みなさん、こんにちは、百田尚樹です。


月曜日のニコ生でも話しましたが、先週、私は北海道の網走に初めて行きました。網走青年会議所主催の講演だったのですが、時間が余ったので、「網走監獄博物館」を訪れました。


そこは網走刑務所が昭和50年代に改装された際、明治以来使われてきた監獄をそっくり移設し、それを博物館にしたものです。


多くの囚人たちが暮らしてきた監獄はまさしく歴史的建造物です。


そこに一歩足を踏み入れた途端、私の鼻をついたのは強烈な匂いです。それは汗と糞尿が入り混じった何とも言えない異臭です。言うなれば、それは囚人の匂いです。木造の壁や廊下や天井にしみ込んでいるのです。移設して30年以上経っているのに、今もその匂いが消えないで残っているのです。


それだけに生々しさが迫ってきます。囚房はもちろんすべて空ですが、中を除くと、さっきまで囚人がいたような錯覚に陥ります。


一つ一つの囚房にはどれくらいの囚人たちが出入りしてきたのでしょうか。


 

私がとくに興味をひかれたのは白鳥由栄が入っていた独房です。


生涯で4回も脱獄し、「昭和の脱獄王」と呼ばれた白鳥は、大袈裟ではなく世界一の脱獄王です。秋田刑務所、青森刑務所を脱獄した白鳥が3度目に入れられたのは、「脱獄不可能」と言われていた網走刑務所です。過去2度脱獄した白鳥に対して、看守たちは徹底した監視をします。しかし白鳥は網走刑務所も見事脱獄してしまうのです。


彼の生涯は吉村昭氏によって『破獄』というノンフィクション小説で描かれています。手に汗握るスリリングなドラマです。興味のある方はお読みください。