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3・25巌流島総括「見るほどに語りたくなる、それが巌流島だ!」

2016/03/27 03:20 投稿

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グレイシーを世に広めた安西記者、3・25巌流島、渾身のリポート! 

3月24日(木)、巌流島TDCホール大会の前日会見が開催された。
 
3月25日(金)、東京・水道橋の東京ドームシティホールでおこなわれた「巌流島 STARTING OVER 公開検証3」の模様をお伝えする。試合は全て3分3R・インターバル1分だ。
 
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オープニングファイトの第1試合(60キロ契約)は、柔術の村田純也がMMAの三浦ミッキー亮に判定2-0で勝利。
 
第2試合(巌流島特別ルール・85キロ契約)は、U-Styleの正剛(まさよし)が竹村光一から1R1分16秒、アキレス腱固めで一本勝ちした。
 
8メートルの円形の闘技場に3人の審判が立ち、ルールを説明。闘技場の場外の溝にいよいよスモークが入れられ、ムードは高まる。
 
このあと、横山雅始師範率いる日本甲冑合戦之會による、集団でのガチ甲冑戦演舞があり、続いて和装バンドHEAVENESEが楽曲「Might Wind」を披露。引き続き選手の入場式をライブ演奏で盛り上げた。
 
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本戦は全8試合。そのうち第4試合までが、いずれも1R決着となった。
 
第1試合(80キロ契約)は秒殺決着。カポエイラのマーカス・レロ・アウレリオ(ブラジル)が、日体大相撲部出身の中島大志の正面に立ち、まず左ハイのモーション。中島は下がってかわすと、アウレリオが続けて強烈な左の前蹴り。圧力で中島は円の外に出てしまい、転落寸前で腰をかがめたが、アウレリオが両手で中島の両肩を押すと、簡単に転がるように場外へ落ちてしまった。これでアウレリオは1ポイント獲得。
 
闘技場に中島が戻り、両者離れたポジションから試合が再開する。ゆっくり近づいていったアウレリオが、いきなり大きく側転。骨法で言うところの、あびせ蹴りのような蹴りを左足で放ち、アウレリオの左足のかかとが中島の左ほほを直撃。後方に吹っ飛んだ中島は、これで意識が吹っ飛び、主審がすぐに試合を止めた。
 
タイムはわずか28秒。前回大会では合気柔術の達人・渡邉剛(たけし)を左フックで15秒で失神させた中島だったが、この日は逆に完敗した。
 
実は試合の前々日の個別会見で中島と会った時から、「実力差はかなりある。相手の方が上。今からでもいいから、対戦は辞めておけと言ってくる人もいるぐらいです」と言っていたのだが、試合後は「モーションが大きい蹴りだから見えると思っていたけど…。最後の蹴りは全然見えなかった」と、落胆しているというよりキツネにつままれたような表情だった。
 
一方のアウレリオは試合後、闘技場で元気いっぱい、カポエイラのパフォーマンスを見せ、観客の喝采を浴びた。カポエイラはブラジルの黒人が生み出した土着の舞闘と言われるが、現在は舞踏として存在している。でも彼はカポエイラの動きを実戦で活かせるだけのMMA(総合格闘技)の下地を身に付けている。ここにアウレリオの強さのポイントがある。派手な動きはスタミナロスも早いはずだが、今回は呼吸ひとつ乱さず、短時間での完勝だった。
 
*明るい笑顔が印象的なブラジリアンのアウレリオ。巌流島が日本の格闘技ファンに胸を張って紹介できる、ユニークなファイターの筆頭と言えるだろう。
 
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第2試合(72キロ契約)は、日本在住のタイ人、クンタップ・チャロンチャイが、マッハ道場のTOSHIを破った。2010年にはキックルールで対戦している両者。この時クンタップに敗れているTOSHIは、「道着を掴んだら誰にも負けない」と巌流島ルールでのリベンジを誓っていた。
 
クンタップは35歳。決して若いとは言えないが、ムエタイの実力は一級品だ。試合が始まると、クンタップが首相撲に行くが、TOSHIに押されてしまう。それでも転落寸前でバランスを保ち、パンチで反撃。続けて闘技場中央で組み合いになると、今度は帯を掴んで投げを狙った。これはエプロンに出てしまい、ブレイクに。クンタップは腰の強さを見せ、組み技になっても一筋縄ではいかないところを見せつけた。
 
そして中央で再開すると、クンタップが右ハイ! TOSHIは左腕を上げてブロックしたが、TOSHIが左フックに来る前に強烈な右フックをまともに命中させ、1R1分27秒、失神KOで決着をつけた。あまりの右フックの強さに、ホール内の観衆はア然。オープンフィンガーグローブでの一撃は、見事に決まったときの威力を見せつけられると、戦慄が走るものだが、この一撃は強烈すぎた。巌流島ルールであっても、ムエタイの一流選手をなめたら大変なことになる。そのイメージは、しっかり刷り込まれた。
 
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第3試合(78キロ契約)は、"カマキリ拳法"蟷螂拳(とうろうけん)の瀬戸信介と"達人・柳龍拳の前歯を折った男"小川柔術の岩倉豪が対戦。蟷螂拳に関しては、カマキリのような動きだけが注目されがちだが、それだけではなく、武術としてのベースは当然あるし、また瀬戸は様々な中国武術を習得しており、空手やキックの試合にも出場。これまで積極的に他流試合に売って出て来て、好成績を収めて来た選手だ。岩倉は2006年11月に札幌で行なわれた柳龍拳との道場マッチがあまりに有名で、YouTubeの再生回数が400万回を超えているほど。瀬戸との顔合わせも注目の一戦だった。
 
ところが、岩倉が組み合おうとすると、瀬戸にがぶられて右パンチをボディに連打され、そこからグラウンドで下になったとき、腰をひねってしまい、左ふともも外側の上部を痛めてしまう。45歳の岩倉、早くもピンチに。
 
その後、岩倉はバックマウントを取るも、瀬戸はすぐに立ちあがり、同体で場外に転落。中央に戻って再開されると、岩倉は相手の道着を掴むが、最後は瀬戸の右のパウンド7連打を食らって試合はストップ。タップはしなかったが岩倉は防御の姿勢のみとなり、1R2分6秒、主審が試合を止めた。
 
瀬戸はグラウンドが嫌いで、「足を触られるだけでもイヤ」と笑っていたが、グラウンドに持ち込まれないようにする対応力は、かなり学んでいるようだ。試合を見る限り、そうとしか思えない。フジテレビNEXTの実況アナは「グラバカで練習している」と言っていたが、オールラウンドなコンプリートファイターではなく、こうした個性ある闘い方をする選手がドンドン出てくると、巌流島は面白くなる。巌流島が発掘した好選手、瀬戸の今後に大注目だ。
 
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第4試合(67キロ契約)は、バラット・カンダレ(インド)と元ボクシング日本王者の渡辺一久の対戦。試合前、渡辺は右手でカンダレの胸倉をつかみ、にらみつけて挑発。気合い十分の渡辺だったが、開始の太鼓が鳴ってわずか25秒後には失神していた。
 
カンダレは左でインロー2発。渡辺は内股を蹴られても効かないとばかり、右手でポンと、蹴られた左足太ももを叩いてアピールしたが、もう1発、左でインローを蹴られた。ここまでのカンダレはごく普通のキックボクサーの動きだ。そしてフィニッシュは左ハイ。渡辺の防御をかいくぐり、カンダレの左足先が渡辺の右アゴに入った。脳が揺れた渡辺は意識を失い、後方にスーッと倒れて行く。カンダレはそこに飛びかかっていき、右パウンド5発。鮮やかなKO劇だった。
 
渡辺に試合後に聞くと、「ローは効いてなかったけど、最後の蹴りは見えなかった。俺、どんな感じで倒れましたか? …もう巌流島に呼んでもらえないかな。でもまず、しばらくは休みたい」と、さすがに寂しそう。
 
一方のカンダレは、大会前々日の個別会見の時、「インドにも強い選手がいることを示したい」と言っていたが、その通りになった。でも実は個別会見の時は、集まった取材陣が首をかしげるほど、カンダレは元気がなかった。インタビューに答える声は小さいし、フジテレビNEXTやニコ生やの取材クルーに囲まれて、委縮しているようにも感じたのだ。カンダレが学んできたペンチャック・シラットというのは、彼いわくマレーの格闘技で、素手でも闘うが武器を持って闘うことがあり、彼はこの、武器を用いた闘い方に興味があって、ペンチャック・シラットの棒の使い方を習った程度なのだという。それよりもレスリング、キックボクシングをしっかり学んできて、「当日はタックルを見せたい」と話していた。つまり彼は、日本では未知の格闘技ペンチャック・シラットで闘うのではなく、オーソドックスなレスリング、キックボクシングで闘うつもりだったのだ。渡辺は未知の格闘技……という触れ込みに惑わされ、試合前ナーバスになりすぎていたようにも思う。カンダレが実際の試合で見せたテクニックは、前足を巧みに使ったキックと、MMAのパウンドだった。ペンチャック・シラットにも同じ技術があるのかどうかはわからないが、とにかくカンダレは掘り出し物の選手だ。
 
闘技場で意識が少し回復した渡辺は担架を乗せられることを拒否したが、うずくまって悔しさをあらわに。すると、帰りかけていたカンダレとセコンドは渡辺に近寄ってきて、渡辺の腕をとって起こし、渡辺の健闘を称えたのだ。今度は渡辺がそれに応えて、ふらつく体で懸命にカンダレの体を持ち上げて、勝者を称えた。これはとてもいいシーンだった。会場から沸き起こった拍手が、ノーサイドとなった2人の選手を包み込んだ。
 
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第5試合(70キロ契約)は好勝負に。シュートボクセ出身のアンドレ・ジダ(ブラジル)とコンバット・サンボのビターリ・クラット(ロシア)の一騎打ちだ。ブラジルとロシアと言えば総合格闘技の世界で、アメリカが台頭してくる前は双璧をなす強豪国だった。当時の覇権争いを久々に思い出させてくれるような、スリリングな打撃戦になった。
 
ジダは現在、自身のジムでムエタイを主にトレーニング。MMAでも闘っていて、日本ではHERO'Sにも出場しているが、組み技、寝技よりも圧倒的に打撃の選手だ。技術はすべてシュートボクセで学んできたという。一方のクラットも打撃が得意な選手。試合は両者、間合いをはかりながら、力のこもったスタンドの攻防を展開した。1Rはクラットがボディブローも見せたが、ジダの見事な右ストレートフックが入る。クラットが右バックブローを見せたところで。このラウンドは終了。
 
2Rになるとやや、クラットの方がパンチで優勢に。ジダは相手の右回し蹴りの蹴り足を掴むと、同体だったが場外に力強く投げ落とした。…というより体重を乗せて場外に背中から叩きつけたが、それ以外ではペースを握っていたのはクラットだった。
 
ところが3Rになると、いきなりジダが猛スパート。クラットには叩きつけられたダメージが残っていたのか、ジダがパンチでラッシュをかけると、体を横に向けてガードに徹してしまう。そこへジダの右フックがさく裂。倒れ込んだ相手に右パウンド3発打ち込み、0分12秒、レフェリーが試合を止めた。全体を振り返ると、試合は拮抗した見事な打撃戦だった。また新たに、場外へ同体で転落しても、転落の仕方によっては大きなダメージを与えられることがわかった。
 
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ここで、今大会でアフリカ勢招へいのため尽力してくれた、タレントのボビー・オロゴンさんが挨拶。続けて喧嘩術の林悦道・士心館館長が、喧嘩術の7つの型を紹介。会場のお客さんを1人、闘技場に上げ、イスに座ってもらい、現場の状況を利用し、環境を武器化して喧嘩にどう勝つか、というシミュレーションもしてみせた。
 
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第6試合(フリーウェイト)はセネガル相撲のグリス・ブドゥ2(ツー、セネガル)と、モンゴル相撲のバル・ハーン(モンゴル)が対戦。本来ならセネガルからはグリス・ブドゥが参戦予定だったが、大会前になってセネガル相撲協会から、タイトルマッチを7月30日に控えているので巌流島への出場を控えるよう要請があり、本人はやる気満々だったものの弟をこの大会に送り込んできた。兄は、地元でタイトルマッチをすれば1試合で数千万円のファイトマネーをもらえる正真正銘のセネガル相撲王者だが、弟も強豪だとのこと。兄も実は遅れて日本に向かい、この日の夜、成田空港に到着したが、道路が渋滞していて、会場に着いたのは全試合終了後だった。一方のバル・ハーンは星風の兄で、日本ではDREAM等の出場経験もある。巨漢の相撲ファイター同士の一騎打ちだ。
 
ブドゥ2には在日セネガル人が応援に駆けつけ、彼らが演奏する太鼓のリズムに乗って、踊りながら登場。これがセネガル相撲の入場の仕方なのだ。
 
1R、ブドゥ2が組みついて闘技場内で投げつける。ハーフマウントで寝技規定時間の15秒間押さえ込んだが、立ちあがるとなぜかブドゥ2が試合続行不能?をアピール。主審の平直行が、必死に事態を把握しようとするが、言葉の壁もあって、なかなか事態を掌握できない。結局わかったのは、どうやらブドゥ2が投げたとき、自分の体も相手の上に乗ったわけだが、その時ちょうど自分の股間が、倒されたバル・ハーンの右ヒザにあたって、金的が痛いということなのだ。どうやらブドゥ2はファウルカップをしていなかったらしい。相撲系の競技はファウルカップはしないのだろうか?
 
1分間のインターバルを取ると、ブドゥ2が右ジャブから押し倒したが、倒した場所が円形の外のエプロンで、ブレイクとなる。続けて組み合うと、バル・ハーンが右ヒザ蹴り5発。だがそこからブドゥ2はバル・ハーンを押し出して足から転落させた。ここで1Rは終了。とにかくバル・ハーンに相撲技で勝っているのだから、セネガル相撲の力量はたいしたものだ。
 
2R早々、組み合うとブドゥ2はもろ差しの体勢で押して行き、バル・ハーンを足から転落させた。再開すると、組み合いからバル・ハーンが左ヒザ蹴りを13発。ところがブドゥ2は、バル・ハーンの体をひねるように横に投げ、場外に足から転落させた。そして再度の組み合い。バル・ハーンは3度の左ヒザ蹴り。ところがブドゥ2はここから下手投げの要領でバル・ハーンを足から転落させた。これで1ラウンド中、3度相手を転落させたので、2R1分30秒、ブドゥ2のTKO勝ち。
 
勝ったブドゥ2はまた、太鼓のリズムで踊りを披露。セネガルサイドのセコンド陣は大興奮で、歓喜に酔いしれていた。ブドゥ2は「セネガル相撲の強さを見せられて嬉しい。日本では年上の人を立てるけど、それはセネガルでも同じ。日本とセネガルでは文化が似ているところがあるんです!」と、興奮しながらマイクでアピールしていた。
 
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セミファイナルの第7試合(フリーウェイト)は、大相撲元十両の星風(モンゴル)と、ズールー族の"キングボボ"ボンギンコシ・マドンセラ(南アフリカ)の対戦。マドンセラには在日南アフリカ人の女性シンガーと打楽器演奏隊が応援につき、ライブ演奏で盛り上がる中、入場してきた。でもその姿はブドゥ2と違い、実に静かだ。
 
マドンセラは何かの格闘技の代表と言うことでなく、招へいしたボビー・オロゴンさんいわく、村どおしの縄張り争いなどで集団で闘うときの村の長(おさ)。一番強い村の長なので"キングボボ"と呼ばれているそうだ。「争いは集団でおこなわれるから、目が後ろにもないといけないほどだけど、巌流島では相手が1人なので楽だ」と言い、何キロ持ち上げられるかは計ったことがないけれど、「牛なら3頭、カバでも1頭なら楽に持ち上げられる」と、涼しい顔で話していた。大会前から幻想を膨らませるだけ膨らませていたマドンセラ。果たしていかなる試合をするのか?
 
1R、星風は突進し、組んでテイクダウンを取り、サイドポジションで押さえ込む。15秒ルールでブレイクとなり、星風は先に立ちあがると臨戦態勢。ゆっくり起き上ったマドンセラに対し、レフェリーが再開のコールをかける前に、星風は右→左のパンチで突っかかっていった。主審の平直行があわてて星風の背後から抱きつき、星風を止めようとする。組みつく星風に対し、ボンギンゴシは両腕を広げて、なんだこれは!?のポーズ。これで星風は1点減点。右目の下をこの時切ってしまったマドンセラにドクターチェックが入る。マドンセラは195センチ、140キロ。星風は181センチ、130キロ。体格差もあり、しかも前の試合で実兄がセネガル相撲に敗れているだけに、星風が追い込まれて感情がたかぶっているのはわかるが、このままでは試合が試合として成立しなくなる可能性がある。星風は冷静さを取り戻すべきだったが、上がったテンションは戻せなかった。
 
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続いての組み合いは同体で転落。次の組み合いでは星風が押し倒し、サイドポジションで15秒押さえ込んだ。そして立ちあがり、星風が右のロングフック! 強烈な1発だ。そのまま押して行き、場外へ同体転落。ものすごい勢いで背中から場外へ叩きつけられたマドンセラに対し、上に乗っていた星風は、場外の溝の中なのに右パウンドを1発、叩きつけてしまった。2発目は当たらなかったが、これで南アフリカのセコンド陣がエキサイト。セコンド陣が収まるべきブースから飛び出さんばかりの勢いだ。審判団が協議に入り、試合が中断する中、マドンセラのセコンドの1人が日本語で「ルール守って!!」と大声で叫ぶ。客席はドッと沸き、拍手も起きた。星風はこれで減点2点目となり、次に反則したら即、反則負けが宣告される状態に。再開すると星風は左ロングフックから組み合い、倒したが、倒した場所がエプロンでブレイクに。このあとスタンドで向き合って、星風が右フックに行き、それをもぐってかわしたマドンセラが組みついたところで、10秒前の太鼓の合図を聞いた主審が、誤って1Rを終えさせてしまった。
 
2R、今度は星風がサイドポジションで押さえ込むと、上の星風が突然タップの合図? 一度、左手で相手の体を叩いた。15秒たちブレイクされたので、主審が確認すると、なんとマドンセラが星風の右上腕に下から噛みついていたことが判明。再開のコールがなされる前に、星風は突進して、左フックで殴りかかった。主審が間に入って止めたが、ここで南アフリカのセコンドが1人、闘技場の上に飛び出してくる。騒然とする会場内。今度はマドンセラに減点1が与えられた。再開して組み合うと、星風がものすごい勢いで押して行き、同体転落。この時、溝の端に置かれた照明器具に当てたのか、マドンセラは左足首の一部を切ってしまう。試合は中断し、テープングして試合を続行させようとしたが、南アフリカ側のセコンドが星風にエキサイト。「うるさいんだよ、お前!」「やってやるぞ!」と日本語で叫び出した。経過時間1分7秒から再開。突進する星風は、同体になってマドンセラを突き落とす。左足首を切って踏ん張りがきかないのか、背中からすごい勢いで転落するマドンセラ。闘技場に上がってくると、うつろな目でセコンドの方に向かって歩き出した。それを見てボビー・オロゴンさんがタオルを投入。2R1分30秒、星風のTKO勝ちが決まった。気持ちが折れたマドンセラの戦意喪失にも見えたし、ボビーさんがセコンドの興奮を心配して試合を終わらせたようにも見せた。
 
星風は「体の大きさじゃなくて、気持ちの強さで勝てるって証明したかなって思います!」と喜んでマイクアピール。でもそれと同時にマドンセラにはプロ意識がなかった。本来ならプロ選手ではないので、それは当然と言えば当然なのだが、巌流島の主催者側もマドンセラを注目選手として大会前からアピールしていたし、それでチケットを買った人もいるわけだから、ファイトマネーをもらって観客に見せる仕事として請け負った以上、もっと闘争心を出して闘い切るべきだった。確かにケタはずれに体はデカかったが、相撲が強いわけでもなく、技術もなく、単なる素人力自慢に見えなくもない。同じ体格のプロの格闘家と闘ったらまず、ひねり倒されるだろう。でも、素材としては頼もしいし、心を鍛えてくれば、次回以降の来日も楽しみなのだが。
 
また、星風の行為は、競技の中ではあってはならないこと。競技者としての資質を問われることになる。今後、巌流島サイドは指導するのか。それとも見限るのか。主催者としてのポリシーが問われるところだ。
 
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メインイベントの第8試合(巌流島特別ルール、80キロ契約)は、初来日したイスラエルの格闘術クラヴマガの教官ジャッキー・ゴーシュ(イスラエル)と、田村潔司(U-Style)の対戦。寝技30秒、寝技での打撃に加えて関節技・締め技が認められた特別ルールでの対戦だ。
 
ゴーシュはMMAでも6戦全勝の32歳。田村は46歳。90年代の中盤、当時田村が所属していたUWFインターナショナルのプロレスの模様が、イスラエルでは「BUSHIDO」という番組名でテレビ放送されて人気を博しており、ゴーシュは子供の頃、田村のことも憧れの目で見ていたそうだ。田村が足関節技が得意なことも知っていたが、試合の2週間前に代役出場が決まったので対策を練る間もなく、寝技は30秒という制限があるので、足関節技はそんなに気にする必要はないのではと思っていたという。とにかくゴーシュはアグレッシブだった。見事なコンプリートファイターだった。
 
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1Rから闘いはMMAの様相。猪木-アリ状態で田村が下になった時、田村は両足でのガードを一瞬おこたった。その瞬間、長いリーチのゴーシュの強烈な右パンチが飛んできて、田村が顔面を痛打。この一撃が、試合の明暗を分けたパンチだったように思う。田村の小さなミスをゴーシュが見逃さなかったのだ。鼻血を出した田村はこの直後、スタンドに戻るとゴーシュに押されて、あっさり転落してしまった。
 
2R、田村はゴーシュの左ローの蹴り足を取ると、そのまま一気に押していき、相手を足から転落させる。続いて闘技場中央、田村は引き込もうと飛びつくと、ゴーシュは田村の肩を下に叩きつけ、そこから速くパワフルなパウンド攻撃。田村は防戦一方に。通常の寝技15秒ではなく30秒の特別ルールは、寝技でのサブミッションが期待される田村のための特別ルールでもあるのだが、むしろそれが裏目に出る展開に。パウンドされ、田村はゴーシュの腕を取ることも足を取ることもできない。スタンドの打撃でもゴーシュのパンチが当たっていく。一方のゴーシュの顔には全然ダメージが見られない。ゴーシュはグラウンドでギロチンチョークを狙うも、田村は首を取らせず、サイドポジションからマウントを奪取。でもここで2Rは終了。
 
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3R。まず同体転落。でも体が下になったのは田村の方で、田村の左半身が場外に叩きつけられる形になった。マットが敷いてあるとはいえ、ダメージがないはずがない。懸命にスタンドで立ち向かう田村だが、パンチの連打を浴び、苦しい展開に。巧みに場外に振り落とそうとしたが、これは足からの同体転落になってしまった。続いてゴーシュは抱え上げると、場外マットに田村の背中を叩きつけるようにして、勢いよく同体転落。その際、田村は頭も打ち、溝の端に設置された照明器具に頭をぶつけて裂傷を負ったが、1分のインターバルを経て再開することに。その時、「行きます!!」と言って闘技場に上がって来た田村は、鬼のような形相をしていた。田村がこんな表情をみせるとは…。これこそが田村のプロ根性だ。もはや勝ち目は薄く、ダメージも負っているのに、それでも田村は闘技場に戻って来た。残りは30秒。田村は左ミドル、左ロー、左ミドル、左ミドルの4連打。でも攻勢はここまで。組みつかれると投げを狙ったが後方に倒され、試合は終了。田村は相手と右手で握手すると、両ヒザから崩れ、へたりこんでしまった。判定結果は3-0。文句なしのゴーシュの圧勝だった。田村を応援していた日本のファンにとってはハッピーエンドにならなかったが、ゴーシュには大きな拍手が送られた。
 
ゴーシュに聞くと、クラヴマガは護身術で、リアルライフの中でどう闘えばいいか学ぶことになるので、リングの中で闘うものとはまた別のものになる。なので、護身術どまりの生徒もいれば、彼のようにボクシングや柔術を学びコンプリートな選手を目指す人もいるのだそうだ。また、クラヴマガは技と言うより戦術を考えることが中心で、相手の試合のペースに乗らないのが重要だとのこと。だから田村が得意だと思われたミドルキックを打たせない間合いを考え、田村の間合いにならないよう、離れて闘うよう心掛けたという。そのプラン通りに試合が進んだということだろう。
 
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大会を総括すれば、色々あり、反則も一部の試合では横行してしまったが、3度目を迎えて闘技場も整備され、ずいぶん巌流島と言う大会自体は整備されてきたように思う。個性的な選手が台頭してきて、ユニークな大会に育ってきた。最初の大会を見たときは、何だかなあ、どうなるのかなあと不安が募ったものだったが、主催者サイドに言いたいことは、ここまで来たのだから、絶対なんとか軌道に乗せて、巌流島というブランドを確立させてほしいということ。正直に言えば、初めてそう思えた。前回大会までは小さすぎた可能性が、今大会で広がったように思う。終わって色々語りたくなる大会だったということは、この大会が面白かったということだろう。ハチャメチャだから面白いのだ! 選手が個性的だから面白い! 次回大会をどこでどのように開催するかは検討中だそうだが、7月頃に開催予定とのこと。期待して待ってるぞ!
 
                            (文/安西伸一)
 
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