結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年4月19日 Vol.212
はじめに
おはようございます。
いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
熊本地震で被災なさっている方に、心よりお見舞い申し上げます。
被災していない地域でも、 ほとんどの方が被災している方のことを思い、 何かできることはないかという気持ちになっているでしょう。
被災していない地域から、 何か被災地のためになることをしたいなら、 公的機関を使ってお金を送ることが、 最も効果的ではないかと思っています。
たとえば、日本赤十字社では「平成28年熊本地震災害義援金」 を受け付けています。
◆「平成28年熊本地震災害義援金」の受け付けを開始します(日本赤十字社)
http://www.jrc.or.jp/press/160415_004210.html
現在も非常に多数の方が避難所で生活なさり、 また場所によっては孤立状態になっている方々もいらっしゃいます。 本当に大変な状況の中でご苦労なさっている方々の、 身体と心の安全を祈っております。
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新刊の話。
先日の土曜日から、 結城の新刊『数学ガールの秘密ノート/場合の数』の先行販売として、 サイン本が一部の書店さんに並び始めました。 数に限りがありますので、土日で完売になった書店さんもあるようです。
4月16日(土)以降、一部の書店さんでサイン本先行販売
4月19日(火)以降、全国の書店さんで販売
また、サイン本以外の通常本でも、一部のチェーン店さんでは、 結城が書いた《メッセージカード》が同梱されて販売されます。 こちらはサイン本よりもずっと数が多くなりますので、 ぜひチェックしてみてください。
◆『数学ガールの秘密ノート/場合の数』メッセージカード取扱店情報
https://note.mu/hyuki/n/n5f9733f8cefc
サイン本情報、メッセージカード情報については、 以下のページからもリンクされています。
◆『数学ガールの秘密ノート/場合の数』
http://note7.hyuki.net
ようやく販売までたどりつきました。 「数学ガールの秘密ノート」シリーズは、 今回の「場合の数」で7冊目となりました。 これからもがんばって執筆を続けていきますので、 引き続き応援をよろしくお願いいたします。
もちろん、「秘密ノート」シリーズだけではなく、 『数学ガール6』の方も、がんばって書いていきますよ!
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本を買う話。
結城は ask.fm というインタビューサイトで質問に答えています。 以下は、そこに出てきた質問への回答に加筆したものです。
質問
結城さんは、買う本を選ぶときに規準にしていることはありますか。
回答
「誰が書いた本であるか」は、 購入するときに参考にしている大事な情報の一つです。 自分が過去に読んだことがあり「この著者はいい本を書く」 と認識している著者の本は積極的に買っていますね。 ここでいう「いい本」は、 「書かれていることに、ある程度の信頼がおける本」 という意味合いです。 買った本を読んでいて「これは信頼できない本だな」 と感じたときは、そこで読むのをやめます。
それから、本を買うときには「値段」 をあまり気にしないようにしています。 時間を買うことがお金のよい使い方であり、 本を買うことは、時間を買うことにつながる場合が多いからです。
アマゾンのマーケットプレイスなどで中古書を買うこともあります。 しかし、中古で買うのは絶版の場合がほとんどで、 値段が安いから中古で買う、という選択はあまり行いません。
結城の仕事は本を書くことであり、 自分が読む本というのはいわば商売道具。 必要な本は高くても買います。不要な本は安くても買いません。 これはいわば「心意気」の問題だと思っています。
調べ物で図書館はよく使います。 そこで見つけたよい本を改めて買うこともよくあります。 結城は本にぐちゃぐちゃと書き込みをして読むので、 買うことは無駄になりません。 図書館の本に書き込みはできませんからね。
本を買うときには以上のようなことを考えています。
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エラーの話。
先日、Wiredの翻訳記事を読みました。
◆ギークママ、月へ行く
「アポロ計画」を支えた女性プログラマーの肖像
Her Code Got Humans on the Moon
http://wired.jp/special/2016/margaret-hamilton
人類を月に送った「アポロ計画」の背後で活躍した、 マーガレット・ハミルトンの記事です。 にこにこしている眼鏡の女の子の写真にひかれて読み始めたのですが、 とても興味深い内容でした。
特になるほどと思ったのは、エラー処理のくだり。 ハミルトンが、あるエラーチェックのコードを追加しようとしたら、 「宇宙飛行士はそんなミスをしないよ」と上層部に却下されてしまう。 ところがアポロ8号の宇宙飛行士が、 まさに「そんなミス」をしてしまうというエピソードです。
いつの時代でも、 エラーは起こるべくして起きるのだなと感じました。
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送信取り消しの話。
エラーといえば、 「まちがった相手にメールを送信してしまった」 という経験は誰しもあると思います。
結城は使ったことがありませんが、 Gmailでは「送信の取り消し」を設定できるそうです。 「送信取り消し」を有効にしておくと、 指定した秒数だけ、送信を保留にしてくれるようですね。
◆メール送信の取り消し
https://support.google.com/mail/answer/1284885
まちがった相手にメールを送るとき、 特に問題になるのは添付ファイルです。 重要な情報をわざわざzipでまとめ、 それをまちがった相手に送信したら大変なことになります。
結城は、編集部に原稿ファイルを送るときにはDropboxを使います。 zipファイルをDropboxに保存しておき、 そのzipファイルへの共有リンクを編集部にメールするのです。 共有リンクを受け取った編集部は、 Dropboxからダウンロードすることになりますが、 その場合、Dropboxのアカウントを編集部が持っている必要はありません。
◆他の人とファイルまたはフォルダを共有するには?
https://www.dropbox.com/ja/help/274
Dropboxのようなクラウドストレージ経由でファイルを渡せば、 万一メールの送付先をまちがえたとしても安心です。 相手がファイルをダウンロードする前に共有を切ってしまえば安全だからです。 メールにファイルを添付していたら、もう取り戻せませんが、 共有リンクを使えば、 相手がダウンロードするまでの間に時間の余裕があるのです。
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ムックの話。
結城のコラム記事(2頁分)が掲載されているムックが刊行されましたので、 ご紹介いたします。
◆『仕事ですぐ役立つ Vim&Emacsエキスパート活用術』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4774180076/hyam-22/
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リボ払いの話。
先日、こんな記事を見かけました(注意:2012年の記事です)。
◆リボ払いを計算した
とんでもなく損をしていた事がわかった話
http://camatome.com/2012/07/ribobarai-keisan-son.php
クレジットカードで支払い方法の選択肢の一つに「リボ払い」があります。 「いくら使っても、支払いは毎月一定額にできる」という方法です。 でもよく計算してみると、 毎月5000円定額のリボ払いで、20万円の買い物をすると、 合計で25万円の支払いになることもあるとのこと。
そもそもリボ払いでは、年利(実質手数料)が非常に高く、 毎月の支払いを抑えるために借入期間が長くなります。 つまり「高金利で長期」という借金をしている状態ですね。 上の記事は2012年のものですが、現在でもたとえばJCBは15%です。 この低金利時代に「年利15%」の借金というのはそれだけでも恐い話。
お金に関わるリテラシーというのは大切なことですね。
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「写経」の話。
先日 @tatesuke さんという方が、 『数学文章作法 基礎編』を全文「写経完了」したというツイートをなさっていました。
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数学文章作法基礎編、写経完了。いやーやはりいい本だった。
書き写してて惚れ惚れした。
「読者のことを考える」こと。確かに伝わりましたよ結城さん!
https://twitter.com/tatesuke/status/717941984879517696
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つまり、この方は結城の本を一冊まるごとタイプし直したのです(!)。 二月の半ばから四月のはじめまで(途中数週間休みつつ)掛けたとのこと。 びっくりですね。 結城は、この方の経験が必ず文章作成に大きく役立つはずだと思います。
あなたは、他の人の文章をタイプしてみたことはありますか。 結城は、文章の練習として、 短編小説を何回か「写経」したことがあります。 時間が掛かって非常にたいへんですが、 多くを学べるのは確かですよ。
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解説文の話。
ある出版社さんからメールが来ました。 書籍を復刊したいが、その本の巻末に結城の解説文を付けたいという依頼です。 あまりこういうお仕事はしていないのですが、 書籍のチョイスが絶妙だったのでお引き受けすることにしました。 どんな書籍かは、お仕事がもっと進んでから公開します。
解説文を書く仕事を引き受けた……とはいうものの、 それほど簡単な仕事ではありません。 結城にとって、いつもと違う頭の使い方をすることになるからです。
まず、解説文を書くもとの書籍がありますから、 そこから話を逸脱するわけにはいきません。 これは当然ですね。 いつもならば自分の好きな話題を好きなように書けばいいのですが、 解説文を書くときにはそうは行きません。
だからといって、もとの書籍の要約文が求められているわけでもありません。 少なくとも、今回依頼された書籍に関しては違います。
そのように考えていくと「この本の解説文を書く仕事には、 いったいどんな意味があるんだろうか」という方向に意識が向かいます。 「すでに書籍としてまとまったものがここにある。 それに対して何らかの文章を付け加えるというのは、 どういうことだろう」と考えたくなりますよね。
そして、そう考え始めると「解説文を書く」という仕事が、 急激に魅力的に見えてきます。なぜなら、 ここには「解かれるべき謎」が隠されているからです。 蛇足にならないような解説文とは何か、 そのような謎を解かなくてはいけません。
ここで、文章を書くときの原則を思い出します。 すなわち《読者のことを考える》です。 この本を読者が手に取り、読み進めるときのようすを想像する。 そこから正しい道が見えてくるはずです。
ヒントは、 今回解説文を書く本が「復刊される本」という点にありました。 すなわち、この本が出版されたのはずいぶん昔のことなのです。 そのような本に対して解説文を書く意味は何か。
結城は、今回の仕事の意味は、
「この本が《現代という時代》に果たす役割を読者に示す」
ところにあると考えました。 そのまま復刊させたときに生じる誤解や誤読を防ぐための情報、 補足的な解釈、そのようなものが求められているのだ、 と仮説を立てました。
編集者に確認を取って、その方向性でまちがいがないことを確かめ、 現在作業を進めているところです。
復刊する書籍の解説文を書く、というこの仕事については、 また変化がありましたらアナウンスしたいと思います。 どうぞお楽しみに。
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Web連載の話。
Web連載「数学ガールの秘密ノート」の新シーズンが始まりました。 第151回〜第160回の10回は、
「数を作ろう」
をテーマにして彼女たちの数学トークが進みます。 毎週金曜日Cakesで更新されますので、応援してくださいね。 金曜日の7:00〜土曜日の7:00の24時間は無料で読むことができます。 また、150円で一週間、Cakesの全記事を読むことができます。
◆Web連載「数学ガールの秘密ノート」
https://bit.ly/girlnote
(シングルトンというのは、 数学では「要素が1個しかない集合」のことを意味します)
新シーズンのWeb連載も応援してくださいね。
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では、今週の結城メルマガを始めましょう。
どうぞ、ごゆっくりお読みください!
目次
- はじめに
- 学びについて
- 魅力的な話ほど注意が必要 - 文章を書く心がけ
- シンプルライフについての対話
- 《あの人》に伝えるために - 文章を書く心がけ
- 季節は初夏へ…
- おわりに
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