田原総一朗「みずほ銀行の不正融資やホテルの食材偽装表示にある『日本の病』」
2002年、僕が塾頭となって「大隈塾」を母校の早稲田大学に開設した。60代の後半くらいからだろうか、母校のために何かできないかと考えるようになったからだ。さまざまなゲストに来ていただき、学生、あるいは社会人の塾生たちに講義をしてもらっている。こうした経験は、若者たちの血となり肉となるだろう。
時には僕も、彼らの前で話をすることがある。先日は、いま世間を騒がせている、みずほ銀行の不正融資や食材偽装表示をテーマにして話をした。テレビでは毎日のように、大企業のお偉方が謝罪会見する場面が、繰り返し放送されている。なぜこのような不祥事は、なくならないのか、と。
僕は、ひとことでいえば、「空気」のせいだと考えている。組織内で流れる空気に、多くの人はいつしか慣れてしまう。暴力団への融資、食材の偽装表示、客観的に見ればいけないことはわかっている。だが、その空気の中にいると、誰も「やめよう」と言えなくなってしまうのである。
彼らはまた、謝罪の仕方も下手だ。当初、みずほ銀行は、「頭取は把握してなかった」と弁明していた。阪急阪神ホールディングスの社長は、偽装ではなく「誤表示」だと説明した。彼らは、心底責任を感じていないのだ。ずっと会社がやってきたことが、「たまたま」自分が社長であるときに、発覚してしまった。「ついてない」くらいにしか、思っていないのだ。
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