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昨年10月、デンバーで開かれた候補者ディベート 〔PHOTO〕gettyimages

 前回は、インターネットによる選挙活動が解禁されることで、市民による政治参加の間口が広がる可能性がある一方で、専門のITチームを駆使できるような、資金力のある候補や政党に優位に働く制度になるのではないかという課題を提示した。

 今回は、インターネットの活用で、選挙報道はどう変わるのかという点に焦点をあてたい。

 昨年、アメリカで行われた大統領選挙では、CNNをはじめ、放送局がIT企業と協業してあらたな選挙報道のスタイルを模索している様子が大変興味深かった。ネット選挙先進国である米国の事例から、次世代メディアの姿を想像したい。

どこよりも早く「勝者はロムニー氏」と速報したCNN
 大企業優遇か、中間層の底上げか。接戦の末、現職のオバマ氏が再選を果たしたアメリカ大統領選挙。4年前の初当選時には、改革の旗手、米国再生の救世主として圧倒的人気を誇ったオバマ氏だったが、今回の選挙では、対立候補に得票数で僅差まで追いつめられ苦戦した。

 広がる格差、改善しない雇用、停滞する経済---これまでオバマ氏を支持してきた中間層、低所得者層からの失望や苛立ちの声が、選挙戦をより混迷へと誘った。経済回復の遅れは、強いアメリカの復活を求める保守勢力の動きを活発にさせ、オバマ氏の社会保障政策に憤る白人宗教右派の台頭を招いた。

 こうした選挙戦に対し米国テレビメディアはITメディアとの協業で「次世代型世論調査報道」を競い合った。SNS時代の選挙報道の姿を探りに現場を訪ねた。

 去年10月、アメリカ中西部コロラド州デンバーで大統領選挙に向けた初めての候補者ディベートが開かれた。民主党オバマ氏か共和党ロムニー氏か。当時、両候補への支持率は50%台前後で拮抗しつつも、オバマ氏がやや優勢だと伝えられており、ロムニー氏がディベートで巻き返しを図れるかに注目が集まっていた。

 そうした中GoogleはSNSを利用した世論調査で、大統領選挙報道に参戦した。Google+の利用者などを対象にネット上でアンケートを実施。「ディベートの勝者はどちらか?」「富裕層への課税に賛成か?」などの設問に対する回答が、利用者の年齢や地域などの属性情報と共に送信され、すぐさま年齢、年収別などに分けられグラフ化されていく仕組みだ。

 今回のディベートでは年収が 5万ドル未満の中間層でロムニー氏の政策を支持する声が高いと分析され、abcテレビやニューヨークタイムズに分析結果が供給された。

 一方でCNNは、Facebookや新興メディア企業SnappyTVと提携。圧倒的な影響力を放った。 ディベート終了直後にどこよりも早く「勝者はロムニー氏」と速報し、その一報は瞬く間に世界中を駆け巡った。