ぼくは出版業界とは今でも多くの仕事をともにさせてもらっているが、そこで聞こえてくるのは「本が売れなくなる足音」だけである。本は年々売れなくなっているが、そのスピードはなおも加速している。
おそらく、写真のフィルムもこんな感じだったのではないだろうか。みんな、売れなくなるとは分かってはいるけれどもしかし売れなくならないでほしいという祈りの中、それは確実に、しかも加速度を増しながら売れなくなっていく。そうして、早めに決断して足を洗うか、あるいは事業転換するか、もしくはもろともに消滅するかを否応なく選ばなければならない。
ところで、本というのは1980年代に入って爆発的に売れ出した。ぼくのおじいさんは戦前から出版社を経営していたので、その昔話を聞くとまさに隔世の感を味わうのだが、例えば戦後しばらくは「紙」が非常に高価で、本は値段が高いためほとんどの庶民が買えなかったのだそうである。そのため、出版
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