結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2014年11月4日 Vol.136
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
突然ですが、今週iPhone 6が届くはずなんです。楽しみ!
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新刊の話。
『数学文章作法 推敲編』がアマゾンで予約可能になり、 ありがたいことにたくさんの人に予約していただいているようです。 先日は、ちくま学芸文庫のランキングで、
第1位『数学文章作法 基礎編』Kindle版
第2位『数学文章作法 推敲編』文庫版
第5位『数学文章作法 基礎編』文庫版
となっていました。たくさんの方々の応援に心から感謝いたします。 『数学文章作法 推敲編』の刊行は2014年12月12日の予定です。
◆『数学文章作法 推敲編』
http://mw2.textfile.org/
再校ゲラはもう編集部に返送したので、 結城の作業はほとんど終了です。あとは刊行を待つばかり……
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言葉の話。
言葉遊びが好きです。
大げさなものでなくてもいいんです。 たとえばこんな一言でも十分たのしい。
秋の朝の雨。
「あきのあさのあめ」って「あ」の音が重なりますよね。 こんな言葉を(雨が実際に降っている秋の朝に)思いついたりすると、 何だか楽しくなります。
そして、もう少し続けたくなる。「あ」の音を重ねながら。
秋の朝の雨。明日もあなたに会いたいな。
美味しいものもいいし、動画も楽しい。 でもこんなささやかな言葉遊びでも楽しくなれると思いませんか。
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ブログの話。
技術的なTipsの記事でブログを更新することがある。 たとえば、先日MacをYosemiteにバージョンアップしたときの記事を書いた。
◆MacBook AirをYosemiteにバージョンアップ
http://blog.textfile.org/20141019/yosemite/
内容はそれほど大したことはなくて、 自分がバージョンアップで行った手順を書き、注意したことをメモしておくくらい。 それから、自分が参考にしたWebページへのリンク。 その程度である。
こういう記事を書くのはそれほど時間は掛からないから、 スキマ時間にちゃっと書いてしまう。
一つには「社会への恩返し」の意味もある。 自分が作業するときに他の誰かのWebページを読んで助かったから、 それを他の方へお伝えする、お裾分けするという感覚である。
もう一つは「自分自身の備忘録」という意味もある。 技術的なTipsは、もう一度同じことを自分で体験する際の重要な情報になるからだ。 MacBook AirをYosemiteにバージョンアップすることはないだろうけれど、 「/usr/localに大量のファイルがあると時間が掛かる」という情報は、 将来役に立つかもしれない。 テキストエディタVimでコマンドを作る方法などは今後も役立つかもしれない。
◆文字コードをutf-8にし、改行コードをunixにするVimのコマンドを作る
http://blog.textfile.org/20141101/setuu/
おもしろいもので、自分用の備忘録のつもりで書いたのに、 書いたことによって記憶が定着したために覚えてしまうという効果もある。
それから、技術Tipsのブログ記事を書くのはコンパクトで読みやすい説明文を 書く練習にもなる。特に用語の使い方。自分が文章を読んで理解するのと、 人が読んで理解できるような文章を書くことはずいぶん違う。 短い文章でも「他人が読む」と考えると「読みやすい文章を書かなきゃ」 と自然に考える。それが文章の練習にいいのである。
先日作った「結城のアイコン用のフォント」の作り方も、 自分の備忘録として書いた。 人に読ませるためにまとめると、結局自分のためになる。
◆自分用のWebフォントでアイコンを作る
http://blog.textfile.org/20141031/font/
技術Tipsのブログは、 ずっと「結城浩のはてな日記」に書いてきたが、 最近は「結城浩のブログ」の方に軸足を移してきている。
◆結城浩のはてな日記
http://d.hatena.ne.jp/hyuki
◆結城浩のブログ
http://blog.textfile.org/
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数の話。
「オーダーの感覚」というのは重要だと思う。
「オーダーの感覚」というのは、ざっくりいえば大きな数を扱うときの感覚のこと。 たとえば「93万4152円」と言われたときに「おおよそ100万円」だな、 と思うようなもの。「100万円のオーダー」などと言う。
「値段はいくらくらい?」と聞かれたとき、 「93万4152円」までわからないと答えられないとしたら困るときがある。 気が短い人は「だいたい1万円? 10万円? 100万円?」などと畳みかけたりする。
作業量を見積もるときでも似たような話がある。 「期間はどのくらい?」と聞いたとき、 「いやあ、やってみないとわからないんで」という答えでは困ってしまう。 「1日でできるのか、1週間なのか、1ヶ月なのか、1年なのか?」 と再度聞きたくなることもあるだろう。
先日「公立校の35人学級を40人学級に戻すべき」というニュースが話題になっていた。 「人件費の国負担分を年間約86億円削減できる」という話。
◆35人学級の見直し要請 15年度予算で財務省 文科省反発、調整難航
http://www.47news.jp/47topics/e/258601.php
そんな中、木村先生(@iwaokimura)の「億は 10^8, 兆は 10^12 です」 という以下のツイートを見かけた。
https://twitter.com/iwaokimura/status/525124003972014080
これを読んで、結城も考えた。 「国の歳出は95兆8823億円」で、削減できるのが「約86億円」とすると、 それはいったいどれほどの効果があるのか。
◆国の収入と支出の内訳は?(財務省)
http://www.mof.go.jp/gallery/201305.htm
約95兆をざっくりと100兆のオーダーとしてみる。 そして、約86億もざっくりと100億のオーダーとしてみる。 すると、100兆のうち100億削減。1万分の1が削減できる。
たとえば、年間の支出が400万円の家庭にたとえれば、 約1万分の1の削減というと、400円に相当することになる。
「約86億円削減」というのと「支出400万円の家庭の400円相当」というのでは、 ずいぶん印象が違うなあ。
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note(ノート)の話。
先月の話になりますが、note(ノート)に「サポート機能」が実装されました。 これはノートの読者がクリエイターを金銭的にサポートする機能です。
◆クリエイターを金銭的に支援できる「サポート機能」が実装されました。
https://note.mu/hyuki/n/n1d656ae8dcb6
以前から結城は「投げ銭」スタイルで公開するノートを書いてきました (全部ではありません)。 「投げ銭」スタイルというのは、ノート全文は公開しておいて、 気に入った方が「購入」するというスタイルのことです。
今回公式に導入された「サポート機能」は、 実質上すべてのノートを「投げ銭」スタイルにできる機能ともいえます。 なにしろ、設定でオンにしておけば、すべてのノートの最下部に 「クリエイターをサポート」というボタンが表示されるのですから。 ボタンを押せば、クリエイターに送金する金額を選ぶダイアログが表示されます。
当初からnote(ノート)は、ネットでのお金のやりとりが簡単にできるようにし、 クリエイターと読者とを直接結びつける機能に積極的に取り組んでいます。 今回の「サポート機能」もその方向に沿ったものになりますね。
Webでは作品を公開したり閲覧したりすることが非常に低コストでできます。 これは個人のクリエイターが力を発揮する可能性を大いに高めてくれます。 しかし、どうしてもネックとなるのはお金のやりとりです。
これから売り出そうとする人はじっくり作品を作りたい。 しかし作品が売れていないから別の仕事でお金を稼がなくてはいけない。 そのために作品に取り組む時間が取れない。 note(ノート)での「サポート機能」はその助けになるかしら。
皮算用してみると、なかなか大変であることがわかりますが、 それでも、こういうチャネルがあるのはいいことだと思います。
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iPhoneアプリの話。
PhotoMathというおもしろいアプリがニュースになっていました。 iPhoneにPhotoMathをインストールし、カメラで「数式」を撮影すると、 計算をしたり方程式を解いたりするというものです。
実際にやってみました。 撮影というか、カメラをかざすだけで簡単な計算をしてくれます。
一次方程式ならすぐに解いてしまうようです。
計算も方程式も、単に結果を出すだけではなく、 丁寧な式変形もしてくれるので、 (範囲は非常に限られていますが)自学自習にも使えるかもしれません。
いますぐこのPhotoMathによって世界が変わるということはないでしょうけれど、 技術によって機械ができることはちゃくちゃくと増えていきますね。 PhotoMathの背後ではきっと画像認識の技術と数式処理の技術が使われているはずで、 通信を使うならさらに進化させることもできるはず。何だか楽しみです。
PhotoMath公式サイトはこちらにあります。
◆PhotoMath.net
https://photomath.net
こちらには動画もあります。
◆動画:カメラで撮った数式を解くアプリ PhotoMath リリース。途中経過も表示
http://japanese.engadget.com/2014/10/21/photomath/
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とってもうれしいお知らせ。
刊行されたばかりの『数学ガールの秘密ノート/数列の広場』を使って、 実際に数学の授業を行った先生がいらっしゃいます。
その先生から授業の報告レポートをいただきました。 いただいたのは、
・授業の様子
・授業で配布したプリント
・生徒さんからの感想
などをPDFにまとめたものです。
この授業で使われたのは、 『数学ガールの秘密ノート/数列の広場』の第二章「驚異のシグマ」の一部分です。 本文の一部を生徒さんに読ませ、 書籍に出てきた「クイズ」や「問題」を先生がアレンジして生徒さんに解かせるという形式でした。
結城は本を書くだけなのですが、 このような形で実際の授業に活用していただけるなんて、 本当に感動しました。実際、涙が出るほどうれしいです。 感謝します。
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それでは、そろそろ結城メルマガを始めましょう。
今回は、Vol.132から始まった新連載「数学ガールの特別授業(教師編)」の第三回目です。 結城が先日新潟で行った講演会を読み物にしてお届けいたします。 講演スライドを交えたPDFでお送りします。 教えることや文章を書く人には興味のある内容になっていますよ。
お楽しみください!
目次
- はじめに
- 数学ガールの特別授業(教師編)(3)
- 毎日書くということ - 文章を書く心がけ
- おわりに
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