Vol.301 結城浩/定義は何?/あなたにとって、仕事とは何か/

結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年1月2日 Vol.301

はじめに

結城浩です。

新年あけましておめでとうございます。

いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。 本年もどうぞよろしくお願いいたします。

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サイン本無料プレゼントの話。

2018年1月に、

 『プログラマの数学 第2版』

が刊行されます。日頃の応援に感謝して、 恒例の《サイン本無料プレゼント》を行います。 応募〆切は、

 2018年1月10日(水)

です。以下のページをごらんの上、 ぜひご応募ください!

 ◆『プログラマの数学 第2版』《サイン本無料プレゼント》
 https://snap.textfile.org/20171229214054/

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数学ガール6の話。

2017年12月末に、 『数学ガール6』はようやく第9章まで形になりました。 現在は、何とか2018年1月末まで『数学ガール6』 全体を完成させようとしているところ。

まだまだ楽観視はできませんが、 少しずつゴールが見えてきました。 あわてずあせらず、 第10章を書き進めていきたいですね。

応援よろしくお願いいたします。

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試し読みの話。

結城の『数学文章作法』基礎編・推敲編は、 「正確で読みやすい文章」を書くための本として、 多くの方からご愛読いただいています。

先日は、両方の本がダブル重版となりました! 基礎編が第10刷、推敲編が第3刷になります。

未読の方にも本書の内容を知っていただくため、 それぞれの本について、

 第1章をまるまる全部PDFで読める

ように公開しています。 PDFは筑摩書房が管理している以下のWebページにあります。 もしも未読でしたら、この機会にごらんください。 登録不要、もちろん無料。閲覧期限もありません。 PDFをダウンロードして、じっくりお読み下さい (PDFはダウンロードのアイコンからたどれます)。

 ◆結城浩 数学文章作法 (筑摩書房)
 http://www.chikumashobo.co.jp/special/yukihiroshi/

推敲編については、 刊行当初から試し読みのPDFを公開していました。 今回は、それに加えて基礎編のPDFも公開したものです。

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古本をめぐる話。

先日、古本を購入したときの体験談です。

執筆中に参考資料を読んでいました。 その参考資料の中には定理の概略が書かれていましたが、 証明までは書いてありません。 「証明はこの本を参照」として古い数学書が紹介されています。 結城は、その数学書を「すぐにほしい!」と思いました。

アマゾンへ行き、書名で検索すると、 その数学書はすぐに見つかりました。 いろんな状態の古本があり、 コンディションと価格付きで一覧になっています。 そこからクリック数回で購入手続き完了。

この一連の作業に掛かった時間はわずか数分。 数日後には自宅にその数学書が届きました。

ネットで買い物をする現代では、 この一連の流れは特に珍しいものではありません。 でも、結城はその便利さに改めて感動したのです。

もちろん図書館に行けば、 その数学書を見つけられるでしょう。 しかしそのためには執筆を中断して時間を掛け、 図書館に出かけていく必要があります。 自分の貴重な時間を使うことなく、 必要な情報を手に入れることができるのは、 ほんとうにありがたいのです。

書籍を検索すると、 新品と古本が並んで一覧に出ることがあります。 結城は、著者への還元という意味を込めて、 ほとんどの場合には新品を買うよう心がけています。 古本を購入しても、著者へは一円も入らないからです。

しかしながら、 先日購入した数学書の新品はありませんでした。 版元品切れ、いわゆる絶版です。 いくら新品を購入して著者に還元したくても、 存在しないなら、古本を買うしかありません。 ときに、とても有名な本が絶版になっていて、 ショックを受けることがあります。

紙の本は在庫を抱えることになりますから、 出版社にも無理はいえませんが、 せめて電子化してくれればいいのに…と思うことが、 これまで何回もありました。

電子化されていて助かった例はたくさんあります。

〆切間近の夜中に作業をしていて、 どうしてもある数学書が必要になりました。 困ったなと思いつつアマゾンで検索したところ、 電書が見つかり即購入&ダウンロード。 原稿に間に合い、たいへん助かりました。

こう言ってはなんですが、 そのとき購入した電書はかなり「雑」な作りでした。 しかしながら、あるのとないのとでは大違いなのです!

どんな形であれ書籍が存在することの大切さと、 入手のしやすさについて考えさせられたできごとでした。

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フェイクの話。

先日、TwitterAuditというサービスを知りました。 audit(オーディット)は審査や監査という意味ですね。 このサービスは、Twitterのアカウントを入力すると、

 フォロワー数の何割がリアルで何割がフェイクか

を調べてくれるというもの。調べてみると、 結城のフォロワーさんは97%リアルとのこと。

 ◆TwitterAuditの結果(スクリーンショット)

2017-12-10_audit.jpg

どうしてこんなサービスがあるかというと、世の中には、 フォロワーを買ってフォロワー数を「水増し」する人がいるからです。 おそらくは「フォロワーの数」をアピールし、 商売に結びつけるためでしょう。

検索するとアカウントを売るサービスが見つかります。 しかし、アカウント(ユーザ名)を売る行為は、 Twitterルールに違反しています。

 ◆Twitterルール
 https://help.twitter.com/ja/rules-and-policies/twitter-rules

フォロワー数をアピールするアカウントを見たときに、 TwitterAuditを使います。そうすると、 本当にたくさんのフォロワーが存在するのか、 見かけだけのフェイクしかいないのか、 それがわかるというわけです。

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言葉のコンフリクトの話。

こんなショートコントを考えました。

 A「誰もが驚くほど超巨大な宇宙ステーションが完成したぞ!」
 B「どのくらい大きいんですか?」
 A「月と大きさ比べができるほど大きいんだ!」
 B「大きさは月並みなんですね」
 A「ち、違う。そうなんだが、違う!」

ここでは、

 ・「平凡」という意味の「月並み」
 ・「○○と同じくらい」という意味の「○○並み」

という二つの言葉がコンフリクト(衝突)しています。

ここではショートコントで済みましたが、 文章を書いていると言葉のコンフリクトが発生し、 書き換えを余儀なくされることがたまにあります。

表記上の例で先日ぶつかったのが、

 あなたがた

という言葉です。 「あなたがた」とひらがなで書くと何も不思議はありません。 でも、漢字で書くとこうなります。

 貴方方

「貴方」と「○○方」の表記で、 たまたま「方」の字が重なってしまうのです。

まちがいではないのですが、 一瞬「え?」と読者の意識がそれるので、 別の表現に置き換えました。

もう一つ別の例。 鴨浩靖先生(@kamo_hiroyasu)が、

 「計算可能性構造を入れることができる」

を表す言葉で悩んでおられました。

 https://twitter.com/kamo_hiroyasu/status/928804965207785472

そのまま言葉にすると、

 「計算可能化可能」(computablizable)

というやや奇妙な表現になってしまうからです。 ここでは「可能」が一単語内でコンフリクトしています。

 ・「計算可能性構造」という用語中の「可能」
 ・「○○ができる」という意味の「○○可能」

この二つですね。

言葉はしばしば思わぬところでコンフリクトするのです。

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クラウドファンディングの話。

「クラウドファンディング」ってご存じですか。

近年よく耳にするプロジェクトの資金集めの方法で、 ネットを活用して多くの人から少しずつ出資してもらうものですね。 Kickstarterが有名です。

ところで、これについて先日「はっ」と気づいたことがあります。

「クラウドファンディング」の「クラウド」って、

 cloud じゃなくて crowd

なんですね。 ネットでクラウドといえば「雲」を意味する「cloud」が多いので、 クラウドファンディングもてっきりそっちだと思っていました。

実際は「たくさんの人々」を意味する「crowd」なのでした。 クラウドファンディングの意味を考えたら当然ですね。

まちがっていたのは自分だけかなあと不安になり、 Twitterのアンケート形式でお尋ねしてみたところ、 多くの人が同じように誤解していたので謎の安心感 (いや、安心しちゃまずいですけれど)。

あなたは、crowdだと知ってました?

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それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。

どうぞ、ごゆっくりお読みください!

目次

  • はじめに
  • 「定義は何ですか?」という問いかけ
  • あなたにとって、仕事とは何か - 仕事の心がけ
  • どこまで答えたら答えたことになるのか
  • おわりに