結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2014年4月8日 Vol.106
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。 いかがお過ごしですか?
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春ですね!
今週から新年度という方も多いのではないでしょうか。
新しい学校、新しい住まい、新しい学び、新しい仲間…… そのような一歩を踏み出したみなさま、おめでとうございます。 新しい一年が豊かで実り多きものとなりますように!
ところで、そのような方々のご多幸は当然お祈りするとして……
結城はこういう季節になると、 さまざまな事情で「不本意な場所」で 春を迎えることになった方のことも思い、 そしてそのような方のためにこそ祈りたいと思います。
めげずいじけず、新しい季節に気持ちをうまく切り換え、 次のステップに進んでいけるようにと心から祈ります。
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春。
今年の4月1日、結城は家内とお花見に行きました。 二人で桜で有名な千鳥ヶ淵を回りました。 桜が満開で、人もたくさん。 みんなスマートフォンや携帯を使って撮影です。
そんな中に、三脚を立てて本格的に撮影している人もちらほら。 そういう方々は、桜を撮るいいスポットを知っています。 自然と三脚の周りには、一般の方々がいっぱい集まって、 スマートフォンを掲げるというちょっとユーモラスな光景が広がっていました。
今日は、たくさんの人のカメラロールが桜色に染まる日なのですね。
幸い、風もなくていい天気だったので、 ゆっくり皇居の周りをまわって春を楽しみました。
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春。
結城の最新刊『数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数』は2014年4月末に刊行です。 アマゾンではすでに予約が始まっております。 アマゾンでの刊行日は、現在4月25日となっていますが、 書店さんの店頭に並ぶのもだいたい同じ頃になるはずです。
◆『数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数』(アマゾン)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/479737568X/hyuki-22/
ただし、いつものパターンから推測すると、都内では23日頃から、 それ以外でも24日頃から書店さんの店頭に並ぶ可能性がありますね。 実際に並ぶ日時については書店さん次第という部分もありますので、 ご了承ください。
また、もしかしたら一部書店さんではそれに先だって、 結城の《サイン本》が店頭販売される可能性もあります。
詳しくはご利用になっている書店さんへお尋ねください。
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ところで肝心の執筆状況ですが、 すでに『数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数』に関しては、 結城の手からほとんど離れています。
現在は編集部の方で最終調整をしている段階ですね。 今週過ぎれば編集部でもいわゆる責了となり、 あとは印刷を待つばかりということになります。
何冊本を作っても「新しい本が生まれる直前」というのはわくわくします。 特に現在のように結城の手が離れたあとは、うきうき・にやにやの連続です。
「どんな方が読んでくれるかなあ」
「どんなふうに楽しんでくれるかなあ」
などと想像しては悦に入っているのです。
何度も書いているエピソードですが、 結城が処女作『C言語プログラミングのエッセンス』を刊行したときは、 ハイになったあまり、家内と二人でわざわざ紀伊國屋書店さんに電話しましたよ。
「あ、あのう…『C言語プログラミングのエッセンス』という本、売ってますか?」
発売日過ぎているんですから当然売ってるに決まっているんですが。
あれは遠い1993年のこと。でも2014年のいまでも同じようなどきどきを感じます。 さすがに書店さんに電話はしませんが(しないと思いますが)、 発売日前後にはきっとTwitterでしょっちゅう検索を掛けるでしょうね。
本が一冊生まれるのはほんとうにうれしいものです!
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検索といえば、結城はしょっちゅう「数学ガール」で検索しています。
最近よく気付くのは、Twitterの「自己紹介」の欄に、 読書対象として「数学ガール」と書いたり、 自分のアイデンティティとして「数学ガール」と書いたりする人が増えたということ。 とてもうれしいです。
数学の専門家になるわけではないけれど数学を好む人、 それから自分の趣味を特徴づける大きな要素として数学を掲げる人が増えるのはうれしいですね。
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春。
感謝を込めて、 『数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数』のサイン本プレゼントを実施しました。 今回はトータルで89名の申し込みがありました。
厳正な抽選の結果、7名の当選者さんに当選メールを送り、送り先住所の確認をしています。 月曜日(4月7日)現在、6名様の住所が確認できました。
住所が確認できていない方が「1名」いらっしゃいます。 メールベースでやりとりをするので、 毎回この住所確認がどうしてもネックになります(再送しているのですが)。 送り先住所をご返信いただけないと結城はどうしようもないからです。
応募時点で住所を書いてもらうという手もあるのですが、 結城はあまり個人情報を持ちたくないので、 当選者だけに「改めて住所を確認する」を取ることになるんですよね。
もっと良い方法があればいいのですけれど。
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さて、CodeIQでプログラマ向けに出題していた《暗号解読クリプタン問題》が終了し、 評価&フィードバックを挑戦者にお返ししました。
今回は問題がかなり難しく、解答者の推理力に期待する部分が大きくなってしまいました。 挑戦者そのものの人数もなかなか伸びず、胃が痛くなるような日々を送りました。
特に、最高評価5をゲットした人の中から抽選で10名に、 書籍『数学ガールの誕生』をプレゼントするという企画だったため、 最高評価5を取る人が10名未満だったらどうしようと悩みました。
しかしながらフタを開けてみますと、挑戦者は全員で92名にものぼり、 そして驚くことに、暗号を二問とも解読して最高評価5を取った方が「14名」に達しておりました。 本当にほっとしました!
いつもみなさんから好評をいただいていたので、 今回は「慢心せずに精進せよ」ということなのかもしれません。 これからもがんばってよい問題を作っていかなくてはとつくづく思いました。
◆CodeIQの問題に挑戦しよう!
http://www.hyuki.com/codeiq/
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実は先週、結城は何となく体調がすぐれない日々を過ごしていました。 天気の変化や気圧の変化でお腹が痛くなったり、頭がぼんやりしたり。 いわゆる「季節の変わり目」で身体がまだ春を受け入れていないのかもしれません。 もう春は来ているのにね。
自分の年齢も考えて、調子がよくないときにはあまり無理せず、 スローペースで進むように心がけています。
年齢が進むにつれ、 自分が「できること」と「できないこと」について考える機会が多くなります。
若いときから、
「年を取ると、昔できていたことができなくなる」
というのは理解していたつもりなのですが、いざ自分が年を取ってくると、 その表現はずいぶん雑だなあと思うようになりました。
現実というのはもっと微妙です。 あえて表現するなら、次のようになります。
「年を取ると、昔100できていたことが99しかできなくなる。
しかもそれに気づいているのは自分しかいない」
けっこうこれは厳しいなあと感じます。 若いときのチャレンジと、 年を取ってからのチャレンジは質が違うのですね。
簡単にいえば、年を取れば能力は落ちていくものです。 だから、そこをどう補ったり、やりくりをするかが問われてきます。 速球投手から変化球投手への転身をするようなものでしょうか。
そこには若い人以上の「柔軟さ」が求められるのかもしれませんね。
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がらっと話題は変わって「フォント」の話。
先日、こんなページを読みました。
◆商用でも無料で使える2種類の日本語フォント「刻明朝」「刻ゴシック」 - GIGAZINE
http://gigazine.net/news/20140327-koku-min-koku-go/
無料で使える日本語フォントはそれほどめずらしくはないのですが、 この日本語フォントは「かな」と「漢字」の大きさをずいぶん変えているのです。 不思議な雰囲気を出していますね。
さっそくMacBook Airにインストールしてみました。 ついでに最近プログラマがよく使っている Sublime Text 3 に設定してみます。
◆Sublime Text 3
http://www.sublimetext.com/3
「基本設定」→「基本設定 - ユーザ」で、以下のように設定します。
|{
| "font_face": "刻明朝 Regular",
|}
すると、エディタのフォントが以下のように切り替わり、 「刻明朝 Regular」フォントで編集できる状態になります。
◆刻明朝 Regularでエディタ Sublime Text 3 を使う
フォントが変わるだけで、テキストを編集するときの気分がまったく変わりますね。
昨年WindowsからMacに変えましたけれど、いまはあまり元に戻りたいとは思いません。 そのもっとも大きな理由の一つは「文字」(フォント)の美しさですね。 結城の仕事の性質上、一日の大半を文字を見て過ごすことになるので、 フォントが美しいのは重要な要素なのです。
実はWindows環境で生活していたときも、いろんなフォントをインストールしていました。 なので、秀丸エディタ+LaTeX+Acrobatだけを使っている範囲では、 現在のMac環境とほとんど変わらない生活だったと思います。
でもMacの場合にはそれ以外のソフトを使っているときもフォントが美しい。 これは精神衛生上よいことですね。その他MacBookに移行したときの話は、 以下のページの途中にある「Vimで快適執筆環境」というPDFに詳しく書きました。
◆『再発見の発想法』
http://www.hyuki.com/discover/
Macに移るまではWindowsから離れられないと思っていたのですが、 意外と環境って変えても大丈夫なものなんだなあと実感します。
フォントの美しさ、重要です。
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「マガジン航」での短期集中連載が終了しました。全三回です。
有料メルマガを発行しようという方はもちろんのこと、 文章やコンテンツ作成に関心のある方には興味深い内容になっていると思いますので、 ぜひお読みください(この連載そのものは無料で全文Webで読めます)。
第一回 皮算用編では、 私が「結城メルマガ」を始めようとした経緯と、始めたばかりの頃に起きたことについて書きました。
第二回 転換編では、初期の体験から自分が考えたこと、 そしてそれを踏まえて行った「結城メルマガ」の方針変更を書きました。
第三回 継続編では、現在の私が考えていることを中心に、 メルマガ執筆を継続させることの意味、継続させるために工夫していることなどを書きました。
◆「私と有料メルマガ」第一回「皮算用編」
http://www.dotbook.jp/magazine-k/on_my_paid_email_magazine_01/
◆「私と有料メルマガ」第二回「転換編」
http://www.dotbook.jp/magazine-k/on_my_paid_email_magazine_02/
◆「私と有料メルマガ」第三回「継続編」
http://www.dotbook.jp/magazine-k/on_my_paid_email_magazine_03/
なお「マガジン航」は、文章を書くことや編集することに関心のある人には 興味深い記事がたくさん掲載されていますのでお勧めします。
◆マガジン航
http://www.dotbook.jp/magazine-k/
最近、たくさんのインディーズ作家さんを集めて同人雑誌を毎月刊行している 「月刊群雛 (GunSu)」の編集ノウハウ記事を興味深く読みました。
◆同人雑誌「月刊群雛 (GunSu)」の作り方 - 鷹野 凌
http://www.dotbook.jp/magazine-k/2014/03/31/how_to_make_gunsu/
ここでは、Google+ や Google Drive を駆使して編集者と作家がどのように 雑誌を仕上げていくかが具体的に書かれています。 一回出して終わりではなく、毎月毎月出すというところがすごいです。
複数人の力をうまく協調させてこのような出版活動をしたい人というのは、 たくさんいるんじゃないかなあと思います。
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体調がすぐれずベッドでごろごろしていたとき、 iPhoneでパズルゲームをやっていました。
まずはThrees!というゲーム。
ちょっぴり計算要素も入っているけれど、難しくはありません。
・画面をスワイプして数を動かす。
・スワイプするごとに画面の外から数字が入ってくる。
・1と2を重ねると3ができる。
・3と3を重ねると6ができる。
・6と6を重ねると12ができる……
という単純なルールなのですが、とてもおもしろくて、やめられなくなります。
有名な「テトリス」と少し似ている感覚があります。 テトリスはリアルタイムに反応しなければいけませんけれど、 このThrees!はじっくり好きなペースで解いていくことができます。
結城はしばらくプレイして「まずい……仕事ができなくなる」と思って、 三回削除しました。
三回削除?
削除して(やめられなくて)復活させ、 削除して(やめられなくて)復活させ、 削除したのです。
◆Threes!
http://asherv.com/threes/
なお、このThrees!はあまりにも人気が高いために、 類似ゲームがたくさん出ているらしいです。
先ほどのThrees!が計算的なパズルゲームだとすれば、 Monument Valley は図形的なパズルゲームです。
◆Monument Valley
http://bit.ly/mvgame
これはエッシャーの「だまし絵」の世界を歩き回ってゴールを目指すという、 新感覚のゲームです。第1章から第10章まであって、 第10章以外はそれほど難しくありません。
三次元の世界を歩き回るのですが、 この世界では、普通の三次元ならあり得ないような動きも可能なのです。 しかもそのすべての世界が美しいアートのように仕上げられています。
以下に動画つきの詳しい紹介記事があります。
◆Monument Valley: あなたの視覚をあざむく、だまし絵パズルゲーム。 - AppBank
http://www.appbank.net/2014/04/04/iphone-application/787847.php
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さて、そろそろ結城メルマガを始めましょう。
今回は「フロー・ライティング」で「着陸しない強さ」という読み物をお送りします。 また「Q&A - 夢」も合わせてお読みください。
それではどうぞ!
目次
- はじめに
- フロー・ライティング - 着陸しない強さ
- Q&A - 夢
- おわりに
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