音楽再生ソフト「iTunes」内を覗くと
「Hirohitz Legend(ヒロヒッツ・レジェンド)」
というプレイリストがある!
再生回数が90回を越えた曲だけが
自動的にリストアップされる設定だ!
既に20曲ほどがそこに並んでいる!
1位にランキングされているのは
私が大好きなサッカーチームである
「チェルシー」の応援歌
『Blue Is The Colour』で
再生回数は130回と表示されている!
どれだけ応援しているというのか!
117回の再生で4位にランクインしているのは
作家である私に最も大きな影響を与えた詩人
「エルヴィス・コステロ」によるロック・ナンバー
『No Hiding Place』だ!
「こいつぁなんたる大失態!
今の世の中隠れる場所もありゃしない!」
さびでそう歌われるこの曲は
たいそうなお気に入りな「Hirohitz」である!
そんな『No Hiding Place』が納めらている
彼のアルバムのタイトルは非常に不可解だ!
『MOMOFUKU(ももふく)』
明らかに英語ではない!
ほぼ間違いなく日本語だ!
しかしそんな日本語は日常はまず使わない!
アルバムジャケットに含まれた歌詞カードの最後には
こんな言葉が書かれている!
"He fed those who study."
「彼は学ぶ者達に食べさせた。」
なんだ?
どういう事だ?
そう思われた方には
ある場所を訪れる事を薦める!
そこはとてもひろぐ場所だ!
私のワークショップ「Royal Plant」受講者には
様々な種類の人間がいる!
俳優のワークショップでありながらも
そこには俳優経験者や俳優志望者などは少ない!
その多くは世間から”物好き”と呼ばれる人種だ!
芸人や俳優とばかり飲み歩いても
聞くのは会社や所属事務所や劇団への愚痴ばかり!
”人間への興味”を主食にして生きている私としては
それらの毎度変わらず一歩も進まぬ話題は
あまりにも退屈で
そんな会話が成される場は
なんとも居心地が悪い!
そうなると自然に
「Royal Plant」メンバーと遊ぶ事が
なによりも楽しく思えて来る!
誰の仕事も誰の職場も誰の職種も
みんなばらばらなので
愚痴を聞いたとしても関心しか浮かばない!
「『モンスターハンター』の発売に追われて休みが取れない!」
「春が来たのでやっぱり患者さんの調子がおかしい!」
「牛が座って動かない!」
同じ愚痴でも更に深入りしたくなるものばかりだ!
そんな「Royal Plant」メンバーの一人である
「オレンジ」と名乗る女性が
”みんなで私の職場に遊びに来ませんか?”
と言い出した!
”みんなでラーメンを作りましょう!”
その尋常ならざる誘い文句になびかなければ
「後藤ひろひと」の価値が下がる!
いいだろう!
なんだかよくはわからないが
みんなでラーメンを作りに行こう!
かくして総勢9名で訪れたのが
大阪府は「池田市」にある
「インスタントラーメン発明記念館」だった!
そこは1958年に開発された
世界最初のインスタントラーメン
「チキンラーメン」の歴史!
そして1971年に発売された
世界的大ヒット商品
「カップヌードル」の歴史を学べる場所だ!
それらを発明して写真中央の銅像となった人物は
日清食品の創業者!
その名も「安藤百福(あんどう・ももふく)」!
そう!
エルヴィス・コステロのアルバムタイトル
『MOMOFUKU』とは
この「安藤百福」の事だったのである!
我々を引率してくれた「オレンジ」は
その日は仕事がお休み!
なので彼女を見る記念館職員は
警備員さんまで含めて
みんながなんだか驚き顔だった!
「オレンジ」は会う人みんなに
「今日は遊びに来たんです!」
と決まり悪そうに一言ずつ告げていた!
途中からかわりに言ってあげようかと思ったが
そうもいくまいて!
「それじゃまずはカップヌードルを作りましょう!」
”カップヌードルを作る”
という言葉を聞けば
”お湯を入れる”という事しか思い浮かばない私だ!
まさか空のカップを渡されて
そこに絵を描けと言われるとは思わなかった!
まずはみんなでお絵描きタイムだ!
テーブルには色々な色の油性ペンが置かれ
それでカップに絵を描く事になった!
その日の私は「恐竜」や「怪獣」を描きたい気分だったので
存分にそんなような物を描いた!
しかしそれだけではただポップなだけに思えたので
少々の動きと絶望感を描き加えた!
どうだろう?
私によるオリジナルパッケージ版カップヌードルは
「ほろぶとこヌードル」だ!
この直後にこの生き物達は滅ぶのだ!
やがてフードコートのようなカウンターに並んで
スープを選んだり
具を選んだりした!
みんな悩んでいたようだが
私に迷いは無かった!
なぜか関西では人気が上がらず
売られなくなってしまった
「チリトマト」味に即決した!
「東京」に行けば私は必ずそれを食べる!
極稀に関西でも見つける事ができるのだが
見つければつい買ってしまう!
「ほろぶとこヌードル」はチリトマト味だ!
4種類だけ選べる具材は
ガーリックチップ
チェダーチーズ
鴨つくね
えび
にした!
我ながらいい滅び具合だ!
最後に蓋を圧着して完成!
滅びろ怪獣達よ!
「次はチキンラーメンを作りますよ!」
3分で作って2分で食べ切るカップヌードル!
お絵描きを含めて作るのには30分ほどを要した!
ではチキンラーメンは?
と「オレンジ」に問うと
90分かかると言う!
”すぐおいしいすごくおいしい”
とうたわれている食品に
1時間半かける事は滅多に得られる経験ではない!
パンフレットを見れば
厨房で奇麗なお姉さんが
子供の背後から子供を抱えるように手を伸ばして
麺棒で何かを練っていた!
わ!
奇麗なお姉さんが私にもそんな風にしてくれるのか?
と期待しそうになったが
よく見ればその写真は
親子という設定のようだった!
雑念は捨てて食に徹しなければいけない!
私は渡されたエプロンをまとい
とってもチキンラーメンなバンダナを巻いた!
更には18番という番号を頂戴した!
サッカーの「ドイツ代表」ならば
「ローター・マテウス」や
「ユルゲン・クリンスマン」が背負った
誇り高い番号だ!
なんだかむやみにやる気がわいた!
麺の粉を溶いて練って伸ばしてたたんで!
普段の私が触れる微粒子物と言えば
「かぶとむし」や「くわがたむし」の土だけなので
黒くない粉に触れるだけで緊張してしまった!
「さんま」を焼く事だけが唯一の料理だった私だ!
麺を練るなど想像を絶する世界だ!
練った粉を熟成させる間は
またしてもお絵描きと指示された!
ありがたい!
そこは大好きな作業だ!
誰より真剣に挑ませてもらおう!
やがて何度も器械を通して生地を伸ばし
細く切った物を「はさみ」で均等な長さに切る!
包丁は苦手だが「はさみ」は大好きだ!
いずれは「手がはさみになればいい」と願う私だ!
思う存分ちょっきんさせていただいた!
そうして麺に姿を変えたものに味付けをして
油で揚げてもらうと!
ははーんなるほど!
袋から取り出した時のチキンラーメンだ!
それを袋に詰めて封をしてもらえば完成!
こんなオリジナルのチキンラーメンが出来上がった!
「この腰抜け野郎ラーメン」だ!
ものすごくひろいだ!
「安藤百福」という人物が
インスタントラーメンを発明しようと思ったのは
戦後の闇市での事だったらしい!
ラーメンを食べるため
長蛇の列に並び続ける人達を見た時に
彼はこう思ったのだそうだ!
「敗戦して力を失った人々なのに
一杯のラーメンを食べるために
これだけ待ち続ける力を持っている!
そうだ!
この国を立て直すためには
まずみんなのお腹をいっぱいにする事だ!」
もしも世界中の人々全員が
お腹がいっぱいだとしたら
一つの戦争も起こらないだろう
と私は確信している!
世間ではよく
「ハングリー精神は大切だ!」
と言われる!
「人間は動物本来のハングリーさを失った!」
と嘆かれる!
しかし!
その精神のせいで
他人の物を奪おうとするのであれば
それは決して大切にされるべき心とは言えない!
空腹を理由に他者を襲う事だけが動物の本能だろうか?
いいやそうではない!
自分が苦労して捕えた獲物であっても
満腹になってしまえば
他者がそれを食べる事に干渉しない!
それもまた動物の本能なのだ!
僕はお腹がいっぱいだよ!
だから残りはみんなで食べてよ!
世界中の人達がそう言えれば
戦争など起こるはずがないのだ!
人類は都合のいい事だけを動物から学ぼうとして
最も大切な事を学べずにいる!
”動物は戦争をしない!”
人類が動物から学ぶべき事は
ハングリー精神ではなく
そちらの方だ!
「安藤百福」は2007年に亡くなった!
恐らくその際に何かのドキュメントでも見て
「エルヴィス・コステロ」は彼の事を知ったのだろう!
その翌年に発表したアルバムのタイトルに
『MOMOFUKU』と名付けた!
「たった二週間で作り上げたアルバムだった!
その早さと手際の良さは
まるでカップヌードルを作るようだったんだ!」
そんないきさつがあっての命名だったらしく
アルバムを全曲聞いたところで
どこにも「安藤百福」は登場しない!
しかしジャケットには前述の一節が書き込まれている!
「安藤百福
彼は学べる者達に食を与えた」
これは貧しい苦学生時代を経験した人々が
「安藤百福」の死を悼んで
ブログやツイッターなどで
彼の人生をおおいに讃えた事から
書き添えられた文だと言われている!
しかし私はもう一つの意味を受け取った!
「生き物の本質は闘争本能だけじゃないでしょう?
もっと学ぶべき本質があるでしょう?
それを学ぶには!
まぁ食べなさい!
お腹いっぱいにおなりなさい!
そしたら!
そしたらわかるから!」
そんな「安藤百福」の言葉が
私には聞こえたのだった!
「百福さんはこの記念館の近くに住んでらっしゃいました!
だから時々ここを覗きに来られました!
私一回だけお話した事あるんですよ!」
「オレンジ」がそう言った!
エルヴィス・コステロですらも
恐らく会った事のない「安藤百福」だ!
興奮した私が何を話したのか内容を問うと!
「百福さんのお誕生日にね!
関係者全員に紅白饅頭が配られたんです!
だからそのお礼を言ったんです!
”おまんじゅうありがとうございました!”
って!」
たいした返事はもらえなかったらしいが
「安藤百福」はきっとこう思っていたに違いない!
「お腹いっぱいになったかい?」
さーて!
最近ちょいと痩せたように言われるこの頃!
いかんいかん!
それでは大切な事を見失ってしまう!
今日もいっぱい食べようか!
皆さんもいっぱいお食べなさい!
ここで告知です!
「沖縄国際映画祭でとっても疲れたので
私の元気を早く回復させるために
Royal Plantを開催して下さい!」
とマネージャー「たけちゃん」にメールを送信したところ
すぐに
「はい!」
とお返事が来た!
基本的に
「後藤ひろひとが5日間滞在してみたい場所」
で開催されるワークショップ「Royal Plant」!
(なので「東京」開催は間違いなく無い!)
今回は「横浜」で行ってみようと思う!
前述の通り演技経験などは不問!
「横浜」という土地で
多数の”物好き”に出会いたいと願っている!
詳しくはこちらのページの最後の部分で!