結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年12月26日 Vol.300
はじめに
おはようございます。結城浩です。
いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
今回は2017年最後の配信になりますが、 ちょうどVol.300になりました! 継続的な応援をありがとうございます!
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数学ガール6の話。
今年の重要プロジェクトの一つは『数学ガール6』の刊行でした。 残念ながら年内刊行は間に合いませんでしたね。 それどころか年内脱稿も無理でした。
しかし、何とか第8章まではレビューアさんに送付できるほどになり、 現在も第9章を誠意執筆中。 がんばって今年中には第9章までたどり着きたいです。
そして、来年こそ『数学ガール6』刊行!といきたいものです。
ちょっと振り返ってみます。
「数学ガール」シリーズは現在5巻まで刊行されています。 『数学ガール5』にあたる『数学ガール/ガロア理論』は2012年刊行。 そこから「数学ガールの秘密ノート」シリーズの刊行にシフトし、 『秘密ノート1』から『秘密ノート9』までがすでに刊行されています。
要するに『数学ガール5と6』のあいだに、 「数学ガールの秘密ノート」シリーズは9冊出たことになるのですね。 かんたんな図で表すと、こんな感じです。
いまさらですが、そんなにたくさん 「数学ガールの秘密ノート」シリーズを書いたのか……と、 謎の感慨にふけってしまいました。 読者さんの応援にひたすら感謝です。
それはさておき、 がんばって『数学ガール6』を進めましょう!
第9章を、何とか今年中に(切実)!
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数学書の話。
数学書にはしばしば「明らか」や「自明」という表現が出てきます。 説明の途中で「ここから明らかにナニナニが成り立つ」や、 「ナニナニが成り立つのは自明」のように使われます。
数学書で、そこまで読んできた内容を本当に理解していれば、 「明らか」や「自明」と書いてあったときに、 確かにそうだなと共感できるかもしれません。
でも「どうしてこれが明らかなんだろう?」や、 「私には自明とはとうてい思えない」 というときもよくあります。
「明らか」や「自明」という表現は、 数学書の「あるある」な話題として、 軽口やネタになることもよくありますね。
「明らか」や「自明」に関して、 ネットでいろんな方の意見を読んでいるうちに、 結城はこれをキャッチフレーズにまとめたくなりました。
数学書で「明らか」が出てきたら、こう考えましょう。
あなたは《これ》を、基本的だと感じ、
楽々答えられますか。確認しましょうね!
「明らか」という表現が出てきたら、 読者は自分の理解度をちゃんと確認しましょう。 そういう意味のキャッチフレーズです。 キャッチフレーズにしては長ったらしいですが、 実はこれ「明らか」という言葉が折り込まれているのです!
・「あ」なたはこれを、
・「き」ほんてきだとかんじ、
・「ら」くらくこたえられますか。
・「か」くにんしましょうね。
同じように「自明」もキャッチフレーズにしてみました。
自分でちゃんと確かめよう。
面倒がらず。嫌がらず。
これも「自明」という言葉を折り込みました。
・「じ」ぶんでちゃんとたしかめよう。
・「め」んどうがらず。
・「い」やがらず。
こういう言葉あそび、楽しいと思いませんか。
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パズルゲームの話。
結城はパズルゲームが大好きです。 執筆の合間で気分転換したいときに、 パズルゲームを一面だけチャレンジします。 執筆とは別の頭を使うため、たいへんいいのです。
文章を書いた後にパズルゲームを行うと、 自分の頭に残っている情報が一掃されるので、 校正するのに好都合です。 自分の頭に残っている情報を頼りにせず、 文章として書き表された情報を読もうとするからです。
いわば、結城にとってのパズルゲームは、 頭を「リセット」するためのツールなのですね。
さて、最近のお気に入りを三つ紹介します。 いずれも難易度がほどほどで楽しいパズルゲームです。
一つ目は「Gorogoa」です。
美しい絵の中に入り込んでいくようなパズルゲームで、 しかも絵と絵の境界、過去と未来の境界を越えていくもの。 二次元なのに四次元のような空間移動をするパズルです。
ゲームという形でないと味わえないファンタジーともいえます。 有名なMonument Valleyというゲームが好きな人は気に入るはず。
結城は最後までコンプリートしました。
◆Gorogoa
http://gorogoa.com
二つ目は「Hexa Turn」です。
六角形のボード上で、基地を攻撃してくる敵を防御するというもの。 攻撃や防御といってもターン制なので、じっくり考えることができます。 地味なのですが、かなりおもしろいゲームです。
結城は三場面だけ残してコンプリート。
◆Hexa Turn
http://apple.co/2Bztj3S
三つ目は「Campfire Cooking」です。
キャンプファイアでマシュマロを焼いたり、煮物をしたりするゲーム。 一つの串に二つも三つもマシュマロが刺さっていて、 同じ面を二回以上焼いてはいけないという制約の中、 全面をおいしく焼こう!という楽しいゲーム。
シーンが進むごとに難易度が少しずつ上がっていきますし、 しかも毎回、発想の転換を要求されますので、 なかなか楽しめます。
◆Campfire Cooking
http://www.laytonhawkes.com/campfire-cooking
ところで、 パズルゲームにチャレンジしていて、 非常によく起きる現象がふたつあります。
一つ目は、
どうしても解けない面があって、
何度続けてもダメなのに、
少し時間おいて試すとさらっと解ける
という現象です。本当によくあります。 できないからといって、 何度も続けてチャレンジするのは得策じゃないということです。 いったん時間をおいてから試すのがいいみたいですね。
自分の中には「この方法しかない」という思い込みがあり、 続けてチャレンジしてもその思い込みを振り払えません。 その結果、同じルートをたどって失敗する。 でも、時間をおくことでその思い込みを忘れ、 新たな気持ちで取り組むので正解にたどり着けるのでしょう。
パズルゲームでよく起きる現象の二つ目は、
少しずつ答えに近づくのではなく、
突破口を見つけたとたんすべてが解ける
という現象です。
パズルゲームの各面には「これがわかれば解けるけれど、 わからなければ解けない」というカギがあるのです。 ですから、カギをつかむ(突破口を見つける) ことがすべてを決めるということ。
パズルゲームには、発見の困難と、発見の歓喜があるのです。
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ネットプリントの話。
「ネットプリント」ってご存じですか。
◆ネットプリント
https://www.printing.ne.jp
ネットプリントというのは、富士ゼロックスが運営しているサービスです。 文書や画像を登録しておき、 それをセブンイレブンのコピー機で印刷できるというもの。
たとえばイラストを描いている人(絵師さん)が、 自分の描いたイラストを印刷して誰かに渡したいとしましょう。 そのときに「ネットプリント」というサービスを使うと、 郵送料を掛けずに印刷物を送ることができます。
ネットプリントの流れはこうです。 送信者(絵師さん)は、ネットプリントに画像ファイルを登録し、 番号を受け取ります。送信者は受信者にその番号を伝えます。 受信者はコンビニのコピー機でその番号を入力し、 印刷代(数十円)を払って印刷物を受け取ります。
結城はこの仕組みで何かおもしろいことできないかな、 とよく思います。 物理的なものを低コストでたくさんの人に渡せるというのは、 可能性を感じます。
受信者が払うお金はいわば印刷代なので、 送信者に料金として支払われるわけではありません。 でもnote(ノート)で番号を販売すれば、 有料の配布物も実現できそうです (各種規約を確かめてはいないので、実現できるかどうかは不明)。
たとえば「結城浩ミニ文庫」として販売しているような文章を、 ネットプリント用に再編集して販売することができそう。 ネットでダウンロードしてプリントアウトするのと、 直接紙で入手するのとではちょっと違うように思うのです。
◆結城浩ミニ文庫
http://www.hyuki.com/mini/
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それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。
どうぞ、ごゆっくりお読みください!
目次
- はじめに
- 朝の時間は勉強と執筆のどちらに使うべきか - Q&A
- 「やりたいこと」はどうしたら見つかるか - Q&A
- 充実した人生とは何でしょうか - Q&A
- おわりに
- よいお年を!
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