[Photo] Bloomberg via Getty Images
長谷川幸洋コラム 第25回 何でも国が負担はおかしい!株主と銀行の責任、廃炉の枠組が汚染水問題の焦点
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原発事故の除染費用を東京電力ではなく、国が税金で負担するという話が持ち上がった。「ついに」というか「やっぱり」というべきか。
こうなると、いよいよ「東電本体の経営をどうするか」が避けて通れない課題になる。
現行の枠組みがどうなっているかといえば、前回コラムを含め、これまで何度も紹介してきたように放射能汚染物質対処特別措置法の下で国が一時、除染費用を立て替えたとしても「最終的には東電が負担する」と決まっている。
ところが、東電は昨年11月の時点で被災者への賠償、除染、中間貯蔵費用だけで10兆円程度と目される費用を「一企業のみの努力では到底対応しきれない」として事実上、ギブアップ宣言を出している。これも当時のコラムで指摘したとおりだ。
事態はそこから一段と悪化して、汚染水問題がもはや収拾不能ではないか、と思われるほどになってしまった。
東電は実質的に破綻しており、賠償も除染も汚染水問題を含む廃炉も東電の手に負えないのは、もはや覆い隠しようがない。
実際、国はこれまで東電に対して404億円の費用を請求したが、東電はわずか67億円しか払っていない。法律が明確に定めているにもかかわらず、支払わないのは「ない袖は振れない」と居直ったも同然だ。
以上は、私が指摘するまでもなく、法律の枠組みと東電の発表をそのまま素直に読めば、だれにも分かった話である。
今回、降ってわいたかのように税金負担の話が出てきたのは、自民党の復興加速本部(大島理森本部長)が「国が一部を負担する」という提言案をまとめたからだ。裏を返せば、自民党も東電のギブアップを認めたのだ。
それによれば、すでに計画済みの除染(約1.5兆円分)については法律が定めたとおり、東電に費用を請求する。
だが、それ以上の除染と中間貯蔵費用は国が負担するという。東電は1.5兆円分だって払いたくないし実際、払えないと居直るつもりだろうが、自民党とすれば、まさか法律を横紙破りするわけにもいかず、得意技の「足して2で割った」形である。
この話をどう考えるべきか。
法律が東電に全額請求する仕組みになっているのは、当時の民主党政権が「東電を存続させる」という話を最初に決めて、そのうえで一切の事故処理費用は他の電力会社の支援も仰ぎつつ、基本的には東電に長期の分割払いさせる、という方針を決めたからだ。
これは、国費を使いたくない財務省と東電を生かしておきたい経済産業省の思惑が一致した結果である。
だが、そもそも賠償も除染もいくらかかるか分からない。廃炉となると、もちろん費用がさらに巨額に上るのは、当時から分かっていた。
だが、廃炉も計算に含めると「東電に全部負担させる」という話のデタラメさがバレバレになってしまうので、とぼけて先送りを決め込んでいた。
ところが汚染水処理が大問題になってしまい、いよいよ逃げられなくなってしまった。万事休すなのだ。
汚染水は原発事故現場では当初から問題視されていた。亡くなった吉田昌郎所長が強く懸念していたのは、よく知られている。
最近、出版された原発作業員「ハッピー」さんによるツィート記録本、『福島第一原発収束作業日記』(河出書房新社)でも、たとえば2011年6月の段階で「2号機の汚染水、溢れそうでかなりヤバいかも」と記されている。
ちなみに東電自身が汚染水をどう考えていたのかといえば、はっきり言って、事態をなめていた。それが証拠に、昨年11月に東電が出したギブアップ宣言である「再生への経営方針」では「汚染水」の「汚」の字も出てこない。
現場では、とっくに問題の所在が分かっていたのに、経営陣は見て見ぬふりをしてきたのである。
いまごろになって、自民党が「除染は国の負担で」と言い出した。
となると当然、東電の株主や銀行の責任を追及せざるをえない。株主や銀行は自分のビジネスとして東電に投融資してきたのに、なんの関係もなくむしろ被害者である国民が税金で負担するわけにはいかないからだ。
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