校読み合わせは無事に済みました。 今週末に再校がやってくるまでの間は、 『数学ガール6』の方をできるだけ進める予定です。
◆『数学ガールの秘密ノート/場合の数』(結城浩)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797387114/hyam-22/
まだ公開はできませんが、 『数学ガールの秘密ノート/場合の数』の すてきなカバーイラストもできあがってきました。
どうぞお楽しみに!
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学校生活と幸福について。
Twitterでときどき、 「数学的には正しいのに、テストでバツをつけられた」 という話題を見かける。掛け算の順序などの話。
結城は学校生活で、 「テストの答案が正しいのにバツつけられた」 という経験はあまり記憶にない。 もしかしたら、とても幸運だったのかもしれない。
逆の経験がある。 小学一年で「正しい気温の測り方」のテストがあった。 クラス全員が、温度計を直射日光に当てる方を選んだけれど、 私だけが「日陰にする」という正しい方を選んだ。 たぶん、何かの科学雑誌で読んだ知識があったのだと思う。 先生はわざわざ私をほめてくれた。 あれから四十数年過ぎた。 その誇らしい気持ちと「ちゃんとした知識は大事」という記憶、 それから「先生から正当に扱われた」という体験は忘れていない。
いろいろ思い出してきたぞ。 講談社ブルーバックスや、科学雑誌で仕入れた知識を授業でひけらかしても、 教師から怒られた記憶が一回もないな。 中学校で先生に苦笑されたことはあったけど。 私の先生は、いつも私の勝手な言動をうまく扱ってくれたんだなあ。 ときには授業やりにくいこともあっただろうに。改めて感謝である。
小学校や中学校のとき、 授業で先生がしてくれる話は、ファンタジーの世界のように楽しかった。 授業の時間は、先生の話から自分で自由に想像の翼を広げる時間だった。 小学校では五年生が、中学校では二年生が一番楽しかった。 数学と理科が好きだったっけ。
私が描く「数学ガール」の世界は、 私が体験した学校生活を蒸留して描いているのかもしれないなあ。 理想の学び舎として。理想の知的対話として。
小学校のときの先生が言ってたことを思い出す。 正確な言葉は覚えてないけど、 「君(結城)が何を言おうとしているか、 ときどき難しくてわからないけれど、なかなかいいよ!」 ってほめてくれた。 せせこましい世界に押し込めずに、 結城のことを適当に(適切に)放置してくださったんだな、と思う。 私はきっと、とても幸運な学校生活を送ったのだね。
そういえば、 NHKの連ドラ「あさが来た」では女子の高等教育の話題が出てきている。 いい教育はきっと未来を作り、しっかりした国を作る。 いい国を作る、なんて書くと政治的にどうこうと思う人がいるかもしれないけど、 いい国を作りたいと思うのは大事だと思う。 国という枠が大きすぎるなら自分の周りだけでもいいけれど。 自分の周りを住みよくしたい。 みんなで、それぞれの力を合わせて住みよい社会を作りたいというのは、 大事な気持ちだ。
そういう幸福な社会を作っていく上で、教育はとても重要である。 極端なことを言うと、文章を読めず、論理的に考えることができず、 自分の健康に良い食事を選べないとしたら、 個人として幸福に生きることは難しい。 そして幸福に生きることがむずかしい個人が集まっても、 幸福な社会にはならないだろう。 身の回りの説明文を読んで意味を理解する力は、 幸福に生きるために大切な力だ。
教育は、幸福な社会に欠かせない基礎の一つなのである。
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指示に従わない人の話。
一般論である。
世の中には「命じられたことはやらない」という人がいる。
「こうしてください」という指示を口頭であれ文書であれ受け取ると、 そうしたくなくなるという人がいる。
命じられたことだけをあえてやらなかったり、 言われた方法とは違うやり方をしようとしたり、 このくらいでと指示された量をわざと変える人がいる。
相手に対する意地悪な気持ちや、 悪意を持ってそのような行動を取る人もいるが、 特に悪意がないのに何となくそうする人がいる。
特にそういう人を批判しているわけではないし、 そもそも特定の誰かを思い浮かべているわけでもない。 天邪鬼だと揶揄したいわけでもない。 ただ、そのような人が存在することは確かだ。
指示に従わない理由が何なのかは知らない。もしかしたら、 指示によって自分が「支配される」ことが嫌なのかもしれない。 つまり、あえて指示に逆らうことによって支配から逃れようとする試み。 指示に逆らうことができると確かめて、 自分の自由を確認したいのかもしれない。
結城はどちらかといえば、 言われたことをその通りするタイプなので、 本当のところはよくわかっていないのだけれど。
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子供との数学の話。
日曜日の午後、家でごろごろしていたら、 高校生の子供が数学の問題を持ってきました。 問題を見ると、きっと解けるはずの問題。 そこで、子供に言いました。
問題文を読んでください。
グラフをちゃんと描いてください。
グラフはコチャコチャと小さく描くのではなく、
大きくしっかりと描きましょう。
あとは、よく考えてください。
しばらくしたら、彼はちゃんと問題を解いたようです。 よかったよかった。
それからまたしばらくして、 子供が今度は数学の質問を持ってきました。 極限のようです。二人でいっしょに勉強することにしました。 いっしょに声を出して教科書を読み上げ、 私が何点か行間を補足して説明をしました。 適切な例を挙げようと思って、教科書の次のページを見たら、 まさにその適切な例が書かれていました。 数学の教科書ってすばらしいですね。
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そんなところで、今週の結城メルマガを始めましょう。
今週は「再発見の発想法」のコーナーでPDFをお送りします。 また、まだよくまとまっていないのですが、 結城が作る「小さなWebサイト群」の話。 そして「知的納得を求める気持ち」に応える、 教えるときの心がけ。
そんな読み物をお届けします。
どうぞ、ごゆっくりお読みくださいね。
目次
- はじめに
- 再発見の発想法 - DSL
- 作りながら考える「小さなWebサイト群」 - 仕事の心がけ
- 知的納得を求める気持ち - 教えるときの心がけ
- おわりに
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