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『カエルの楽園』第二章
 
   
 次の日、元老会議が行なわれました。
 この日は朝からずっと雨が降っていたこともあって、小島の周囲には大勢のカエルたちが集まっていました。ソクラテスとロベルトもそこにいました。
 会議の冒頭にプロメテウスが発言しました。
「昨日、南の崖を登ったウシガエルは五匹を数えました。これはハンニバル兄弟が確認しています」
 元老たちの顔には明らかに動揺の色が浮かびました。
「もはや一刻の猶予もなりません。スチームボートとの協定を結ぶ必要があります」
 いつもならすぐに反対の声を上げる元老たちも黙って聞いています。おそらく、ウシガエルが一挙に五匹も崖の上に姿を現したという事実を深刻に受け止めているからだろうと、ソクラテスは思いました。
「たしかにスチームボートはわたしたちを利用しようとしているのかもしれません。それは絶対にないとは言えません。しかしわたしたちもまたスチームボートを利用しようとしているのです。すべて自分たちだけが得をする約束事というのは、この世に存在しません。それはあまりにも都合のいい考え方ではないでしょうか。スチームボートが誰かに攻められたならば、わたしたちは彼を助けるために一緒に戦わねばなりません。その代わり、わたしたちがウシガエルから攻められたときは、スチームボートが助けてくれるのです。この恩恵は限りなく大きなものがあります」
 元老たちはみんな考え込んでいます。
「みんな、騙されるな!」