15

 二時間後、エミ子は、皆生駅にほど近い米子市立病院の廊下のベンチに一人でポツンと座っていた。そこに、バスタオルを肩に羽織って、ジャージに着替えたぼくが現れた。それで、立ち上がったエミ子はぼくの方へと駆け寄ってきた。
「榊くん! 大丈夫だった?」
「ぼくは大丈夫。一応検査してもらったけど、なんともないって」
「そう! 良かった……」
「彼女の方は?」
 と、ぼくは飛び降りた女に子について尋ねた。
「あの女の子は、まだショックで眠っているらしいけど、命に別状はないって。身元も分かって、今はお母さんを呼んでもらってる」
「そうなんだ。じゃあ、ひとまずは安心だね」
 それからぼくは、エミ子を促すと廊下のベンチに並んで腰かけた。すると、エミ子の方からこう切り出した。
「榊くん……えらいね。凄かったよ。あんなふうに飛び込んで」
「いや、泳ぐのは比較的得意な方だから」
 と、ぼくは首をすくめながら