ハーグ核サミット会場では、潘基文・国連事務総長とオバマ大統領がウクライナ問題について話し合う光景が photo gettyimages
長谷川幸洋コラム第43回 クリミアめぐる国連決議でわかった「G20の分裂」「冷戦に逆戻り」「集団的自衛権の必要性」
ハーグ核サミット会場では、潘基文・国連事務総長とオバマ大統領がウクライナ問題について話し合う光景が photo gettyimages
ロシアによるクリミア併合問題で国連が3月27日、総会を開き、併合に先立って実施されたクリミアの住民投票について「なんの正当性もない」と批判する決議案を採択した。住民投票について、決議は「クリミア自治共和国とセバストポリの現状変更を認める根拠にはならない」と断言している。
決議は「ロシア」と国名の名指しこそ避けたものの、明確なロシア批判である。
3月20日公開のコラムで書いたように、国連は当初、安全保障理事会で住民投票を無効とする決議案を採択しようとした。ところが、ロシアが拒否権を行使したために、それは否決されてしまった。
今回は安保理ではなく総会の決議である。だから住民投票を無効と断じたところで、国連憲章の上では、現状を改める実効的強制力はない。
あくまで象徴的なものだ。とはいえ、クリミア併合問題に対する国際世論を推し量るうえでは、それなりに意味がある。
まず、評決結果である。決議案に賛成したのは、米国やカナダ、日本など100カ国に上った。これに対して反対は11カ国だった。棄権が58カ国である。この数字をどうみるか。
反対した国を挙げると、当事国であるロシアのほかアルメニア、ベラルーシ、ボリビア、キューバ、北朝鮮、ニカラグア、スーダン、シリア、ベネズエラ、ジンバブエの11カ国である。もともと親ロシアや反米だったり、北朝鮮やシリアなどテロとの関係が濃い、あるいは政情不安や崩壊寸前の国々である。
これらは「まあ、そんなものだろう」と思う。
興味深いのは棄権した国々だ。58という数字を多いと見るか、少ないと見るか。私は「意外に多い」と感じる。たとえば、中国やブラジル、インド、アルゼンチン、南アフリカといった20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議(G20)のメンバー国も棄権に回った。
ちなみにG20を構成する国と地域の中で、賛成したのは日本とカナダ、米、仏、独、伊、英、EUのG7メンバー国・地域と豪、インドネシア、韓国、メキシコ、サウジアラビア、トルコである。ロシアはもちろん反対だ。
つまり、G20の中でも中国、ブラジルなどBRICsを構成する有力な新興国はそろってロシアの肩を持つようにして棄権に回り、残りの新興国が賛成したという構図である。はっきり言えば、G20も分裂気味なのだ。
今回の事態でロシアは事実上、G8を追放された。日米欧はG7の枠組みの下で結束を保っているが、国連以外でロシアを加えた国際的枠組みといえば、G20しかない。ところが、そのG20も結束していないことがはっきりしたのだ。
そういう事態が今回の国連総会決議によって浮き彫りになった。
ほかにもアルジェリアとかアフガニスタン、エチオピア、イラク、エジプトといった政情不安の国々も棄権に回っている。反対と棄権を合わせると、実に69カ国に上る。国連加盟国全体193カ国の35%強である。
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