結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年4月26日 Vol.213
はじめに
おはようございます。
いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
熊本地震で被災なさっている方に、 心よりお見舞い申し上げます。
(ここに、お見舞いの言葉を何回か書いては消し、 書いては消ししたのですが、 やはりどうにも言葉になりません。ごめんなさい。 心よりお見舞い申し上げますとだけ……)
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新刊の話。
『数学ガールの秘密ノート/場合の数』が発売です。
発売直後にアマゾン数学一般書でランキング一位となりました。 応援ありがとうございます!
今回は、「紙の本」とKindleやKoboなどの「電子書籍」が同日発売となりました。 これは出版社であるSBクリエイティブさんの尽力によるものです。 ありがたいことに、Kindle本も数学書でランキング一位。 ほんとうにうれしいです。感謝!
電子書籍の刊行に合わせて編集部から、 Webですぐに読める《立ち読み版》が提供されています。 表紙から25ページまで読むことができますので、 「どんな感じなのかな」という方はチェックしてみてください。
◆『数学ガールの秘密ノート/場合の数』《立ち読み版》
http://ul.sbcr.jp/MATH-SJddk
一部のチェーン書店さんでは《結城浩のメッセージカード》 が同梱された書籍が販売されています。 Twitterでは、いろんな方が「メッセージカード入ってました!」 というツイートをしてくださっています。 ありがとうございます!
◆『数学ガールの秘密ノート/場合の数』メッセージカード取扱店情報
https://note.mu/hyuki/n/n5f9733f8cefc
当然ですが、新刊が出て、 多くの方からあたたかく迎えられるとホッとします。
本を書くのは泥臭くて地道な作業で、いわば《ケ》になりますが、 新刊が出るのはいわば《ハレ》のときになりますね。
これからもがんばって書き続けていかなくては。
◆『数学ガールの秘密ノート/場合の数』
http://note7.hyuki.net
そして懸案事項は『数学ガール6』です。 後ほど少し苦労話をお話しします。
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英語版の話。
「数学ガール」と「数学ガールの秘密ノート」両シリーズは、 英語版も出ています。
◆Math Girls
http://www.hyuki.com/girl/en.html
「数学ガール」シリーズでは、これまで、 『数学ガール』と『数学ガール/フェルマーの最終定理』 という二冊だけが刊行されていました。
このたび、いよいよ三巻目の『数学ガール/ゲーデルの不完全性定理』 が刊行されることになりました。
英語版を出版しているBentoBooksさんでサンプルPDFが公開されていますので、 ぜひご覧ください。有名な 0.999... = 1 の章ですね。 ちょうど先週の結城メルマガで話題にしたところです。
◆Math Girls 3: Sample Chapter(PDF)
http://bentobooks.com/resources/MG3-Sample.pdf
実際の書籍については、 現在アマゾンで予約受付中になっています。
◆Math Girls 3: Goedel's Incompleteness Theorems
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/1939326273/hyam-22/
以下は既刊です。
◆Math Girls
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/0983951306/hyam-22/
◆Math Girls 2: Fermat's Last Theorem
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/0983951322/hyam-22/
なお「数学ガールの秘密ノート」シリーズの英語版は、 "Math Girls Talk about ..." (数学ガールが…についておしゃべりする) というシリーズ名で三巻まで刊行されています。 やさしい数学をナチュラルな英語といっしょに学ぶというのも楽しいかも?
◆Math Girls Talk about Equations & Graphs(式とグラフ)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/1939326192/hyam-22/
◆Math Girls Talk about Integers(整数で遊ぼう)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/1939326230/hyam-22/
◆Math Girls Talk about Trigonometry(丸い三角関数)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/1939326257/hyam-22/
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数学を学ぶ人のための読書リストの話。
春。
新学期。
ということで、 西原史暁さん( @f_nisihara )が、 「これから数学を学ぼうと思った人のための読書リスト(2016年4月版)」 という記事を公開していましたので、ご紹介します。
◆これから数学を学ぼうと思った人のための読書リスト(2016年4月版)
http://id.fnshr.info/2016/04/22/math201604/
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コードとコメントの話。
先日、コードにコメントを書く/書かないという話題を見かけた。
「コード」というのは、プログラムのソースコードのこと。 いくつかの処理の後、 コンピュータに与えると実際の動作を行うためのものだ。
「コメント」というのは、コードに対してプログラマが書く注釈のこと。 このコードは何を行うためのものなのか、注意すべき点は何か、 そのようなことがコードに添えて書かれている。
コメントがまったく書かれていないコードは、 数式だけが書かれた証明に似ている。
論理的には問題はないけれど、 その意味を人間が理解するためには障害になる(ことがある)。
複雑な構造物を説明するときに《二回記述》することは大事だ。 一つのものが二回記述されていると、理解しやすくなる。
もしもその二つの記述のあいだに矛盾があるなら、 何かおかしいことが起きているのだとわかる。 すなわち、エラーの《検出》ができる。
ただし、二つでは多数決をするわけにはいかないから、 二つの記述のどちらに誤りがあるかを訂正するまではいかない。 すなわち、エラーの《訂正》までは至らない。
プログラムの「読者」は二人いる。 コンピュータと人間だ。 コンピュータはコードだけを読み、動作する。 人間はコードとコメントを読み、メンテナンスする。
二つの記述を同じ観点で行うのは意味がない。 なぜなら、同じ観点で書いた場合にはエラー検出しにくくなるからだ。 だから、コードと同じことをコメントに書くのは無意味だ。
一回目はインフォーマルに、 二回目はフォーマルに記述するのは一法である。 コメントはインフォーマルな記述、 コードはフォーマルな記述といえなくはない。
ただし、すべてのコードにコメントを付けるのは、 これまた意味はない。 多すぎるコメントは人間という読者への負担となるからだ。
適切なコメントを書かないプログラマは、 読者としてコンピュータしか想定していない。 コメントを書くか書かないか、という単純な話ではなく、 適切なコメントは何か、どう書くのが「読者」に寄与するのか、 それを考えるのが正しい姿勢だろう。
つまり、プログラムを書くという行為でもまた、 《読者のことを考える》という原則が有効なのである。
読みやすいコードについての最近の定番書はこちら。
◆『リーダブルコード』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4873115655/hyam-22/
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オリジナリティについて。
ふと思ったこと。
本を書くときに「ネタ元」というものがある(場合がある)。 たとえば結城は数学者ではないので、 自分が本の中に書く数学的内容というのは、 どこかの本を見て学んだ内容であることがほとんどだ。
結城が書く本の末尾には参考文献や読書案内が書かれていて、 参考にした本が列挙されていることが多い。 あえていうならば、それらの本が「ネタ元」といえる。
数学的内容を学びたいならば、 それらの参考文献を読めばだいたい書いてある。 少なくとも情報としては書かれていることが多い。
だとしたら、 わざわざ結城が新しい本を出す意味はどこにあるのか。
結城の本を読むよりも、 参考文献に書かれている本を並べて読む方がいいというのなら、 そうすることは可能だ。 もし読者がそうしないとすれば、 読者は結城の本に何らかの価値を見出しているからであろう。
オリジナリティというのは、 その価値の一部をなすものではないか、 と思っている。
料理のメタファは有効だ。 食材という素材があって、料理法があって、 具体的に提供される料理がある。 料理に対して、 「素材が同じなら、お腹の中に入ってしまえば、栄養的には一緒」 なんて言う人はいない。素材をどう料理して、 美味しく楽しく食べてもらうか。そこにオリジナリティがある。
料理の価値は食べる人が決める。
本の価値は読む人が決める。
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フォロワーさんの数の話。
結城はTwitterが大好きで、毎日たくさんツイートしています。
先日、結城をフォローしてくださる「フォロワーさん」の人数が、 なんと3万1000人になっていました。たくさんの人がフォローしてくださるのは、 うれしいことです。結城のことをごひいきにしてくださっているということですから。
といっても大事なのはその人数ではなく、 ひとりひとりの方だと思っています。 そのつもりで、毎日のツイートをしていきたいな (まじめなものも、気楽なものも)。 メッセージはいつも《あなた》に向けて送られるのですから。
とはいうものの、 人数をまったく意識しないわけではありません。
あ、それで思い出しました。
先日、ある方から、 「自分がTwitterでツイートするとよくもめごとになってしまう。 それからフォロワーさんが増えない。どうしたらいいだろう」 というご相談を受けたことがあります(オフラインで)。
結城はもちろん「正解」はもっていませんが、 その方の話をもっと具体的にお聞きし、 思うところをその方にお話ししました。
そこでのポイントは二点。
一つ目は「相手を論破しようとしない」ということ。 論破しようとか、相手の考えを正そうとか、 自分の力で相手を変えようと思わないこと。 論破されて行動を変える人は少ないものです。
二つ目は「自分と相手の二人だけのやりとりのように見えても、 とても多くの人がそのやりとりを見ている」ということ。 Twitterではつい、 一対一で話しているような錯覚を起こしてしまいがち。 目の前の相手に集中して話すのはいいが、 意識のどこかでは必ず「他の人から見られている」ことを忘れないのは大事。
僭越ながら、そんなことをお話ししました。 何かの役に立てばいいのですけれど。
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では、今週の結城メルマガを始めましょう。
どうぞ、ごゆっくりお読みください!
目次
- はじめに
- 悩みつつ『数学ガール6』を書いている - 本を書く心がけ
- 結論は特にないけれど、の話
- 専門家について
- おわりに
コメント
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