社会の「科学化」は、この先大きなトレンドになるだろう。ちなみに「エビデンス・ベースド」という言葉が以前流行ったが、これは最近廃れつつある。なぜかというと、だいたいそこで用いられる「エビデンス」というものが、実に不確かで役に立たないことが多いからだ。特に社会学で用いられるデータは、取り方に研究者の思惑が強く反映されるため、なおさら信用がおけなくなる。

「社会の科学化」というのは、このエビデンス・ベースドとは一線を画す。そこでは逆に、人間をデータ(エビデンス)としてとらえるのではなく、むしろ「不確かなもの」としてとらえる。「データではとらえきれない不確かな存在」としてとらえる。その方が、より問題を解決できるからだ。

例えば、コロナに対して科学的ではなく「お気持ち的」に向き合う人たちがいる。そういう人たちを無知と決めつけて終わりにするのではなく、むしろそれこそが人間なんだ――と肯定的にとらえる。