大好きなサッカーチームである
「チェルシー」「ユニフォーム」を着て
「東京」の街を歩くと
とにかくブラジル人達にからまれた!
そんな数日間があった!

5日間の東京出張を命ぜられた私は
毎日「マシ・オカ」氏と遊んでいた!
テレビドラマ『HEROES』や『ハワイ5-0』で活躍する
世界的スターだ!
そんな彼がやる事を毎日見るのが仕事だった!
今ここでそれを深くは記さない!

私はてっきり彼を「日系人」だと思い込んでいたのだが
そうではなかった!
日本人だった!
彼の日本語には”おかしな訛り”などまったく無かった!
むしろ最近の若人による”おかしな訛り”を一切使わない
心地いい純粋な日本語を話す人物だった!
両手を上げて「やったー!」という姿が
あまりにも奇異に見えていたため
”彼は日本語を話せない”
と勝手に勘違いしていたのだ!
「え?
 なんでですか?
 僕は日本人ですよ!」
と笑われた!
しかしそれに慣れていると
時折英語を話し出す彼に緊張してしまう!
ハワイ州警察の検死官に見えてしまうからだ!

そんな「マシ・オカ」氏と関わる仕事の中で
とある晩だけうまい具合に予定が空っぽになった!
その日の横浜には
「チェルシー」が来日していた!
「FIFAクラブワールドカップ」の準決勝戦だ!
なんとか入手した「チケット」
私は「横浜国際総合競技場」に赴いた!

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周囲は私のこの行動を
「作戦ではないか?」
と批難したが
「どうだい見事だろ?」
としか答えなかった!
なにしろ私が出張に出かける際に荷造りした
スーツケースの中身はこんな様子だ!


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私が持っていたのは
他人に頼んで入手してもらったチケットだった!
手渡される際は確かに
「チェルシー側の席ですよ!」
と聞いていたのだが
座ってみるとなんと!
敵チーム「モンテレイ」応援席のど真ん中だった!
私とは違うユニフォームを着た
陽気な「メキシコ」人達が大騒ぎしている中に
私は囲まれた!


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やがておなじみの『FIFA讃歌』が流れ始めると
生まれて初めて生で見る「チェルシー」選手達が
さっそうと入場して来た!
感激だった!
気を許したら涙が出そうになった!
心の奥から”何か大きなもの”が込み上げて来た!
そう思った瞬間だ!
前方から”何か大きなもの”が込み上げて来た!
しまった!
観客を100人ほどは包むであろう
「モンテレイ」の旗だ!
だめだ!
やめろ!
かぶせるな!
見せてくれ「チェルシー」の入場を!
そんな願いと叫びはむなしく
私はメキシコ産の布の中へと包まれて行った!


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試合は終始「チェルシー」有利で進み
後半で3-0となった!
そんな頃だ!

「3点も取ったんだからさ!
 こっから先は俺たちのチームを応援しろよ!」

ものすごくへんてこりんな英語で
メキシコ人が語りかけて来た!
周囲の「チェルシー」ファンにも
そう呼びかけている!
実を言うと彼らの応援はとても陽気で楽しく
一方の「チェルシー」の応援は
応援歌の一曲も歌われる事がなかった!
私は決めた!
ここからゲームが終わるまでは
メキシコ側につこう!
それが楽しいに違いない!
それを”裏切り者”と呼ぶ「チェルシー」仲間も
別にいない!
「スペイン・サッカー」を見慣れている私は
そもそもサッカーを観戦する際の原語を
メキシコ人も話す「スペイン語」に設定しているのだ!

「Mierda!」
「Joder!」
「Hijo de puta!」

日本語では絶対に言わない
いや!
言えないような言葉を突然叫び出した私に
メヒカーノ(メキシコ人)達はたいそう喜んでくれた!
そして何の歌かもよくわからない歌を
一緒に歌わされた!
跳んで踊って騒いだ!
なので最後の最後に「モンテレイ」が1点取った際には
大騒ぎに参加した!
頭からビールをかけられた!
抱き合った!
叫び合った!
その時の私はきっとテレビにも写っていたのだろうが
見た目のせいもあってか
どれがメヒカーノで
どれが「後藤ひろひと」か
うまく見分けられなかった事だろう!

おかしい!
「チェルシー」の勝利試合を生で見た興奮を
何か別のものが越えてしまった!
”優柔不断”と”臨機応変”の違いは
その行動を見た他人が判断するものだ!
私の羅針盤は
そんな四字熟語とは無縁に
常に楽しそうな方向だけを向くように設定してある!
「チェルシー」に感激し
「モンテレイ」に騒ぐ!
これでいい!
あの球場の中では
そうする事こそが最大のひろぎだと察知したのである!

残念ながら決勝戦が行われる日
私は大阪に戻らなければならなかった!
また横浜に戻る事はできなかった!

ホテルをチェックアウトし
エレベーターに乗ろうとすると
ぎゅうぎゅうに
今度はブラジル人達が乗っていた!
決勝戦は「チェルシー」対
ブラジルの「コリンチャンス」だった!
横浜はもちろん
新宿の街も
「コリンチャンス」を応援すべくブラジルから来日した
ブラジル人達であふれ返っていた!
聞けば横浜市内のホテルの6割以上が
ブラジル人宿泊客で埋まっていたと言う!
エレベーターの中のブラジル人達の胸には
「コリンチャンス」のエンブレムがあしらわれていた!
私は身の危険を感じ
そのエレベーターを見送ろうとした!
その時の私は
たいそう「チェルシー」な格好をしていたのだ!
しかし!
ブラジル人達はドアを開け
「まだ乗れるよ!」
といったような事を私に言っている!
うん!
乗れる!
けど乗りたくない!
でもそれもつまらない!
よし!
乗ってみよう!

静かなエレベーター内で
大柄な男が低い声で私に言った!

「コーリンチャーンス!」

負けるものか!
ここは私が生まれた国だ!
私は私の主張を貫こう!

「チエオスィー!」

ものすごくロンドン訛りな発音で
「チェルシー」を主張した!

「コーリンチャーンス!(コーリンチャーンス!)」

ややっ!
声が増えたぞ!

「チエオスィー!」

一人だけ英語を話せるブラジル人が
私にこう言った!

「これが今日のスコアだぜ!」

なんの事だ?
と問うと
自分達の人数を数え出した!

「コリンチャンスが
 ・・・1、2、3、4、5、6!
 そんでチェルシーが1!
 今日は6-1でコリンチャンスが勝つのさ!」

「そんな馬鹿な事があるもんかい!」

「なにぃ?
 おいみんな!
 このチェルシー野郎を殺っちまおうぜ!」

6人のブラジル人達が
一斉に私に掴みかかった!!!!

・・・大丈夫!
途中からもうわかっていた!
「サッカーが大好きだよ!」
という空気をお互いが感じていた!
だからもう
たったそれだけの会話で
我々は既にとても仲良くなっていたのだ!
これが「サッカーの成せる技」だ!
1人の日本人と
6人のブラジル人達が
大笑いしながら
狭い室内でもつれ合った!
なのでエレベーターのドアが開いた時
待っていた女性はとても驚いていた!
(今思えば彼女には申し訳ない事をした!)

「実は今から大阪に帰るから
 試合は見に行けないんだ!
 いい試合になりゃいいね!」

「そうだね!
 あんたの分も騒いで来るよ!」

「日本を楽しんでおくれ!」

「ありがとう!」

「チエオスィー!」

「コーリンチャーンス!」

なんだかとっても楽しくなった!
みんなで自分の国のチームを
わいわい楽しく応援に来ている姿が
なんだかとってもうらやましくなった!
なので私はその足で
「コリンチャンス」のユニフォームを買ったのであった!

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決勝戦はこの『ひろぐ』を含むホームページ
「後藤ひろひとチャンネル」の動画配信システムにて
『蹴るひろぐ』と題し
「チェルシー×コリンチャンスの生中継を見る
 後藤ひろひとを生中継する」
という異例の企画で観戦した!
ゲストは「吉本新喜劇」の”尋ね人”
「安尾信乃助」先生だった!
だけだった!
なのに!
中継場所が「なんばグランド花月」の楽屋だったため
ちょいと時間が空くと
「ウッチ・マン先生」こと「内場勝則」伯爵も
ひょこひょこと現れては
誰よりも騒いでくれた!

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「チェルシー」は負けてしまったが
そのかわりに大勢のブラジル人達が
大騒ぎしている姿がテレビに写し出された!
その日の朝にエレベーターで騒ぎ合った連中も
きっと笑顔いっぱいに騒いでいるのだろう!
なんだかそれで嬉しくなった!

生中継が終わって
ほんの少しだけ帰宅し
そこから「朝日放送」に向かった!
「大将」こと「兵動大樹」君の
「ラジオ」にゲストで呼んでもらったのだ!
いつものように「ティーアップ」の
「はせにぃ」も一緒だった!
ものすごく喋った!
「夜中の2時までに局に来れば
 1分間だけネタをやってもいい!」
という突然の呼びかけで集まった
大量の若手芸人も含め
朝の4時半まで
ものすごくひろいだ!


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帰宅してちょいと眠った私は
そこから「天王寺動物園」に向かった!
どうしても脚本にしたい題材が
その動物園にはある!
その件に詳しい職員の方が
私の取材に応じてくれたのだ!
ええ!
もちろんその話こそ
ここではまだ記す気が無い!

休園日の動物園!
聞けば動物達はみんな
”休園日”を知っているのだそうだ!
なので私のような予期せぬ来客が現れると
動物達はちょいと混乱する!
「あれ?
 今日は月曜日じゃ・・・
 あれー?」
しろくまの「ゴーゴ君」は
たいそう困惑して
周囲と私を見比べていた!

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昼も夜もわからない
東京か大阪かもわからない
日本とメキシコとブラジルもわからない
そんな暮らしを営んでいたらば
お腹が痛くなった!
珍しく医者に行くと
「流行のウィルス性腸炎ですね!」
と言ってもらった!
普段は自然と流れに逆らう私なので
たまには流行に乗ってみた!
その上で
「俺に近づいたら危険だぜ!」
と言える自分をも
ちょいとひろいでみた!