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* 堀潤のテレビでは言えない話 vol.41 *
~権力とメディアについて考える~
発行:8bitNews 2015.5.23
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みなさん、こんにちは。
堀です。
今、名古屋にいます。テレビ愛知の討論番組「激論!コロシアム」の収録の合間です。
今夜のテーマは「大阪都構想論争」について、東京都の石原慎太郎元知事、大阪府の太田房江元知事などをスタジオにお呼びし議論しました。
石原氏といえば、橋下氏とは共に日本維新の会で共同代表をつとめた仲。
住民投票終了後、引退を表明した橋下氏とは、その直後に電話で1時間話をしたそうです。
その中で何を語ったのか。今夜のテレビ愛知「激論コロシアム」でお伝えします。
また、太田房江さんは橋下氏に反対して共産党との共闘を選んだ自民党大阪市議団を支持。自民党党本部の方針とはねじれもありました。
ご本人いわく、党本部からのプレッシャーもあったとか。何故なら、自民党本部にとっては、国政の場で「憲法改正」手続きを進めるのに自民党と維新の党との関係を良好に保っておくことが非常に重要。舞台裏を太田房江参議院議員が言及しています。
その辺りは、今夜のニコ生「みんなのクロス」でも紹介しますのでテレビ愛知「激論!コロシアム」とあわせてぜひごらんください。
さて、今回のブロマガでは「権力とメディアを考える」と題して、NHKの元プロデューサー永田浩三さんとのJ-WAVE JAM THE WORLDでの対談をお伝えします。
2001年に制作し放送した「ETV2001戦争をどう裁くか?問われる戦時暴力」が政治家によって番組内容を改変させられたという疑惑が持ち上がった際の当事者です。
永田さんはどうこの問題と向き合ったのか。真相を語っています。ぜひお読みください。
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堀)
先月31日、自民党はNHKとテレビ朝日の幹部を呼び出し報道番組の内容について
事情聴取をしたことをきっかけに「政治圧力ではないか」との批判が出ています。
そこで今夜は2001年、慰安婦問題を取り上げ、「政治圧力を受けたのではないか」と
物議をかもしたNHKの番組、ETV特集のプロデューサーをされていた元NHK職員で
武蔵大学社会学部教授、永田浩三さんをお迎いしてお話を伺います。
永田さん、こんばんは。
永田)
こんばんは、よろしくお願いします。
堀)
永田さん、僕は感慨深いですよ。僕は入局したのが2001年。
まさにこの問題が始まった頃、当時、局内にいて若手、新人の職員としては研修を受ける度に
この問題を引き起こしのはあくまでも、問題があったのはNHKの内部のプロデューサー達。
そういうような印象の話をよく受けて。
でも、僕らは介入があった。これは本当じゃないのか?果たしてここで屈していいのか?とかですね、いろいろな葛藤を持ちながら永田さん達の動向を、ある種内側から観察する側にいたんですね。
でも、そういった永田さん、先輩達の姿を見ていたので。
ある種、放送は常に権力からそういう弱い立場にあるんじゃないか、という視点で向き合うようになったんですね。
永田さんが、NHK時代にどう対峙してきたのかはこのあと、詳しくお話を伺っていきます。
まずは政治圧力騒動の発端とされている3月27日に放送されたテレビ朝日の「報道ステーション」について永田さんはあの日の放送をご覧になっていますしたか?
永田)
そうですね。夜、なるべく「報道ステーション」見るようにはしているんですけど。
ドキドキしながらあの夜は見てましたね。
私が前にNHKにいたとき、一番長かったのが「クローズアップ現代」という番組なんですけど。
今年、23年目。その内、8年間プロデューサーをしていて「編責(編集責任者)」も4年やっていたんですけど。
あの放送を見て思ったのは、自分はスタジオを見ている副調整室で腕組んでプロデューサーとして立ち会っていたら、どう振る舞っただろうか?
CMを途中挟むんですけど、立て直すことなんて、たぶん出来ないだろうということで、
ドキドキしてて。
あの古賀さんの発言もいろいろ読み解いてみたんですけど。
あのとき、リアルタイムでは、実は古賀さんと古舘さんはある程打合せが出来ていて、
古舘さんはかなりきつく古賀さんにあたるんですけど。
打合せの結果を見せてるんだろうと最初思って見てたんですよ。
堀)
ある種、折り込み済み。だから番組の方でも古賀さんをあの時点で呼ぶということは
それなりの発言は予想されているわけですし。
永田)
だから、堀さんもNHKにいらっしゃったからお分かりになると思うんですが、
NHKだとスタジオのゲストとそれなりに打合せもするわけですよね。
堀)
それなりどころか、何度もリハーサルも重ね、一言一句違わぬようにという空気があって放送に臨みますから。
永田)
だから、いきなりあのように始まってしまったら…後で、わかるんですけど。
それは凄くびっくりしましたし。
堀)
制作側としては驚くでしょうね。
永田)
あそこで古舘さんに同じ仲間としてつれないじゃないかっていうこととか、
テレ朝の幹部や古舘さんの会社についても文句言ってましたし。
官房長官の菅さんについても言っていて。
あとは、視聴者に向けてガンジーの言葉を引いて、いろいろ仰ったわけですけども、
考えてみればですね、一昨日は憲法記念日で3万人の集会があったわけですけれども、
憲法をこれからどうするのか、原発はどうするのとか、辺野古の基地はどうするのとか
問題山積みの中でメディアはもっとしっかりしようよ、テレビはもっとしっかりしようという
メッセージが古賀さんの根幹にはあったと。
で、そのことは僕は拍手を送りたいって実は思っているんです。
堀)
なかなか、物言えぬ空気が作らてれしまっているところは何とか打破していきたい。
永田)
そうです。だから確かにいきなりスタジオで始まるのはびっくりするし、僕がプロデューサーとしても本当にどうしたかなっていうぐらい驚いたわけですけど。
堀)
古賀さん、やるんだったら一言、言ってよと。
永田)
そうそう(笑)一言、言ってよって感じです。
だけども、アレもひとつの放送の有り様で。
歴史的な番組だったなって思いますね。
堀)
古賀茂明さんは番組コメンテーター降板の背景には、政治的な圧力あったんだという見解を示したわけですよね。
しかし、その後テレビ朝日側は圧力めいたものはなかった。
そして、あくまでも、コメンテーターの人選も通常の春の改変に伴うものだと見解を示した。
さらには、つい最近ですが、社内処分をして不適切だったということで、テレビ朝日局内で処分をするなどして。
放送法に照らし合わせても不適切だったというような対応にでていますね。
この古賀さんの見解とテレビ朝日側の見解の食い違いというのは、永田さんの目から見ると
どのように分析されてますか?
永田)
古賀さんは一人の出演者でいらっしゃるので、古賀さんから見えていた「報道ステーション」の
演出というのは真実だと思うんですね。
ただ、人事移動とか処分というのはいろいろな理由が付けられますから。
つまり、移動なんていうのは左遷であっても形式的には昇格になったりということはよくありますよね?
堀)
そうですね。
永田)
だから、本当の何て言うんですかね?
実はよく分からない。
だから、テレ朝はテレ朝なりの弁解が必要だったと思いますけれども、
私は古賀さんの言い分のそれなりに根拠がるようにずっと思っていますね。
堀)
僕はテレビ朝日がですね、社内処分をしたということについて、
必要なかったんじゃないかなと思うんですね。
例えそれがいろいろな世論から批判を浴びたとしても、テレビ局側としてはあの時点で
あのような放送をしたということが、古舘さんもあのような形で反論している訳ですし、
何か極めて不公平だったかと言われるとそうは思えないんですよね。
永田)
そうなんです。一生懸命あの中で古舘さんはバランスを取ろうとしてたと思います。
堀さんも司会とかキャスターをやられた経験としてですね、どうやって、あのリアルタイムでの混乱を終息させながら前に進めていくかということで、できる限りの事はやったと思いますね。
だから、あれが処分にあたるというのはちょっと意外に思うんです。
堀)
実際、政権与党による放送メディアに対する圧力という表現を用いたときに
これらの定義となるような考え方というのは?
永田)
難しいですね。
政治家というのは政治家自身は、つまり国民の代表である、視聴者の代表であると思ってるわけですから、放送がおかしいなと感じたら電話もかけてくるし、乗り込んできたりもしますよ。
それは正当な政治家としての振る舞いだと、政治家の方は思っている。
しかし、それをどこまでやって良いかということが問題だと思うんです。
放送メディアに対しての圧力というのは何を圧力というのか、ということなんですけど、
今言ったような乗り込んでくるとか、今回のように呼びつけるというのは分かりやすいんですけど、もうちょっと分かりにくいのが日常的にあるわけです。
NHKで言えば、年度ごとにその事業計画や予算を国会で承認されるということで、
その政権与党のご機嫌を損ねるわけにはいかないということで、特に3月とかに向けての
1月2月というのはあまり政権が嫌がるような番組は避けようねみたいなことが起きるわけです。これを政治圧力というのか、自粛っていうのはなかなか難しいところだと思います。
堀)
情報をコントロールする側の立場に立つと自分が何か明確な命令を下さなくとも
現場がそんたくして思うように情報が制限されていくこと。
この状況を作り上げることが逆に言うと犠牲者側の腕の見せ所みたいなところがあって、
永田)
そうだと思いますよ。
堀)
メディアと政治の関係って常にその戦いでしたよね?
永田)
本当にそうです。
堀)
なので、まさに、分かりやすく乗り込んで来てなんていうのは下手な政治家のやり方で、
それに対して放送局側がうまくどう切り返していくのかっていうのが、
本来は享受を持ったメディア人のスタンスを問われるところですよね。
永田)
テレ朝の番組の件で見てみても、生放送なんていうのは、もう始まってしまえば
出てる人がどう喋るかなんて実はチェックのしようがない世界だと思うんです。
ラジオも同じだと思います。
で、そういう中で前もって自粛の構えを放送者側が持っているかということが
実は決めてなのであって。
出たものについて文句を言うなんてことはあまり実は効果的ではないわけですから、
自粛してもらうっていうのが一番有効だと思いますよね。
堀)
永田さんはNHK時代に具体的にどのような経験をされてきたのでしょうか?
永田)
先ほど、堀さんが2001年のことに触れましたけど、2001年の1月30日の放送だったんですね「ETV特集」と仰いましたけど、番組は「ETV特集2001」ですね。
ちょうど、20世紀が終わるときにですね、戦争の時代と言われた20世紀を総括するということで、シリーズ4本の中の2本目に「慰安婦問題」を取り上げたんです。
その放送の中身をめぐって、すったもんだあったわけです。
簡単に言えば、今の慰安婦をめぐる論争の先駆けっていいますかね、
証言している方の真実性はどこまであるのか、日本政府にどこまで責任があるのか、
国際的にそれは果たして責任があるなしと、はっきり言えるのかどうか、みたいなこと等を問うてた番組なんですけど。
その放送前日にですね、現総理の安部さんがNHKの幹部と会って。
これを呼びつけたのか自主的に行ったのか分かりません。
でも、会ったその足でプロデューサーである私たちに劇的な番組の変更を命じた。
外形的事実はあると。
政治家に会って、即これまで合意していた番組を変えてしまうということは、
政治圧力ではないかと疑われた事件なんですね。
放送は劇的に変わってしまったわけですけど、この時に、つまり「放送がおかしいのではないか?」とかいろいろ市民の方たちから指摘も受けて、裁判も起きるわけです。
この時に私が思ったのはNHK側の非をなかなか、NHKのプロデューサーとして表に出せなかった後悔があるわけです。
いろいろ恥ずかしいことがあって、黙っていた長い時間があったわけです。
結果的には全部オープンにしてNHKとサヨナラするということになるんですけど、
今回のテレ朝の出来事も同じなんですけれども、どうやって市民と放送局が繋がれるかということが当時は実は出来なかったと思います。
堀)
僕はそういゆのを見ながら局内で育っていったので、絶対に何かあったら表にきちんと言おうと
思ってましたけど。
でも、まぁ大変ですよね?
このあと、後半にもさらに伺っていきます。
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