結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2015年6月2日 Vol.166
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
歴史的に暑かったという2015年の5月が過ぎ、 早いもので今年ももう6月なのですね。 日付は進むけれど、仕事はなかなか進みません(涙)。
先週末には個人的にいろいろとありまして、 今週の頭はちょいとお疲れ気味です。
しかし! そんなことも言っていられませんので、 気持ちをさくっと切り換えて、 今日もていねいに進みましょう。
そうそう、今週は高校生向けの講演会があるのです! 若い人に向けておしゃべりできるのは、とても楽しみ。 私自身がそのプロセスの中で学ぶことが多いからでしょうか。 しっかり準備し、備えていきたいと思います。
なお、この講演会はその学校内のクローズドなイベント…… というか特別授業のようなものですから、一般参加はできません。 講演内容については、うまく読み物という形にまとまりましたら、 この結城メルマガで配信したいと思います。
* * *
画像の話。
Unsplash.comというサイトが気に入っています。
◆Unsplash
https://unsplash.com
このサイトは、
・高画質の美しい写真を、
・無条件で利用できるようなライセンスで公開し、
・定期的に更新する
という特徴を持っています。
通常の画像サイトですと、画像を使うときにクレジットを提示したり、 サイトへのリンクが必要になったりするのですが、 この Unsplash.com は違います。
◆Unsplash License
https://unsplash.com/license
"do whatever you want"というとおり、 何でも自由に好きにして良いというライセンスです。 クリエイティブコモンズのCC0というものですね。
定期的に更新(10日間に10枚ずつ)していますので、私も定期的にチェック。 お気に入り画像として保存し、 ちょっとした雰囲気を出したいときに使っています。
* * *
わからなくなったときの話。
学んでいて、わからなくなったときに、
あああっ!
だからオレはダメなんだあああっ!
こんなこともわからなくてえええっ!
オレは!ダメッ!ダメなんだああああっ!
と思うのはやめたほうがいい。
わからなくなったときは、 特に、わからなくなって泣きそうなときは、 ぐっと、涙をこらえて、
どこまでは、わかるか。
どこから、わからなくなったか。
を見極めるのがいい。
それはときに厳しい現実を見ることになるけれど、 幻想の中に生きるよりはいい。
……と、夜中に勉強しているときによく自分に言い聞かせます。 難しくてわからないときって、何というか、 ちゃぶ台をひっくり返したくなることがあるんですよね。 そして攻撃を自分に向けてしまう。
でも、冷静になってみると、そうやっても話は進まない。 だから、ぐっとこらえて《見極める》ことが大事なんだと思う。
* * *
確率の話。
確率1/2で当たるクジを2回引いたとします。 そのとき、一度も当たらない確率はいくら?
二回とも外れる確率ということだから、 もちろん、1/4 = 0.25です。
では、確率1/100で当たるくじを100回引いたとき、 一度も当たらない確率はいくら?
確率1/100なんだから、100回引いたら1回くらいは当たりそうなものですよね。 でも一度も当たらない確率は意外に高い。 外れる確率0.99の100乗なので、 計算すると約36.6%の確率で一度も当たらないんです(!)
さらに一般化すると、1/nの確率で当たるクジをn回引いたときに 一度も当たらない確率の極限は1/eに収束するようです。
◆数学メモ
http://mathmemo.textfile.org/?20150516222106
確率は直観を裏切ることが多いもの。
同じように統計も難しい。 たとえば「あるコインを2500回投げたとき、表が1300回出た」とします。
コインが偏っていなければ、 表が出るのは1250回ぐらいでしょう。 でも、やってみたら表が1300回出たとする。 表が1300回ということは、1250回より50回も多い。 では、「このコインは偏っている!」と言えるのだろうか。
実は、偏っていないコイン(表が出る確率が正確に0.5であるコイン)でも、 《2500回投げる》という試行を行ったとき、 《表が1200回〜1300回の範囲に入る確率》は約95%であることが計算からわかります。
◆数学メモ
http://mathmemo.textfile.org/?20150518124157
難しいものですね。
* * *
理解する話。
結城が「群の定義」を初めて明確に理解したのは、 それを「自分の本」に書いたときである。
自分が理解していないことを自分の本には書けない。 自分が理解して初めて書くことができる。
文章を書くときにはいつも、
この文章の内容を、
自分は理解して書いているか?
という問いかけを行う。 問いかけながら文章を書いているといってもいい。
この文章の内容を、
自分はほんとうに理解して書いているか?
理解しているはずの内容を文章に書く。 文章を読み返して意味が通じるかを考える。 文章を読みつつ複雑な構造物を作り直し、 それが正しいかを確認する (そしてできれば、美しいかどうかも確認する)。
いわば、執筆は「一人で行うゼミ」なんだね。
* * *
さて、それでは今週の結城メルマガを始めます。
今回の結城メルマガは、仕事に関する読み物が多めです。 全体として何となく矛盾をはらんでいるような、 通常通りのような、そんな一通となっています。
どうぞ、ゆっくりお楽しみください!
目次
- はじめに
- 『不安について』 - 結城浩ミニ文庫
- 経営者のなすべきこと - 仕事の心がけ
- どの仕事をいつ行うか - 仕事の心がけ
- あなたのこと、大好き!
- 未来につながる仕事
- おわりに
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