前回までのあらまし
全ての街で映画を見ようと誓った!
そんな具合で「広島」にやって来た!
ここもまた久しぶりに訪れる土地だ!
広島駅に到着した私は
「あれ?
まだ大王がタクシーに乗ってない!」
とあわてる出演メンバーに手を振り
一人で駅周辺をひろいだ!
自分でも薄々感づいてはいるのだが
私はどうやら夜間は群れる習性を持っているが
日中は単独行動が大好きなようだ!
そんな単独行動を代表する行為がこれだ!
これはいい「駅スタンプ」だ!
「谷町線八尾南周辺駅」のように
わざわざ駅員さんを呼び出して
何の絵柄なのか尋ねる必要もない!
一目瞭然のデザインだ!
夜には”駄洒落ハリソン”こと
「村井國夫」氏より
「みんなでお好み焼きを食べに行こう!」
という指令が発布されていた!
このスタンプは晩餐の興奮度を
大いに上昇させた!
ただただ「スタジアム」が好き
というだけで
「ルールも知らない競技」
のスタジアムも訪れた!
グッズショップで
多種多様な「帽子」が売られているのに驚いた!
「サッカーショップ」では
「帽子」はせいぜい2〜3種類しか売られていない!
なるほど!
これが「サッカー」と「野球」の違いか!
広島駅周辺を散々ひろいだ後は
大好きな「市電」でホテルに向かった!
私が広島駅でみんなと別れた理由の一つは
この市電に乗りたかったというのが大きい!
なんと素敵なデザインなのだろう!
「GREEN MOVER MAX(グリーン・ムーヴァー・マックス)」
と命名されたこの車体を見るだけで私は
ステージで歌っている「石野真子」さんを
客席から眺めている時と
同じときめきを感じてしまう!
「真子」さんならば「まっこちゃーん!」と呼べるが
「市電」ではそれは許されない!
そのつらさのぶん
余計に愛おしさが募ってしまうのである!
せめて文字でだけ叫んでみよう!
「グリーン・ムーヴァー!!!!!!!!」
翌朝の私はなかなかの早起きだった!
お昼過ぎに「市電」の
「八丁堀」駅に到着すれば良かったのだが
私はどうしても「GREEN MOVER」の最新車両
「GREEN MOVER LEX」
に乗車したかったのだ!
2013年に運行を始めたこの車両は
4年ほど広島にご無沙汰した私にとって
初めて目にする車体だった!
道路の真ん中に立つ駅で
数台の市電を見送っていると
さすがに不審者扱いを受け
「乗らないんですか?」
という言葉以外に
「大丈夫ですか?」
という気遣いも受けた!
待つ事一時間!
遂に「LEX」はやって来た!
広島市民にとっては
単なる街の景色の一部なのだろうが
私にとっては
”来る”とわかっていながら待ち伏せしているお店に
「大場久美子」さんが入店して来たような
そんな興奮を覚えた!
子供も老人もかき分けて最後尾を陣取った!
最前部は降車ドアと料金箱があるため
のんびりはできない場所なのだ!
最新車両と旧車両とのすれ違いに
ひろぎは高まった!
はてさて!
本番当日の昼間に「LEX」に乗車し
私が行きたかった場所とは?
そう!
「映画館」だ!
私はかねてからこの
「八丁座」という映画館を訪れてみたかった!
一体どういうコンセプトで建てられた映画館なのだろう?
シートは座面をパタンと倒して座る物ではなく
一脚一脚が完全に独立した
ふかふかのソファだ!
各席にはテーブルも備えられており
場内には提灯が下がっている!
そしてなんと!
後方には畳席まであるのだ!
そこは映画館と呼ぶよりはむしろ
歌舞伎小屋や寄席小屋の作りをしている!
そもそもロビーがこんな感じなのだ!
前回「博多」の「中洲大洋映画劇場」同様
見るのは何の映画でも良かったのだが
正直言って舞台本番前に大スクリーンで
『ギャラクシー街道』を見る気はなかった!
なので小さい方のスクリーンで
ダスティン・ホフマンの新作
『ボーイソプラノ』を鑑賞する事にした!
私は成長ホルモンの異常で
少年時代が異常に短く
小学四年生で声変わりを迎えたため
五年生からたった一人でバスやテノールを務めた!
つまり『ボーイソプラノ』という映画には
一切縁がない人生を送って来た!
しかし!
上映前にははっぴを着た従業員が
スクリーン前に登場し
「本日はようこそ!」
と芸人よろしく挨拶を始めた事で
私の「しりこ玉」は飛んだ!
なんなんだ!
なんて素敵な映画館なんだ!
私はすっかりこの「八丁座」に惚れてしまった!
映画の内容よりも
「八丁座」に感動してしまった!
今後もダスティン・ホフマンを見るたびに
この「八丁座」を思い出してしまう事だろう!
後に友人に聞いたところ
彼は菅原文太氏追悼企画として上映された
『仁義なき戦い』シリーズを
この「八丁座」で観たと言う!
なんとも羨ましい経験ではないか!
かつては
『E.T.』を見られなかった人によって
あろう事か
伝説的ゴミ映画『食人族』が大ヒットしてしまった
という負の映画史を持つ日本だが
『ギャラクシー街道』を見られなかった人で
『ボーイソプラノ』も満席だった!
平日昼間という時間帯もあり
ほとんどがお年寄りのお客さんだった!
そんな上映で何より驚いたのは
映画が終わってエンド・クレジットが流れても
誰一人席を立たなかった事だ!
なんと行儀のいい観客なのか!
大阪や東京では考えられない!
いい劇場はいい観客が集まる!
「八丁座」にはそんな素敵なシステムを感じた!
映画鑑賞を終えた私は
またまた市電に乗車して
リハーサル直前の劇場へ滑り込んだ!
本番では「ギーマー」こと「マギー」が
広島という街にこびにこびた!
これ以上ないというほどまで
本来はそれほど無いであろう”広島愛”を
アドリブで繰り出してこびた!
カーテンコールでは”鉄人・衣笠”のTシャツで登場し
最後の最後までこび続けた!
そもそも小さい「ギーマー」なので
私はそんな彼を「媚人(こびと)」と分類した!
ちなみに私は「鉄人」と問われたら
「28号」か「ルー・テーズ」しか思い浮かばない!
敵の電波妨害で動けなくなるわけでもなく
バックドロップもフライング・ボディシザースも使わない
「衣笠」という人物が
何をもって「鉄人」と呼ばれているのか
詳しい人に尋ねてみようと思う!
きっとデッドボールがはじき返って
ホームランになった
とか
豚レバーや岩のりよりも
彼10gに含まれる鉄分が多かった
みたいな伝説があるのだろう!
『ダブリンの鐘つきカビ人間』チームは
公演翌日に東京へと帰って行った!
しかし!
私が帰る場所は近県・大阪府だ!
どうせ行き先も違うのならば
みんなと同じ新幹線に乗る必要などない!
そこで私は
新幹線切符の乗車変更を行い
夕方まで広島をひろぐ事にした!
そんな私のひろぎをサポートしてくれたのは
吉本広島所属芸人
「ボールボーイ佐竹」だった!
彼は私の全国展開ワークショップ
「Royal Plant」の教え子でもある!
受講当時は名も無きくすぶり芸人だったが
現在では広島を代表する芸人として
多くの広島県民が彼を応援している!
なんだか親心で嬉しくなってしまう!
「今日は広島の底力を見てもらいます!」
よくあるガイドブックに載るような観光地ではなく
私が喜びそうな所だけを巡るというコンセプトで
「広島底力ツアー」
が開始された!
「佐竹」が運転する自動車で
まず向かったのは「楽」というお店だった!
広島は名物を生み出すのが上手な街だ!
四年前には
とんでもなく辛い「つけ麺」を
街中でアピールしていたが
今回訪れてみると
”広島名物と言えば汁なし担々麺だ!”
と言って聞かない!
「佐竹」が連れて行ってくれた「楽」は
そんな「汁なし担々麺」の専門店で
しかも厨房に立っているのは
これまた吉本広島所属のピン芸人
「ヤマカ」だった!
彼もまた「Royal Plant」の受講生である!
「まぜるのが大事です!
まぜればまぜるほどおいしくなります!
もうね!
僕がいいって言うまでまぜて下さい!」
「佐竹」の厳しい指導の下
初めて食べた「汁なし担々麺」は
実においしい食べ物だった!
”汁なし”とは言いながらも
最後にわずかに残るスープに
白ご飯を更にまぜて食べると
これまたたいそうおいしかった!
「カミさん」は
ラーメンをあまり好きではないが
担々麺をよく食べている
という話をすると
「是非楠見さんにも!」
と持ち帰り用の一人前をプレゼントしてくれた!
帰宅して作ってあげると
名産品土産にあまり喜ばない「カミさん」が
ずいぶんおいしそうに食べてくれた!
これは更なるヒットが予想される!
この「楽」というお店の前で
これまた素敵な物に出会った!
なんと先の
「GREEN MOVER LEX」の
広島電鉄開業100周年記念塗装バージョン
その名も「PICCOLA(ピッコラ)」だった!
これには雌雄の設定があり
「PICCOLA」が女の子!
男の子仕様の
「PICCOLO(ピッコロ)」もあると言う!
お腹がいっぱいになったところで「佐竹」は
「スタジアム」が大好きな私を
「エディオンスタジアム広島」に連れて行ってくれた!
私がルールをとてもよく知っている競技
「サッカー」のスタジアムであり
「サンフレッチェ広島」のホームだ!
驚くほど不便な場所にあった!
こんな場所でいいのか?
と他県民が不安になるほど
市街地から遠く不便な所だった!
なるほど!
それが「サンフレッチェ広島」の
強さの秘密の一つかもしれない!
他県民の応援団に
スタジアムまでたどり着かせない!
もしくは
たどり着いたところで
不安に陥れる!
そうして敵チームの覇気を
根本から削ぐ戦法だ!
ややっ?
おかしい!
ならばなぜ似たような状況にある
我が「モンテディオ山形」は不調なのだろう?
スタジアムをもっともっと山奥に移転させ
他県民が探し出せないほどにすれば
好調が戻るのではないだろうか?
続いて向かった場所は
「広島市森林公園」だった!
ここには恐らく広島県で唯一の
「昆虫館」がある!
小さな「昆虫館」ではあったが
標本はほとんど無く
生体中心の素晴らしい展示だった!
南米やアフリカの昆虫など
まだまだ生活環境がわかっていない昆虫は
中途半端な飼育では全滅させてしまう恐れがある!
生体中心という事は
それだけ知識のある飼育者がいるという事だ!
帰宅後に「伊丹市昆虫館」館長の「奥山」氏と
この広島の「昆虫館」について語り合った!
彼もまた
「広島森林公園こんちゅう館」を
”生体の多い素晴らしい昆虫館”
と評していた!
「昆虫館」を見終えて
公園内の山小屋のような休憩所で
デカビタC的な飲み物を飲みながら休んでいると
壁に貼ってあったポスターの中に
実に奇妙な物を発見した!
そこには
見たこともないような変わった乗り物に乗って
山道を登る家族の写真が掲載されていた!
”モノレールに乗って展望台へ登ろう!”
しかしどう見てもその乗り物は
私の知っている「モノレール」とは
違う姿の乗り物だった!
それが「万博公園」や「那覇」市内を走っていたら
世界が注目する大事件になりそうな
そんな形状をしていた!
「佐竹よ!
これに乗ってみようじゃないか!」
「昆虫館」から更に車を走らせ
モノレール乗り場に到着したところで
その乗り物の名前が
「ぶんぶん丸」である事を知った!
往復で200円というピーチ航空以下の切符を
自動券売機で購入し
私と「佐竹」は「ぶんぶん丸」を待った!
休憩所のポスターでの「ぶんぶん丸」は
たいそう小さな写真だったので
まだその全貌はわかっていなかった!
「ぶんぶん丸」が一体どういう乗り物なのかは
”なにかへんなの”という印象だけで
ほとんど未知であった!
乗り場で得られた唯一の情報と言えば
山上から聞こえる
『悪魔のいけにえ』のレザーフェイスが
電気のこぎりで人を殺しているような
そんな音だけだ!
どうしよう?
電気のこぎりを掲げた親父が台車に乗って
「どうもー!
ぶんぶん丸でーす!」
と降りて来たら
その時私達はうまく笑顔を作れるだろうか?
やがてその山上からの音すらも止んだ!
きっと殺した登山客を
燻製小屋に吊るしたりしているのだろう!
なかなか来ない「ぶんぶん丸」に
我々は頭の中を不安と妄想で満たした!
30分近く待っただろうか?
やがて山上から
ばいーん!
というレザーフェイスの活動再開音が聞こえた!
来る!
遂に「ぶんぶん丸」が降りて来る!
そして!!
奴はとうとう現れた!!!
私の体から
ポンポン音を立てて
「しりこ玉」が飛んだ!
なんだこの乗り物は!
仕方なく座席に乗り込んだ!
あまりにも頼りない乗り物であるため
シートベルトをしようとしたのだが
うまくはまらない!
そんな我々を見て
レザーフェイスは笑いながら言った!
「登りの時はせんでええよ!
下りはせんかったら転げ落ちるけどな!」
私は手すりに設置されたボタンを
発車前に押したい気分になった!
多分押したところで
レザーフェイスが
「どうしたの?」
と振り返るだけなのだろう!
傾斜角45度と言えば
大砲が最長飛距離を出す角度だ!
人間は45度を越える傾斜を見ると
ほぼ直角に感じる錯覚を起こすと言う!
まさにその錯覚誘発角度を
まるで夏休み工作のような乗り物
「ぶんぶん丸」は
がっくんがっくん縦揺れを起こしながら
ゆっくりゆっくり登った!
時速は10kmも出ていない!
乗りながら気づいた!
私はこの乗り物を
「カミさん」の実家のみかん畑で見た事がある!
「ぶんぶん丸」は
山中で収穫したみかんを移送するための機器
「モノラック」を改造した物だ!
かつて「カミさん」から
「子供の頃に乗った事がある!」
と聞いた!
つまりみかんよりも重い大人は
乗るべきではないという事ではないか!
そんな記憶が更に私を怯えさせた!
がくがくに縦揺れを起こす「ぶんぶん丸」のせいで
耳の中がこそばゆくなった!
やがて無事に到着した山頂からの景色は
それはそれは素晴らしいものだったのだが
私の興味は「ぶんぶん丸」に集中していた!
前方からの写真を撮影して
更に「しりこ玉」は飛んだ!
発車前に飛ばし過ぎたせいだろう!
珍しい赤玉だった!
「えっ?」
「ぶんぶん丸」は方向転換はきかない!
このまま登ったら
このまま後退して下山する乗り物だ!
山頂ではレザーフェイスが景色の説明をしてくれる!
(それが私の想像した燻製小屋での時間だった!)
そして山頂に人を残すという事はせず
また全員を積んで降りて行く!
つまり!
この先頭車両のかぶとむしを
上から見る人はいない!
誰も見る事がない装飾なのだ!
恐らくは騒音の中での不安定な縦揺れ走行を
かぶとむしがぶんぶん飛行する様に例えて
「ぶんぶん丸」と名付けたのだろうが
それを理解する人はほぼいない!
この乗り物に乗るほぼ全ての人々が
「なぜかあれは”ぶんぶん丸”という名前だった」
という記憶だけを土産に下山して行くのだ!
”下山ぶんぶん”は更に我々の度肝の抜いた!
先の説明通りシートベルトをしっかりと締め
いわゆる”真っ逆さま”という錯覚の中を
がくがくに降りて行く!
我々がそのあまりの恐怖に絶叫すると
レザーフェイスは声高らかに笑う!
これこそまさに
トビー・フーパー監督が
映画『悪魔のいけにえ』で描いた
恐怖の具現化だ!
ありがとう「佐竹」!
最高にひろがせてもらった!
広島を訪れる人の多くが
ガイドブックをめくり
「宮島に行きたい!」
「尾道を歩きたい!」
と言うのだろう!
かつては私もそうだった!
しかし!
「ボールボーイ佐竹」による
『広島底力ツアー』によって
私はガイドブックに載せようもない
広島の底力をひろいだ!
もしもあなたが広島を訪れた時に
広島の人が
「どこに行きたい?」
と尋ねてくれたら!
ためしに
「ぶんぶん丸に乗りたい!」
と言ってみるといい!
「そんなの知らない」
と言われるはずだ!
そう!
それが広島の底力なのだ!
かくして『ダブリンの鐘つきカビ人間』は
私のホームである「大阪」公演へと突入した!
劇場まで自転車通勤していた日々の事など
敢えて『ひろぐ』に記す必要もあるまい!
次なる土地「仙台」へ向かおうか!
いや!
その前にほんの一泊だけ帰ろう!
「山形」へ!
あ!
ただし!
大阪公演中の楽屋で
”替え歌ハリソン”こと「村井國夫」氏から
今度はこれにサインをもらった!
全ての街で映画を見ようと誓った!
そんな具合で「広島」にやって来た!
ここもまた久しぶりに訪れる土地だ!
広島駅に到着した私は
「あれ?
まだ大王がタクシーに乗ってない!」
とあわてる出演メンバーに手を振り
一人で駅周辺をひろいだ!
自分でも薄々感づいてはいるのだが
私はどうやら夜間は群れる習性を持っているが
日中は単独行動が大好きなようだ!
そんな単独行動を代表する行為がこれだ!
これはいい「駅スタンプ」だ!
「谷町線八尾南周辺駅」のように
わざわざ駅員さんを呼び出して
何の絵柄なのか尋ねる必要もない!
一目瞭然のデザインだ!
夜には”駄洒落ハリソン”こと
「村井國夫」氏より
「みんなでお好み焼きを食べに行こう!」
という指令が発布されていた!
このスタンプは晩餐の興奮度を
大いに上昇させた!
ただただ「スタジアム」が好き
というだけで
「ルールも知らない競技」
のスタジアムも訪れた!
グッズショップで
多種多様な「帽子」が売られているのに驚いた!
「サッカーショップ」では
「帽子」はせいぜい2〜3種類しか売られていない!
なるほど!
これが「サッカー」と「野球」の違いか!
広島駅周辺を散々ひろいだ後は
大好きな「市電」でホテルに向かった!
私が広島駅でみんなと別れた理由の一つは
この市電に乗りたかったというのが大きい!
なんと素敵なデザインなのだろう!
「GREEN MOVER MAX(グリーン・ムーヴァー・マックス)」
と命名されたこの車体を見るだけで私は
ステージで歌っている「石野真子」さんを
客席から眺めている時と
同じときめきを感じてしまう!
「真子」さんならば「まっこちゃーん!」と呼べるが
「市電」ではそれは許されない!
そのつらさのぶん
余計に愛おしさが募ってしまうのである!
せめて文字でだけ叫んでみよう!
「グリーン・ムーヴァー!!!!!!!!」
翌朝の私はなかなかの早起きだった!
お昼過ぎに「市電」の
「八丁堀」駅に到着すれば良かったのだが
私はどうしても「GREEN MOVER」の最新車両
「GREEN MOVER LEX」
に乗車したかったのだ!
2013年に運行を始めたこの車両は
4年ほど広島にご無沙汰した私にとって
初めて目にする車体だった!
道路の真ん中に立つ駅で
数台の市電を見送っていると
さすがに不審者扱いを受け
「乗らないんですか?」
という言葉以外に
「大丈夫ですか?」
という気遣いも受けた!
待つ事一時間!
遂に「LEX」はやって来た!
広島市民にとっては
単なる街の景色の一部なのだろうが
私にとっては
”来る”とわかっていながら待ち伏せしているお店に
「大場久美子」さんが入店して来たような
そんな興奮を覚えた!
子供も老人もかき分けて最後尾を陣取った!
最前部は降車ドアと料金箱があるため
のんびりはできない場所なのだ!
最新車両と旧車両とのすれ違いに
ひろぎは高まった!
はてさて!
本番当日の昼間に「LEX」に乗車し
私が行きたかった場所とは?
そう!
「映画館」だ!
私はかねてからこの
「八丁座」という映画館を訪れてみたかった!
一体どういうコンセプトで建てられた映画館なのだろう?
シートは座面をパタンと倒して座る物ではなく
一脚一脚が完全に独立した
ふかふかのソファだ!
各席にはテーブルも備えられており
場内には提灯が下がっている!
そしてなんと!
後方には畳席まであるのだ!
そこは映画館と呼ぶよりはむしろ
歌舞伎小屋や寄席小屋の作りをしている!
そもそもロビーがこんな感じなのだ!
前回「博多」の「中洲大洋映画劇場」同様
見るのは何の映画でも良かったのだが
正直言って舞台本番前に大スクリーンで
『ギャラクシー街道』を見る気はなかった!
なので小さい方のスクリーンで
ダスティン・ホフマンの新作
『ボーイソプラノ』を鑑賞する事にした!
私は成長ホルモンの異常で
少年時代が異常に短く
小学四年生で声変わりを迎えたため
五年生からたった一人でバスやテノールを務めた!
つまり『ボーイソプラノ』という映画には
一切縁がない人生を送って来た!
しかし!
上映前にははっぴを着た従業員が
スクリーン前に登場し
「本日はようこそ!」
と芸人よろしく挨拶を始めた事で
私の「しりこ玉」は飛んだ!
なんなんだ!
なんて素敵な映画館なんだ!
私はすっかりこの「八丁座」に惚れてしまった!
映画の内容よりも
「八丁座」に感動してしまった!
今後もダスティン・ホフマンを見るたびに
この「八丁座」を思い出してしまう事だろう!
後に友人に聞いたところ
彼は菅原文太氏追悼企画として上映された
『仁義なき戦い』シリーズを
この「八丁座」で観たと言う!
なんとも羨ましい経験ではないか!
かつては
『E.T.』を見られなかった人によって
あろう事か
伝説的ゴミ映画『食人族』が大ヒットしてしまった
という負の映画史を持つ日本だが
『ギャラクシー街道』を見られなかった人で
『ボーイソプラノ』も満席だった!
平日昼間という時間帯もあり
ほとんどがお年寄りのお客さんだった!
そんな上映で何より驚いたのは
映画が終わってエンド・クレジットが流れても
誰一人席を立たなかった事だ!
なんと行儀のいい観客なのか!
大阪や東京では考えられない!
いい劇場はいい観客が集まる!
「八丁座」にはそんな素敵なシステムを感じた!
映画鑑賞を終えた私は
またまた市電に乗車して
リハーサル直前の劇場へ滑り込んだ!
本番では「ギーマー」こと「マギー」が
広島という街にこびにこびた!
これ以上ないというほどまで
本来はそれほど無いであろう”広島愛”を
アドリブで繰り出してこびた!
カーテンコールでは”鉄人・衣笠”のTシャツで登場し
最後の最後までこび続けた!
そもそも小さい「ギーマー」なので
私はそんな彼を「媚人(こびと)」と分類した!
ちなみに私は「鉄人」と問われたら
「28号」か「ルー・テーズ」しか思い浮かばない!
敵の電波妨害で動けなくなるわけでもなく
バックドロップもフライング・ボディシザースも使わない
「衣笠」という人物が
何をもって「鉄人」と呼ばれているのか
詳しい人に尋ねてみようと思う!
きっとデッドボールがはじき返って
ホームランになった
とか
豚レバーや岩のりよりも
彼10gに含まれる鉄分が多かった
みたいな伝説があるのだろう!
『ダブリンの鐘つきカビ人間』チームは
公演翌日に東京へと帰って行った!
しかし!
私が帰る場所は近県・大阪府だ!
どうせ行き先も違うのならば
みんなと同じ新幹線に乗る必要などない!
そこで私は
新幹線切符の乗車変更を行い
夕方まで広島をひろぐ事にした!
そんな私のひろぎをサポートしてくれたのは
吉本広島所属芸人
「ボールボーイ佐竹」だった!
彼は私の全国展開ワークショップ
「Royal Plant」の教え子でもある!
受講当時は名も無きくすぶり芸人だったが
現在では広島を代表する芸人として
多くの広島県民が彼を応援している!
なんだか親心で嬉しくなってしまう!
「今日は広島の底力を見てもらいます!」
よくあるガイドブックに載るような観光地ではなく
私が喜びそうな所だけを巡るというコンセプトで
「広島底力ツアー」
が開始された!
「佐竹」が運転する自動車で
まず向かったのは「楽」というお店だった!
広島は名物を生み出すのが上手な街だ!
四年前には
とんでもなく辛い「つけ麺」を
街中でアピールしていたが
今回訪れてみると
”広島名物と言えば汁なし担々麺だ!”
と言って聞かない!
「佐竹」が連れて行ってくれた「楽」は
そんな「汁なし担々麺」の専門店で
しかも厨房に立っているのは
これまた吉本広島所属のピン芸人
「ヤマカ」だった!
彼もまた「Royal Plant」の受講生である!
「まぜるのが大事です!
まぜればまぜるほどおいしくなります!
もうね!
僕がいいって言うまでまぜて下さい!」
「佐竹」の厳しい指導の下
初めて食べた「汁なし担々麺」は
実においしい食べ物だった!
”汁なし”とは言いながらも
最後にわずかに残るスープに
白ご飯を更にまぜて食べると
これまたたいそうおいしかった!
「カミさん」は
ラーメンをあまり好きではないが
担々麺をよく食べている
という話をすると
「是非楠見さんにも!」
と持ち帰り用の一人前をプレゼントしてくれた!
帰宅して作ってあげると
名産品土産にあまり喜ばない「カミさん」が
ずいぶんおいしそうに食べてくれた!
これは更なるヒットが予想される!
この「楽」というお店の前で
これまた素敵な物に出会った!
なんと先の
「GREEN MOVER LEX」の
広島電鉄開業100周年記念塗装バージョン
その名も「PICCOLA(ピッコラ)」だった!
これには雌雄の設定があり
「PICCOLA」が女の子!
男の子仕様の
「PICCOLO(ピッコロ)」もあると言う!
お腹がいっぱいになったところで「佐竹」は
「スタジアム」が大好きな私を
「エディオンスタジアム広島」に連れて行ってくれた!
私がルールをとてもよく知っている競技
「サッカー」のスタジアムであり
「サンフレッチェ広島」のホームだ!
驚くほど不便な場所にあった!
こんな場所でいいのか?
と他県民が不安になるほど
市街地から遠く不便な所だった!
なるほど!
それが「サンフレッチェ広島」の
強さの秘密の一つかもしれない!
他県民の応援団に
スタジアムまでたどり着かせない!
もしくは
たどり着いたところで
不安に陥れる!
そうして敵チームの覇気を
根本から削ぐ戦法だ!
ややっ?
おかしい!
ならばなぜ似たような状況にある
我が「モンテディオ山形」は不調なのだろう?
スタジアムをもっともっと山奥に移転させ
他県民が探し出せないほどにすれば
好調が戻るのではないだろうか?
続いて向かった場所は
「広島市森林公園」だった!
ここには恐らく広島県で唯一の
「昆虫館」がある!
小さな「昆虫館」ではあったが
標本はほとんど無く
生体中心の素晴らしい展示だった!
南米やアフリカの昆虫など
まだまだ生活環境がわかっていない昆虫は
中途半端な飼育では全滅させてしまう恐れがある!
生体中心という事は
それだけ知識のある飼育者がいるという事だ!
帰宅後に「伊丹市昆虫館」館長の「奥山」氏と
この広島の「昆虫館」について語り合った!
彼もまた
「広島森林公園こんちゅう館」を
”生体の多い素晴らしい昆虫館”
と評していた!
「昆虫館」を見終えて
公園内の山小屋のような休憩所で
デカビタC的な飲み物を飲みながら休んでいると
壁に貼ってあったポスターの中に
実に奇妙な物を発見した!
そこには
見たこともないような変わった乗り物に乗って
山道を登る家族の写真が掲載されていた!
”モノレールに乗って展望台へ登ろう!”
しかしどう見てもその乗り物は
私の知っている「モノレール」とは
違う姿の乗り物だった!
それが「万博公園」や「那覇」市内を走っていたら
世界が注目する大事件になりそうな
そんな形状をしていた!
「佐竹よ!
これに乗ってみようじゃないか!」
「昆虫館」から更に車を走らせ
モノレール乗り場に到着したところで
その乗り物の名前が
「ぶんぶん丸」である事を知った!
往復で200円というピーチ航空以下の切符を
自動券売機で購入し
私と「佐竹」は「ぶんぶん丸」を待った!
休憩所のポスターでの「ぶんぶん丸」は
たいそう小さな写真だったので
まだその全貌はわかっていなかった!
「ぶんぶん丸」が一体どういう乗り物なのかは
”なにかへんなの”という印象だけで
ほとんど未知であった!
乗り場で得られた唯一の情報と言えば
山上から聞こえる
『悪魔のいけにえ』のレザーフェイスが
電気のこぎりで人を殺しているような
そんな音だけだ!
どうしよう?
電気のこぎりを掲げた親父が台車に乗って
「どうもー!
ぶんぶん丸でーす!」
と降りて来たら
その時私達はうまく笑顔を作れるだろうか?
やがてその山上からの音すらも止んだ!
きっと殺した登山客を
燻製小屋に吊るしたりしているのだろう!
なかなか来ない「ぶんぶん丸」に
我々は頭の中を不安と妄想で満たした!
30分近く待っただろうか?
やがて山上から
ばいーん!
というレザーフェイスの活動再開音が聞こえた!
来る!
遂に「ぶんぶん丸」が降りて来る!
そして!!
奴はとうとう現れた!!!
私の体から
ポンポン音を立てて
「しりこ玉」が飛んだ!
なんだこの乗り物は!
仕方なく座席に乗り込んだ!
あまりにも頼りない乗り物であるため
シートベルトをしようとしたのだが
うまくはまらない!
そんな我々を見て
レザーフェイスは笑いながら言った!
「登りの時はせんでええよ!
下りはせんかったら転げ落ちるけどな!」
私は手すりに設置されたボタンを
発車前に押したい気分になった!
多分押したところで
レザーフェイスが
「どうしたの?」
と振り返るだけなのだろう!
傾斜角45度と言えば
大砲が最長飛距離を出す角度だ!
人間は45度を越える傾斜を見ると
ほぼ直角に感じる錯覚を起こすと言う!
まさにその錯覚誘発角度を
まるで夏休み工作のような乗り物
「ぶんぶん丸」は
がっくんがっくん縦揺れを起こしながら
ゆっくりゆっくり登った!
時速は10kmも出ていない!
乗りながら気づいた!
私はこの乗り物を
「カミさん」の実家のみかん畑で見た事がある!
「ぶんぶん丸」は
山中で収穫したみかんを移送するための機器
「モノラック」を改造した物だ!
かつて「カミさん」から
「子供の頃に乗った事がある!」
と聞いた!
つまりみかんよりも重い大人は
乗るべきではないという事ではないか!
そんな記憶が更に私を怯えさせた!
がくがくに縦揺れを起こす「ぶんぶん丸」のせいで
耳の中がこそばゆくなった!
やがて無事に到着した山頂からの景色は
それはそれは素晴らしいものだったのだが
私の興味は「ぶんぶん丸」に集中していた!
前方からの写真を撮影して
更に「しりこ玉」は飛んだ!
発車前に飛ばし過ぎたせいだろう!
珍しい赤玉だった!
「えっ?」
「ぶんぶん丸」は方向転換はきかない!
このまま登ったら
このまま後退して下山する乗り物だ!
山頂ではレザーフェイスが景色の説明をしてくれる!
(それが私の想像した燻製小屋での時間だった!)
そして山頂に人を残すという事はせず
また全員を積んで降りて行く!
つまり!
この先頭車両のかぶとむしを
上から見る人はいない!
誰も見る事がない装飾なのだ!
恐らくは騒音の中での不安定な縦揺れ走行を
かぶとむしがぶんぶん飛行する様に例えて
「ぶんぶん丸」と名付けたのだろうが
それを理解する人はほぼいない!
この乗り物に乗るほぼ全ての人々が
「なぜかあれは”ぶんぶん丸”という名前だった」
という記憶だけを土産に下山して行くのだ!
”下山ぶんぶん”は更に我々の度肝の抜いた!
先の説明通りシートベルトをしっかりと締め
いわゆる”真っ逆さま”という錯覚の中を
がくがくに降りて行く!
我々がそのあまりの恐怖に絶叫すると
レザーフェイスは声高らかに笑う!
これこそまさに
トビー・フーパー監督が
映画『悪魔のいけにえ』で描いた
恐怖の具現化だ!
ありがとう「佐竹」!
最高にひろがせてもらった!
広島を訪れる人の多くが
ガイドブックをめくり
「宮島に行きたい!」
「尾道を歩きたい!」
と言うのだろう!
かつては私もそうだった!
しかし!
「ボールボーイ佐竹」による
『広島底力ツアー』によって
私はガイドブックに載せようもない
広島の底力をひろいだ!
もしもあなたが広島を訪れた時に
広島の人が
「どこに行きたい?」
と尋ねてくれたら!
ためしに
「ぶんぶん丸に乗りたい!」
と言ってみるといい!
「そんなの知らない」
と言われるはずだ!
そう!
それが広島の底力なのだ!
かくして『ダブリンの鐘つきカビ人間』は
私のホームである「大阪」公演へと突入した!
劇場まで自転車通勤していた日々の事など
敢えて『ひろぐ』に記す必要もあるまい!
次なる土地「仙台」へ向かおうか!
いや!
その前にほんの一泊だけ帰ろう!
「山形」へ!
あ!
ただし!
大阪公演中の楽屋で
”替え歌ハリソン”こと「村井國夫」氏から
今度はこれにサインをもらった!
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ひろぐ
後藤ひろひと
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