台獣物語12(3,020字)
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その人物は、馬にまたがった格好でステージ上に現れた。全身には、何やら甲冑のようなものを身につけている。さながら中世の騎士のようだ。
しかしぼくは、そんなエミ子を落ち着かせようと、努めて冷静に言った。
「いや、あれはそもそも立体映像だから、あそこに本当にいるわけじゃないよ」
「あ、確かに……」
「それに、あいつはけっして『馬にまたがっている』んじゃない」
「えっ?」
「ほら、よく見て。あいつの下半身……」
それで、エミ子は目を細めて、もう一度ステージ上を確認してみた。すると、先ほどより一段高い声で、再び驚きの声を上げた。
「あの人……下半身が馬になってる!」
「そう――」
と、ぼくは頷いた。ステージに現れた男は、馬にまたがっているのではなく、下半身がそのものが馬になっていた。つまり、ギリシア神話に出てくるケンタウロスのような格好をしていたのだ。
といっても、もちろん本物のケン
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