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     * 堀潤のテレビでは言えない話 vol.23

     ~「イノベーションを阻害する日本型産業構造」の巻~

         

      発行:8bitNews  2013.9.16 (毎週1回発行)

               

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こんにちは!

メルマガの更新が遅れてしまいました。申し訳ありません。

先週は初めての本の出版でイベントや番組収録なども相次ぎ、もう1人か2人くらい自分がいるといいなと痛感しました。

今週には講談社からさらに一冊、そして今、執筆集なのですが11月には角川書店から、日本とアメリカの原発メルトダウン事故のその後を取材したルポがまた出版される予定です。平日毎晩深夜0時から放送の「ネルマエニュース24」の終了後、原稿と向かい合っています。また、11月からは、ドキュメンタリー映画「変身 Metamorphosis」の自主上映会も各地でスタートする予定です。

皆さん、今後とも何とぞ宜しくお願い致します。


さて、

日本列島を台風が直撃。


皆さんのお住まいの地域は大丈夫ですか?

京都では川の堤防が決壊し、道路が冠水、住宅街にまで水が流れ込んでいる箇所がある様子でとても心配しています。

台風はこの後、日本列島を北上し関東を暴風域に巻き込みながら東北地方に迫っています。東京電力福島第一原発への影響も懸念されます。何とか台風の勢力が弱まり、甚大な被害がでない事を願ってやみません。

先週は2020年夏のオリンピックの開催地に東京が選ばれ、テレビはその話題で沸きました。しかし一方で、安倍総理が国際舞台で「原発の汚染水は完全にコントロールされている」と発言するなど、歓迎できない場面もありました。

総理大臣の発言後、直ちに東京電力側から、コントロールされているという認識ではないと会見で発言するなど、喜劇のような展開に思わずあきれてしまった方も少なくないのではないでしょうか。中には、海へ流れ出た放射性物質は海全体から見たら微量で

やがて希釈されるので問題ないとする意見も散見されますが、国際社会はそれ程安易には捉えていません。

昨年夏にスタンフォード大学が日本周辺から太平洋を渡って南カリフォルニアで水揚げされたクロマグロへの放射能汚染の影響を調査した所、震災前に比べてセシウム137の量が5倍になっていることがわかったと発表し、地元でも話題になっていました。


「なぜ、日本は国連などの支援を受けて国際チームで原発の収束作業にあたらないのか」

と、カリフォルニアの一部の米国市民達からは現在の対応を非難する声があがっています。


徹底した情報公開と、国際チームの編成による対応が急務だと思っています。

今後とも様々な形でそうしたメッセージを発信し、実行に繋がるよう呼びかけて参りますので、今後とも宜しくお願い致します。


ではでは、今号のコンテンツはこちらです!↓


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├○    堀潤のテレビでは言えない話  vol.222013.9.16

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├○  01.【テレビでは言えない本当の○○】

├○  特別編「人の写真を雁首と呼ぶな」

├○ ~繰り返されるメディアスクラムの現場から~

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├○  02.【ルポルタージュ】

├○  次世代メディアへの創造力+α

├○  第13回  「テレビがテレビではなくなる日②」

├○ ~パナソニックCM拒否問題 メーカー側に配慮で手打ち~

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├○  03.【ルポルタージュ】

├○  マイコの下克上研究者の道 『被害者学編』

├○  苦行な院生生活を徒然なるままに

├○  第5回「優しい心が一番だよ」

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├○  04.【ルポルタージュ】

├○  フクシマ日常論 ラジオ福島・大和田メール

├○  第6回「総理発言への福島県の本音」

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├○  05.【告知】今週のスケジュール& お知らせ

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前回「Vol.22」へのリンクはこちらです。

[リンク] http://ch.nicovideo.jp/horijun/blomaga/ar335799


未読の方は併せてお楽しみ下さい。



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┗■  01.【活動日記】

テレビでは言えない本当の○○

   

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宇野常寛氏の「メルマガPLANETS」でかつて連載していた人気コーナー。

当時は、ペンネーム・カリホリの名での執筆でしたが現在は本名で。

メディアの内側から見た事件・事故・社会問題報道の裏側を紹介します。

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今月はじめ、トルコを旅行中の宮城県と富山県出身の日本人女子大学生が、男に襲われ1人が死亡、1人が重傷を負うという痛ましい事件が発生した。共に22歳だ。

インターネット上では、直ちに2人のFacebookが特定され、彼女達の写真や日記がネット上でシェアされた。テレビ報道でも、これらの写真が使われていた。

事件報道で被害者の写真はどのように入手され、扱われるのか。

筆者が見つめてきた現場の実態を皆さんと共有し、今回は共に報道の未来を考えたい。


■「雁首」取りに固執するセンショーナリズム


 もうひとつ、日本のテレビニュースの体質を象徴するマスコミ用語がある。

「雁首を取ってこい」。

 これが何を意味する言葉か、想像がつくだろうか。「雁首」とは本来、形が雁の首に似ていることから、煙草を吸うためのキセルの頭部を指す意味で使われてきたが、会話表現の中では俗っぽく、人の頭や顔を指すことがある。「雁首並べてポカんとしやがって」などという場合の、あの雁首だ。

 これがテレビや新聞では、事件や事故で亡くなった人や、または事件を引き起こした本人の「顔写真」の意味で使われるのだ。


 ニュースの現場では、事件や事故がおこるとまずは警察発表などをもとに被害者や加害者本人、そして家族など関係先の情報を洗い出し、取材に足を運ぶ。

 当該地域の警察や消防署では、たいてい副署長が広報窓口になり、定期的に記者達からの質問を受ける「囲み」取材が行われる。2、3時間に1回ほどのペースで、捜査状況の一端が記者達に伝えられ、そうした囲みによって、被害者や加害者の実名、場合によっては住所などがマスコミに伝わる。

 当局から直接、顔写真の提供を受けることはほとんどないので、大抵の場合は、遺族や関係者本人から直接、個別に提供してもらうことになる。「地どり」と言って、記者が、現場や周辺の家々を一軒一軒呼び鈴をならしてまわりながら関係者を探し、写真などを持っていないか聞いてまわる。

 そこで、被害者が映っている卒業アルバムを元同級生から貸してもらったり、加害者が知人に送った年賀状を見つけ出し、プリントされた写真をトリミングしたりと、あの手この手で事件や事故の関係者の実像を入手するのだ。


 とは言っても、写真を持つ関係者を見つけ出すのは簡単なことではなく、さらに提供までしてもらうのは難しい作業でもある。注目事件の被害者や加害者の顔写真がなかなか見つからない時、報道のデスクたちが部下の記者たちに「雁首早くとってこいよ!」と葉っぱをかける光景は、マスコミの現場では日常的に繰り広げられている。

 実は、僕も同僚や上司から“雁首隊長”と呼ばれた時期がある。他社の記者が入手できない写真を独自で見つけ出す機会が多かったからだ。

 秋田で起きた子殺し、秋葉原の路上で起きた大量殺傷、千葉のひき逃げ、京都の大学生殺害、長野で起きた土石流災害、宮城の大地震など、様々な現場で命を落としたり、逆に命を奪ったりした人々の写真を報道で伝えてきた。

 しかしデスクから「雁首をとってきてくれ」と言われるたびに、「どうして人の顔写真を雁首だなんて言うんだ。偉そうじゃないか」と、いつも心の中でつぶやいていた。


 マスコミの報道現場では、実名や顔写真へのこだわりが強い。社会的なインパクトが格段に違うというのだ。事件や事故による被害者を少なくするため、警鐘を鳴らすには、必要不可欠な要素だと教えられる。

 そんなに社会正義を主張するなら、まずは自分たちで「雁首」なんて言い方をやめるべきだという反発心もあったため、実際の現場では、顔写真の入手に全力をあげるのは犯人逃走中の未解決事件のみ、そうでない場合は、いたずらに遺族や関係者の心を逆なでするのをやめようと、デスクに「ありませんでした」と答えるようにしていた。

 未解決事件の場合、街頭のテレビで自分が殺めた被害者の顔写真を見た容疑者が、自らの罪の深さを感じ、自首してくれるかもしれないと思っていた。遺族や関係者に写真の提供をお願いする時には、そうした狙いを丁寧に説明することに注力した。それでも「そっとしておいて欲しい」と言われた場合は、無理に出すことはしなかった。


 そうした実名や顔写真にこだわるマスコミの常識も、ネットの普及によって問い直されつつある。

 2013年1月、アルジェリアで日本人を含めた多数の犠牲者が出る襲撃事件が起きた。現地に多数の社員を派遣していた日揮と日本政府は、遺族の要望を受け被害者の実名公表を差し控えると発表。これに対し、大手新聞などが加盟する内閣記者会は、政府に対し、国民の関心が高いとして、亡くなった社員の実名を公表するよう要請した。

 そうした中、朝日新聞は、独自の遺族への取材をもとに実名報道を断行する。しかし、その日のうちに遺族の親族を名乗る男性が、実名の公表は許諾していないとブログで発表、朝日の報道を批判し、Twitter上などでも議論を呼んだ。

 とある大手紙のベテラン記者は、実名報道に拘る理由として「一人一人の人生を記録し、ともに悲しみ、ともに泣くため」だとTwitterで語り、今回の襲撃事件に関して「私は遠く離れたアルジェリアで、非業の死を遂げた勇敢な同胞のために泣きたい。日本人全員と一緒に悲しみたい。私はそれこそが悼むことであり、弔うことだと思うのです。しっかりと社会死者を弔いたい」と説明している。


 しかしながら、こうしたメディア側の対応に、多くの一般の反応は批判的だった。その通りだろう。他に伝えなくてはならないことは、襲撃事件が起きた理由や背景、現場の状況、今後の危機、海外でのテロリスクの現状と対策など山ほどある。実名報道か否かなどを論争している場合ではない。

 特にこのケースの場合、事件が未解決で遺族が動揺している状況下で、それを無理矢理、国民の関心事だから、弔いたいから、一緒に泣きたいからなどというメディア側の都合でこじ開けることには、まったく同意できない。

 仮に、政府が公表を差し控えることに対して、国家権力による事実の隠匿だと批判するのであれば、それぞれ各社が正面切って遺族と向き合い、取材し、その必要性を説明し、理解を得て報道に踏み切ればいいのだ。


 結局のところ、普段から「雁首」などという表には出せない呼び方を使うマスコミが傘に着る社会正義とは、時代錯誤なセンセーショナリズムでしかないように思われてならない。

「僕らのニュースルーム革命」(幻冬舎)より発売中!

http://www.amazon.co.jp/dp/4344024478/ref=cm_sw_r_tw_dp_FeOnsb18MJSRC


講演や講師の依頼なども受け付けています。

hori@8bitnews.org までぜひ!



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┗■  02.【ルポルタージュ】

  次世代メディアへの創造力+α

     

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講談社・現代ビジネスで連載中の「堀潤の次世代メディアへの創造力」。

ジャーナリズムに特化した連載ですが、

このブロマガでは、として、新たなサービスやテクノロジーに関して、

世界各国の動き現地レポートを交え報告します。

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現代ビジネス「堀潤の次世代メディアへの創造力」はこちら。 

[リンク] http://gendai.ismedia.jp/category/horijun


シリーズ「テレビがテレビではなくなる日」

【第2回】パナソニックCM拒否問題 業界ルール配慮でイノベーション後退


■業界ルールを逸脱しているという指摘


パナソニック製スマートテレビのCM放送拒否問題は、メーカー側がテレビ局に配慮する形で幕を閉じた。


今年7月上旬、電源を入れると放送番組とインターネットサイトなどが同時に画面に表示されるのは関係業界で定めたルールに違反しているとして、民放各局がパナソニックが開発した新型スマートテレビのCM放送を拒否しているということが明らかになった。


テレビ局が大口の広告主のCM放送を拒否するのは異例だが、局側は、テレビ放送とインターネットが同時に表示されることで視聴者に混乱を与えるという理由から強い姿勢を打ち出していた。


スマートテレビとは、いわゆるインターネットと連動した機能を充実させた次世代型のテレビで、放送番組を見ながらYouTubeを同じ画面で起動させたり、スマートフォンの様にアプリを起動させてテレビで動画コンテンツなどを視聴できる仕組みを持つ。


経済産業省調査委託事業でまとめられた「次世代テレビに関する検討会」の報告書によると、2012年の第一四半期に全世界で出荷されたテレビの約20%がスマートテレビで、日本が36%、中国が30%、西欧が29%を占めるという。そのうち、中国や西欧では2011年に比べると40%以上の高い伸び率を示しており、日本も含め、世界的に今後需要が見込まれる分野だ。

http://www.meti.go.jp/press/2012/02/20130228001/20130228001-4.pdf


筆者が去年、米国留学中に電気店で進められて購入した新型のテレビは、まさにスマートテレビで、実際、地上波放送を見る時間より、ウォールストリートジャーナルやハフィントンポストが提供するアプリを起動して、ネットを経由したニュース番組を視聴する時間などが多かった。


今年4月に販売が始まったパナソニックの「スマートビエラ」は、こうした需要を追い風に、インターネット機能をさらに充実させたもので、音声認識によるレコメンド機能で、テレビ番組だけではなく、YouTubeなどのインターネット動画も同時に表示させるなど、放送と通信の融合を液晶パネルの中で積極的に実現させていった機能が売りになっている。

https://www.youtube.com/watch?v=PSa06b9Gh9g


テレビ局側がルール違反だと指摘したのはまさにこうした機能に関してだという。


■放送・通信・家電業界でつくる業界団体・ARIBとは


ルールを定めているのは、ARIB・一般社団法人電波産業界という組織で、放送業界、通信業界、家電メーカーなどで構成されている業界団体だ。今からおよそ18年前に設立され、2年前の2011年4月から一般社団法人として、スマートテレビの技術などの国際統一基準の策定に向け活動を進めている。


ARIBが定めたルールでは「混在表示禁止の原則」を掲げ、“放送コンテンツを提示しているときに放送事業者以外の提供するコンテンツを起動するときは混在表示となることを避けるため放送画面を消し、全画面に当該コンテンツを提示することが望ましい”としている。

http://www.arib.or.jp/english/html/overview/doc/4-TR-B14v4_8-2p3.pdf


民放各局はこうした業界内のルールを破っているとして、このままの機能ではCMは放送できないと判断。パナソニック側との協議が行われる事になった。


そして、今月12日。

パナソニックは、来年以降発売する新型スマートテレビの仕様を見直し、インターネットの番組か放送番組かを視聴者が明確にわけて認識できるよう、事前に承諾を得るような仕組みに仕様を変更すると局側に伝えたという。その結果、民放各局はCM放送拒否を解除することになったと複数のメディアが伝えた。

テレビのイノベーションは、業界ルールに配慮する形で後退した印象だ。


■「テレビという概念から脱したい」エンジニアの本音

パナソニックをはじめ、メーカー各社は、“放送番組を見る”ためのテレビという概念を越えたあらたな情報機器としてテレビを再定義しようとする動きが盛んだ。テレビを“インターネットと接続された大型の液晶パネル”と捉え直すと、日常生活での様々な活用が見込まれる。


Skypeを使ってテレビ画面を通して、恋人同士が同時に放送されるドラマを見ながら楽しくおしゃべりをしたり、アプリを起動し討論番組にグーグルハングアウトのような複数でのテレビ会議システムを連動させて一般が自由に参加できる仕組みを整備したりと、可能性はかなり広がる。メーカーの技術者たちはこれまでのテレビの概念を越えた、新しいコミュニケーションの受け皿としての“テレビ開発”に積極的だ。


先日、とある大手電機メーカーの新型テレビの開発部門を訪ねた。試作機を見た上で筆者の意見が欲しいというので担当者から招かれた形だ。何重ものセキュリティーゲートを潜って通された部屋には、むき出しの基盤やコンピューターに繋がれた液晶パネルなどが並んでいた。守秘義務があるので詳細を述べる事はできないが、16:9という現在のテレビ規格で定められた液晶画面の比率でさえ覆すような、新しい提案を試みていた。ネットと連動して各家庭と情報発信元を結ぶ新しい通信の可能性を模索。しかし、若手の開発担当者からはこんなぼやきが口から漏れた。