原子力規制委の決定を受けて国会周辺で「川内原発再稼働反対」の声が飛び交った
〔PHOTO〕gettyimages
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原子力規制委員会が九州電力の川内原発1、2号機(鹿児島県)について「新たな規制基準を満たしている」と認めた。これで再稼働に向けた前提条件が整った形になり、安倍晋三政権は秋以降にも再稼働させる見通しだ。この問題をどう考えるか。
「再稼働決定」に関する新聞報道は隔靴掻痒である
各紙の報道をみると、脱原発派の朝日新聞は「責任あいまいなまま」「避難計画 審査の対象外」との見出しで批判的に報じ、同じく東京新聞も「『厳格審査』に穴」があるとして「作業員拠点、ベント、第2制御室」の3つが「未完成」と見出しで問題点を指摘した。一方、原発賛成派の読売新聞は「秋に再稼働 準備本格化」「安全『世界最高レベル』規制委委員長」と安全性を強調し、産経新聞も「川内原発 秋にも再稼働」「規制委 安全新基準に『合格』」と旗を振っている(いずれも7月17日付朝刊1面)。
私は原発を止めたほうがいいと思っている。だから朝日や東京にシンパシーを抱くが、それでも報道ぶりには隔靴掻痒の感を拭えなかった。集団的自衛権の問題でも指摘したが(6月27日付け公開コラム)、今回も記事は基本的に原子力規制委が展開した議論の枠組みにとらわれていて、原発がもつ本質的な恐ろしさや矛盾に迫っていなかったように感じるのだ。
こう書くと、朝日も東京も「いや、たとえば規制委が視野に入れていない住民避難の問題だって、ちゃんと指摘している」と反論するだろう。それはその通りだ。万が一の場合、住民をどう避難させるかが重要課題だが、規制委は「それは自分たちの仕事ではない」といって手を付けていない。
政府はどうかといえば、政府もそれは「自治体の仕事」といって知らん顔している。だから、そういう抜け落ちた問題を指摘するのは、大事なマスコミの仕事である。それでも、あえて言おう。では、住民避難の問題がクリアできれば、原発再稼働を認めるのか。私は「そうではない」と考える。
大飯原発運転差し止めの福井地裁判決こそ原発問題の核心
原発の根本的な矛盾や恐ろしさは、住民避難の難しさのような派生的ポイントにあるのではない。もっと別な次元だ。それはつい2ヵ月前、福井地裁で下された福井県の大飯原発運転差し止め請求事件判決によく述べられている。
・判決文の読みやすい要旨 http://www.news-pj.net/diary/1001
・判決文原本の前半部分 http://www.cnic.jp/wp/wp-content/uploads/2014/05/e3ebefe20517ee37fc0628ed32be1df5.pdf
・判決文原本の後半部分 http://www.cnic.jp/wp/wp-content/uploads/2014/05/8d7265da36628587548e25d7db234b7d.pdf
この判決について、新聞は大々的に報じていたはずだ。だが今回は朝日と東京が社説でごく短く触れたくらいで、報道記事ではほとんど紹介されなかった。今回はニュースの焦点が規制委の判断にあったから、2ヵ月前の地裁判決に触れる必要はない、と考えたかもしれない。
それは記者の習い性のようなものだ。とにかく一番新しい出来事にワーッと集中して報じてしまうのである。だが、読者のほうは2ヵ月前であっても、再稼働に関わる物事の本質を知りたいと思っているのではないか。少なくとも一読者である、私はそうだ。
そこで、あらためて福井判決の中身を紹介したい。判決は本文だけで68ページ、加えて参考の別紙が付いている。私は2ヵ月前は新聞記事を読んだだけで、判決文までは目を通していなかった。今回、全文をあらためて読んでみて、頭の中がスッキリした。
あれこれ論評するより、とにかく現物を読んでいただくのが手っ取り早いだろう。ここに原発問題の核心がある。以下はごく短い要約にすぎないが、関心がある読者はぜひ、上に挙げた判決本文を読んでいただきたい。これさえ読めば、あとは何も読む必要がない、と思えるほど核心を突いた判決である。
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