結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年9月25日 Vol.339
はじめに
結城浩です。
いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
先週『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』の再校読み合わせが無事に終わりました。これで原稿は私の手からほとんど離れたことになります。あとは10月の刊行を待つのみです。
この本は『プログラマの数学 第2版』と『数学ガール/ポアンカレ予想』に引き続き、今年三冊目の本となります。私の作業ログで調べてみますと、連載の原稿から本に直す作業を始めたのは昨年2017年の七夕でした。途中他の本の作業をしていたとはいえ、一年以上時間が掛かっていることになりますね。
さらにさかのぼりますと、今回の「行列が描くもの」シーズンをWebで連載していたのはなんと2015年の春です。三年以上も前のことなのですね。昔まいておいた種がようやく花を咲かせて実を結びつつあるような、そんな気持ちになりました。実りの秋です!
もちろん、このように長期的な活動をすることができているのは、応援してくださるあなたがいらっしゃるおかげですね。いつもありがとうございます!
◆『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』
https://bit.ly/hyuki-matrix
では、今回の結城メルマガも、どうぞごゆっくりお読みください。
目次
- 大学に現役で入ることに意味はあるか
- カフェで仕事をする理由 - 仕事の心がけ
- 自分本位な恋愛ばかりしてしまう
- プログラミングにおける「読解」とは何か
- 執筆と校正でどちらが難しいか - 文章を書く心がけ
- 「本を読んで勉強する」とはどういうことかわからない - 学ぶときの心がけ
- 三十代なかば、専門とは無縁の社会人をしているが、趣味を越えて理系的なことがらに関わりたい
- 心が落ち込むときの対処方法 - 仕事の心がけ
大学に現役で入ることに意味はあるか
質問
大学に現役で入ることに、どのような意味があるんでしょうか。
現在わたしは受験生です。現役でとりあえず大学に行くのか、それか一年間ほど図書館でたくさん本を読んだり、アルバイトやボランティアのような活動をしてみたりと、大学に行く前にクッションを置くのもありかなと思っています。
ただ、これは大きな決断だと思うので、どうしようかと迷っています。
回答
ご質問ありがとうございます。
大原則としていいたいのは「大学に行くのは義務でもなんでもない」ということです。ですから、あなたの好きに考えて好きに行動してかまいません。ただし、あなたの生活費を出しているスポンサー(多くの場合は親)との相談を忘れないようにしましょう。
でも、あわてて言い添えておきますが、もしも私がそのような相談を子供から受けたら「あなたはちゃんと考えているのか」とうるさいくらい聞くでしょうね。
「受験は自分に何の意味があるのか。大学に行くことの意味とは何か。実は大学など行かずに○○した方が いいのではないか」というのは受験生がほぼ確実に考えることの一つです。ありふれた問いといってもいいです。
もちろんそのような問いはとても大切なことです。しかしながら、受験勉強をするのが単に嫌だからそういってるだけなのか、自分の人生についてちゃんと考えようとしているかの判別は非常に難しいです。
ちなみに結城も受験生時代に同じようなことを考えましたが、いま振り返ってみると、単に受験勉強が嫌になったときにそう考えただけでした。その証拠に、具体的な計画とその妥当性についてはまったく考えたり、調べたりせずに「受験に意味なんてあるのかなあ」とぼんやり考えていただけでしたから。
あなたは「大学に行く前にクッションを置くのもありかな」と軽く書いていますが、受験勉強には「勢い」も必要です。一年間「クッション」を置いて自由に過ごしたとして、あなたはいつから受験勉強を再開するのでしょうか。一年間過ごした後、準備ゼロで受かる大学を目指すのでしょうか。一年間過ごした後、一年間受験勉強をするなら、あなたが大学に行くのは二年後ということになりますね。
何の制約もなく、自由に過ごした後、受験勉強を始めるというのはよっぽど意志が強い人でないと難しいと思います。夏休みの途中で宿題をすべて終えるような意志が必要じゃないでしょうか。あなたは自己分析してみていかがですか。
自由に過ごすときこそ、よく練った計画が必要です。
カフェで仕事をする理由 - 仕事の心がけ
質問
結城さんはいつもカフェでお仕事なさっているようです。どうしてコワーキングスペースではなくカフェを使っているのでしょうか。コワーキングスペースの方がWiFi環境もよく、静かで、コストもあまり変わらないように思うのですが。
回答
ご質問ありがとうございます。
なぜだろう、と考えてみました。すぐに思ったのは……
コワーキングスペースだと、まわりがみんな仕事していて、会社に行ってるみたいなんだもん!
……という理由でした。仕事をしてもいいし、しなくてもいいけれど、そのような環境の中であえて仕事している自分はなんてえらいんだろうと錯覚したいのかもしれません。
まあ、そこまでいわなくても、コワーキングスペースのような「仕事せざるを得ない環境で仕事をする」というのは逃げ場がなくてちょっとつらいです。
結城は、カフェなどで提供されているWiFiは使わず、必ず自分が用意したモバイルルータのようなネット環境をつかっています。ですから、WiFiが充実しているかどうかは無関係です。
また仕事中はまわりがどんなにうるさくても影響することはほとんどありません(実はこの原稿もカフェで書いているのですが、すぐそばで赤ちゃんが大泣きしています)。
カフェはあちこちにあるので飽きたら移動して気分を変えることができるというのもメリットですね。また「この仕事をするときにはこのカフェ」のように仕事ごとにカフェを決めていたこともあります。
ちなみに結城のカフェ代の一部は、pixivFANBOX経由で支援者の方からサポートいただいており、大変助かっています。感謝!
◆「結城浩のカフェ代支援」プラン - pixivFANBOX
https://www.pixiv.net/fanbox/creator/24344450/post/11147
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