中国・北京で11月に開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて、途絶えたままになっている日中首脳会談が開かれそうな気運が出てきた。ポイントは中国を取り巻く内外情勢の変化だ。はたして、安倍晋三首相と習近平国家主席の会談は実現するのか。
7月下旬に訪中した福田康夫元首相が習氏と極秘に会談し、膠着状態に陥っている日中関係を前進させるために首脳会談をもちかけたのは、各紙が報じたとおりだ。そのうえで、産経新聞は習氏が「現在の日中関係を打開しなければならないとの考えを伝えた」と中国側の前向き姿勢を報じている(8月7日付)。
中国はこれまで、尖閣諸島の領有権をめぐって争いがあることを認めない限り、日中首脳会談に応じない姿勢を示してきた。頑なな姿勢に変化が出てきた背景として次の5点を指摘できるだろう。
南シナ海では中国は守勢に回る
まず南シナ海である。中国の巡視船は5月以来、西沙諸島でベトナムの船に体当たりや放水を繰り返して緊張を高めていた(http://ch.nicovideo.jp/gendai/blomaga/ar532420、を参照)。それは石油探査作業をベトナムに邪魔させないためだった。現場はベトナムの排他的経済水域(EEZ)の中だったが、中国は「自国の水域」と主張して深海探査リグを稼働させていた。
これに対して、ベトナムのグエン・フー・チョン総書記は「戦争に突入したらどうするか、と多くの人に聞かれる。われわれはすべての可能性を想定して準備をしなければならない」と語り、いざとなったら戦争も辞さない強硬姿勢を示した。
米国も対中姿勢を修正した。昨年6月の米中首脳会談では中国が提唱する「新型大国関係」に理解を示していたが、7月に北京で開かれた米中戦略・経済対話では、ケリー国務長官が「大国」の2文字を削除して語り、オバマ大統領も「新しい型とは意見の違いを建設的にコントロールすることだ」という声明を出している。
すると中国は7月15日に突如として石油探査の中止を発表し、探査リグを現場から撤収した。それまでの強硬姿勢からみれば、大きな方針転換だ。タイミングからみて、ベトナムの抵抗と米国の圧力が功を奏した形である。南シナ海で中国はあきらかに守勢に立たされている。
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