8年前の政権担当時からの野望へ驀進する安倍首相。ぬるい批判では止まりそうにない photo gettyimages
集団的自衛権の行使容認を目指す安倍晋三首相の憲法解釈手続きをめぐって、与党である公明党の漆原良夫国対委員長が自分のメールマガジンなどで痛烈な批判を展開している。ポイントは次の部分だ。
「ある日突然総理から『閣議決定で憲法解釈を変えました。日本も今日から集団的自衛権を行使できる国に変わりました』などと発表されても国民の皆さんは、到底納得されないと思います」「『なぜ変更する必要があるか』『変更した結果、何が、どのように変わるのか』など、国会で十分議論をして国民的合意を得る必要があると思います」(いずれもhttp://urusan.net)。
与野党の議員から似たような「安倍批判」
同じような批判は野党である民主党の岡田克也元代表も、国会質問や自分のブログで次のように展開している。
「内閣で決めるときに与党との調整、そして何よりも国会での議論が必要だ。内閣で決めてから議論するのではなく、案を固め、それを示し、国会でしっかり議論すべきである」(http://blogos.com/outline/81186/)。
安倍は憲法解釈の変更手続きについて、政府の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇、柳井俊二座長)が4月に出す報告書を受けて、内閣法制局を中心にまず政府内で議論し、それから与党とも協議して、最後に政府が閣議決定するという段取りを想定している。
漆原と岡田の批判は「政府が閣議決定する前に国会で議論せよ」という主張だ。これをどう考えるか。
まず予備知識として閣議決定について説明しておきたい。そもそも「憲法解釈を閣議決定する」などという話がこれまであったのか。
民主党政権時代に私も加わった超党派議員・有識者による「憲法円卓会議」で事務局長役を務め、いま慶応義塾大学大学院法学研究科講師の南部義典によれば「憲法解釈を閣議決定した例はありません。とくに憲法9条をめぐる解釈は、これまで内閣法制局長官の国会答弁や答弁書などによって定まってきました」という。
そうした国会答弁や答弁書の積み上げによれば、いまの政府解釈は「集団的自衛権を保有しているが行使は認められない」となっている。たとえば次のようだ。
「我が国は主権国家である以上、国際法上、集団的自衛権を保有しているが、憲法第9条の下で許容される自衛権の行使は自国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきことから、集団的自衛権の行使については、この範囲を超えるため、憲法上認められない」(1981年5月29日「稲葉誠一衆院議員の質問主意書に対する答弁書」など。参議院憲法審査会ホームページ)
つまり、これまでは実質的に内閣法制局が憲法解釈を示し、それを歴代の内閣が追認してきた。それで内閣法制局の解釈が定着した。これが実態である。言い換えれば、官僚が憲法を解釈し、首相を含む政治家が後で認めてきたのだ。
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