Vol.300 結城浩/朝の時間は勉強と執筆のどちらに使うべきか/「やりたいこと」を見つける/充実した人生/

結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年12月26日 Vol.300

はじめに

おはようございます。結城浩です。

いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

今回は2017年最後の配信になりますが、 ちょうどVol.300になりました! 継続的な応援をありがとうございます!

 * * *

数学ガール6の話。

今年の重要プロジェクトの一つは『数学ガール6』の刊行でした。 残念ながら年内刊行は間に合いませんでしたね。 それどころか年内脱稿も無理でした。

しかし、何とか第8章まではレビューアさんに送付できるほどになり、 現在も第9章を誠意執筆中。 がんばって今年中には第9章までたどり着きたいです。

そして、来年こそ『数学ガール6』刊行!といきたいものです。

ちょっと振り返ってみます。

「数学ガール」シリーズは現在5巻まで刊行されています。 『数学ガール5』にあたる『数学ガール/ガロア理論』は2012年刊行。 そこから「数学ガールの秘密ノート」シリーズの刊行にシフトし、 『秘密ノート1』から『秘密ノート9』までがすでに刊行されています。

要するに『数学ガール5と6』のあいだに、 「数学ガールの秘密ノート」シリーズは9冊出たことになるのですね。 かんたんな図で表すと、こんな感じです。

 ◆シリーズ各巻の出版順序図解

2017-12-25_girl.png

いまさらですが、そんなにたくさん 「数学ガールの秘密ノート」シリーズを書いたのか……と、 謎の感慨にふけってしまいました。 読者さんの応援にひたすら感謝です。

それはさておき、 がんばって『数学ガール6』を進めましょう!

第9章を、何とか今年中に(切実)!

 * * *

数学書の話。

数学書にはしばしば「明らか」や「自明」という表現が出てきます。 説明の途中で「ここから明らかにナニナニが成り立つ」や、 「ナニナニが成り立つのは自明」のように使われます。

数学書で、そこまで読んできた内容を本当に理解していれば、 「明らか」や「自明」と書いてあったときに、 確かにそうだなと共感できるかもしれません。

でも「どうしてこれが明らかなんだろう?」や、 「私には自明とはとうてい思えない」 というときもよくあります。

「明らか」や「自明」という表現は、 数学書の「あるある」な話題として、 軽口やネタになることもよくありますね。

「明らか」や「自明」に関して、 ネットでいろんな方の意見を読んでいるうちに、 結城はこれをキャッチフレーズにまとめたくなりました。

数学書で「明らか」が出てきたら、こう考えましょう。

 あなたは《これ》を、基本的だと感じ、
 楽々答えられますか。確認しましょうね!

「明らか」という表現が出てきたら、 読者は自分の理解度をちゃんと確認しましょう。 そういう意味のキャッチフレーズです。 キャッチフレーズにしては長ったらしいですが、 実はこれ「明らか」という言葉が折り込まれているのです!

 ・「あ」なたはこれを、
 ・「き」ほんてきだとかんじ、
 ・「ら」くらくこたえられますか。
 ・「か」くにんしましょうね。

同じように「自明」もキャッチフレーズにしてみました。

 自分でちゃんと確かめよう。
 面倒がらず。嫌がらず。

これも「自明」という言葉を折り込みました。

 ・「じ」ぶんでちゃんとたしかめよう。
 ・「め」んどうがらず。
 ・「い」やがらず。

こういう言葉あそび、楽しいと思いませんか。

 * * *

パズルゲームの話。

結城はパズルゲームが大好きです。 執筆の合間で気分転換したいときに、 パズルゲームを一面だけチャレンジします。 執筆とは別の頭を使うため、たいへんいいのです。

文章を書いた後にパズルゲームを行うと、 自分の頭に残っている情報が一掃されるので、 校正するのに好都合です。 自分の頭に残っている情報を頼りにせず、 文章として書き表された情報を読もうとするからです。

いわば、結城にとってのパズルゲームは、 頭を「リセット」するためのツールなのですね。

さて、最近のお気に入りを三つ紹介します。 いずれも難易度がほどほどで楽しいパズルゲームです。

一つ目は「Gorogoa」です。

美しい絵の中に入り込んでいくようなパズルゲームで、 しかも絵と絵の境界、過去と未来の境界を越えていくもの。 二次元なのに四次元のような空間移動をするパズルです。

ゲームという形でないと味わえないファンタジーともいえます。 有名なMonument Valleyというゲームが好きな人は気に入るはず。

結城は最後までコンプリートしました。

 ◆Gorogoa
 http://gorogoa.com

二つ目は「Hexa Turn」です。

六角形のボード上で、基地を攻撃してくる敵を防御するというもの。 攻撃や防御といってもターン制なので、じっくり考えることができます。 地味なのですが、かなりおもしろいゲームです。

結城は三場面だけ残してコンプリート。

 ◆Hexa Turn
 http://apple.co/2Bztj3S

三つ目は「Campfire Cooking」です。

キャンプファイアでマシュマロを焼いたり、煮物をしたりするゲーム。 一つの串に二つも三つもマシュマロが刺さっていて、 同じ面を二回以上焼いてはいけないという制約の中、 全面をおいしく焼こう!という楽しいゲーム。

シーンが進むごとに難易度が少しずつ上がっていきますし、 しかも毎回、発想の転換を要求されますので、 なかなか楽しめます。

 ◆Campfire Cooking
 http://www.laytonhawkes.com/campfire-cooking

ところで、 パズルゲームにチャレンジしていて、 非常によく起きる現象がふたつあります。

一つ目は、

 どうしても解けない面があって、
 何度続けてもダメなのに、
 少し時間おいて試すとさらっと解ける

という現象です。本当によくあります。 できないからといって、 何度も続けてチャレンジするのは得策じゃないということです。 いったん時間をおいてから試すのがいいみたいですね。

自分の中には「この方法しかない」という思い込みがあり、 続けてチャレンジしてもその思い込みを振り払えません。 その結果、同じルートをたどって失敗する。 でも、時間をおくことでその思い込みを忘れ、 新たな気持ちで取り組むので正解にたどり着けるのでしょう。

パズルゲームでよく起きる現象の二つ目は、

 少しずつ答えに近づくのではなく、
 突破口を見つけたとたんすべてが解ける

という現象です。

パズルゲームの各面には「これがわかれば解けるけれど、 わからなければ解けない」というカギがあるのです。 ですから、カギをつかむ(突破口を見つける) ことがすべてを決めるということ。

パズルゲームには、発見の困難と、発見の歓喜があるのです。

 * * *

ネットプリントの話。

「ネットプリント」ってご存じですか。

 ◆ネットプリント
 https://www.printing.ne.jp

ネットプリントというのは、富士ゼロックスが運営しているサービスです。 文書や画像を登録しておき、 それをセブンイレブンのコピー機で印刷できるというもの。

たとえばイラストを描いている人(絵師さん)が、 自分の描いたイラストを印刷して誰かに渡したいとしましょう。 そのときに「ネットプリント」というサービスを使うと、 郵送料を掛けずに印刷物を送ることができます。

ネットプリントの流れはこうです。 送信者(絵師さん)は、ネットプリントに画像ファイルを登録し、 番号を受け取ります。送信者は受信者にその番号を伝えます。 受信者はコンビニのコピー機でその番号を入力し、 印刷代(数十円)を払って印刷物を受け取ります。

結城はこの仕組みで何かおもしろいことできないかな、 とよく思います。 物理的なものを低コストでたくさんの人に渡せるというのは、 可能性を感じます。

受信者が払うお金はいわば印刷代なので、 送信者に料金として支払われるわけではありません。 でもnote(ノート)で番号を販売すれば、 有料の配布物も実現できそうです (各種規約を確かめてはいないので、実現できるかどうかは不明)。

たとえば「結城浩ミニ文庫」として販売しているような文章を、 ネットプリント用に再編集して販売することができそう。 ネットでダウンロードしてプリントアウトするのと、 直接紙で入手するのとではちょっと違うように思うのです。

 ◆結城浩ミニ文庫
 http://www.hyuki.com/mini/

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それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。

どうぞ、ごゆっくりお読みください!

目次

  • はじめに
  • 朝の時間は勉強と執筆のどちらに使うべきか - Q&A
  • 「やりたいこと」はどうしたら見つかるか - Q&A
  • 充実した人生とは何でしょうか - Q&A
  • おわりに
  • よいお年を!