文◎室井弘行(『巌流島』制作ディレクター)
「公開検証1」「道場マッチ1」と制作業務をやらせて頂いております、室井と申します。今回、谷川さんから「闘技場作りの難しさについてブログを書いて欲しい」とおっしゃって頂き、僭越ながらここに至るまでの苦労話や、今後の理想、なぜ実現できないか? を書かせて頂きます。
まず、理想の「闘技場」について。
「ファンの皆さんの議論から出てきた結果と実行委員会で議論したことを組み合わせて、実際に理想の闘技場を作り上げること」。
これが、理想です。しかし、ものすごい単純なことなのに、実現できない難しさがそこにはあるのです。
その難しさについて書かせていただきます。
闘技場は、観客も楽しめる範囲で、選手の安全を担保しなくてはならりません。特に、ロープもケージもない巌流島の闘技場は、場外の危険度が高いのは、言うまでもありません。競技として「落とす」ことが、大きな特徴になっていますが、その「落ちる」危険性を迫力を損なわず、どこまで安全にできるか? その落とし所がとても難しいのです。
場外では、ディファからラジアントホールの大会で、極端なマットの変更をしています。ディファ有明での「公開検証1」では、かなりフカフカのマットを敷き詰めました。しかし、ラジアントホールでの「道場マッチ1」では薄めのマットを敷くことにしました。
皆さんはどちらが、良かったでしょうか?
「公開検証」と「道場マッチ」ではルールも闘技場の仕様も変わっていたので、一概には言えないと思います。しかし、個人的には「道場マッチ」の薄いマットの方が、良いかと思っています。
というのも、「公開検証」のフカフカ過ぎるマットでは、あまりに選手が安心しすぎて「同体」「場外へ落とす」こと、「落ちる」ことへの恐怖感を感じていませんでした。しかし「道場マッチ」では、落ちることへの恐怖感からか、闘技場内での激しい攻防が繰り広げられました。この点から、僕は「道場マッチ」の薄いマットの方がより良いと思っていますが、いかがでしょう?
これからも場外マットの厚み・固さへの追求はしなくてはなりません。隙間が空いていることへの苦言があることも承知しています。7月の両国大会では、隙間のない闘技場にあったマットを作らなければ!と考えており、素材の確認等を進めているところです。
次に、闘技場の形について・・・
ディファ有明大会では四角の外枠に円という闘技場でした。「道場マッチ」では、八角形の中に円という闘技場でした。
もちろん、最終的には円の闘技場が理想です。
ただ、設計を御願いしていた段階で、円だと闘技場全体にゆがみが発生しやすいということが分かってきたのです。一つのリングを長く使い続けることは、角の闘技場より、円の闘技場のほうが難しいのです。そして円の方が、加工も角のモノより時間とお金が掛かってしまう。この点でディファ有明・ラジアントホール大会でも、円形の闘技場が実現していないのです。
求む!スポンサー様!
そして、「議論」でも上がっている場外に「水を張る」ということについても触れたいと思います。これが、出来れば「転落」の時に一目で分かる。大衆ウケもイイ!でしょう。
しかし、冒頭でも書かせて頂いたように、選手の安全を観客も楽しめる範囲で担保しなくてはならないと考えている以上、現状での実現はかなり難しいと思っています。
難しいと思う点は何点もあります。
1)水は重い。水圧はすごい!
2)血液の感染病
3)全体予算の圧迫
4)会場選定の難しさ
大きくこの4つが障壁になります。
1)水は重い。水圧はすごい!
蛇口をひねればジャバジャバ水は出てきます。このときに重さを感じる人はいないでしょう。しかし現在、巌流島の闘技場周りには、闘技場の端から3メートルほどの保安距離を取っています。
仮にざっくり計算すると・・・
(16m×16m×0.3m)-(10m×10m×0,3m)=46.8立米の水が闘技場周りに入ることになります。
1立米の水の重さは1tなので、なんと46.8tの水を漏れ出さないような水槽を作らなければなりません。これを、仮設構造物たる闘技場とその外周に壁を作るとなると、現状では正直、現実的な金額でできないのです。ここを追求するのも、さらに頑張りたいとは思っていますが………。
2)血液の感染病・経口感染
「水に落ちる!」という話を聞いたときに実は最初に思ったリスクです。選手は、出場に際し主催者の求める疾病について事前に検査を受けてもらっています。現状では、これは血液感染だけになっています。
しかし、水に落ちる以上、経口感染と呼ばれるものも加味しなくてはなりません。経口感染の代表はO157のことを皆さんご存じかと思いますが、他にも色んなものがあります。これを全て、防止できる水浄化フィルターがあれば良いのかもしれません。しかし、世界各国から選手が来て闘う以上、本人が気づいていないまま、感染してしまうこともあるかもしれません。そんなリスクを、命をかけて闘う選手に課すことは出来ない。そう考えています。
3)全体予算の圧迫
1)でも記載したとおり、ものすごい水を使うことで掛かる費用は莫大です。そして、その水を受け止める水槽を作るための費用も現実的ではありません。2)で記載したように感染症の事前検査費用の高額化(単純に検査する疾病が増えること)。万が一、水が漏れ出した際のリスク回避のための費用等、本当にお金がかかってしまうのです。
4)会場選定の難しさ
日本全国には色々な会場があります。しかし、これだけの重さの闘技場に耐えられない会場の方が多いのです。このことは、ファンの皆さんに『巌流島』という格闘技を届ける上で、ものすごいリスクとなります。実は、会場ってそんな簡単に予約が取れないのです。そんな中、選択肢を狭めてしまうのは得策ではないと思います。
この4点から場外の水は難しいのです。
では、闘技場の高さはどの高さが一番見やすいのか。
これは、ファンの皆さんからの意見を参考にしたいと思う部分です。皆さんが見慣れた通常のリングは、おおよそ90センチの高さがあります。『巌流島』のディファ有明大会では、およそ70センチ。ラジアントホールの「道場マッチ」ではおよそ50センチでした。
「どの席から見たときは見やすかった!」「見にくかった!」等のご意見は、非常に参考になりますので、ぜひお伺いしたいところです。
個人的には、マットを柔らかくするなど安全性を担保した上で、高さを3メートルの闘技場を作り、「落ちたら負け」の一発勝負も有りな気がしていますが、いかがでしょうか?
広さについては選手からのフィードバックやファンの皆さんの見やすさなど、ご意見を伺っていきたいと思っています。正直、格闘技経験者ではないので、「どの広さが良いのか?」は、いろいろな意見が必要だと考えています。
さて、長々と色々書かせて頂きましたが、普段はただの裏方ですので、どうかご容赦ください。皆さんの力で「巌流島」を、本物の「巌流島」で開催できればっ!と、常日頃思っています。
ぜひ皆さんで盛り上げて頂ければ、裏方としても嬉しい限りです。
「公開検証1」「道場マッチ1」と制作業務をやらせて頂いております、室井と申します。今回、谷川さんから「闘技場作りの難しさについてブログを書いて欲しい」とおっしゃって頂き、僭越ながらここに至るまでの苦労話や、今後の理想、なぜ実現できないか? を書かせて頂きます。
まず、理想の「闘技場」について。
「ファンの皆さんの議論から出てきた結果と実行委員会で議論したことを組み合わせて、実際に理想の闘技場を作り上げること」。
これが、理想です。しかし、ものすごい単純なことなのに、実現できない難しさがそこにはあるのです。
その難しさについて書かせていただきます。
闘技場は、観客も楽しめる範囲で、選手の安全を担保しなくてはならりません。特に、ロープもケージもない巌流島の闘技場は、場外の危険度が高いのは、言うまでもありません。競技として「落とす」ことが、大きな特徴になっていますが、その「落ちる」危険性を迫力を損なわず、どこまで安全にできるか? その落とし所がとても難しいのです。
場外では、ディファからラジアントホールの大会で、極端なマットの変更をしています。ディファ有明での「公開検証1」では、かなりフカフカのマットを敷き詰めました。しかし、ラジアントホールでの「道場マッチ1」では薄めのマットを敷くことにしました。
皆さんはどちらが、良かったでしょうか?
「公開検証」と「道場マッチ」ではルールも闘技場の仕様も変わっていたので、一概には言えないと思います。しかし、個人的には「道場マッチ」の薄いマットの方が、良いかと思っています。
というのも、「公開検証」のフカフカ過ぎるマットでは、あまりに選手が安心しすぎて「同体」「場外へ落とす」こと、「落ちる」ことへの恐怖感を感じていませんでした。しかし「道場マッチ」では、落ちることへの恐怖感からか、闘技場内での激しい攻防が繰り広げられました。この点から、僕は「道場マッチ」の薄いマットの方がより良いと思っていますが、いかがでしょう?
これからも場外マットの厚み・固さへの追求はしなくてはなりません。隙間が空いていることへの苦言があることも承知しています。7月の両国大会では、隙間のない闘技場にあったマットを作らなければ!と考えており、素材の確認等を進めているところです。
次に、闘技場の形について・・・
ディファ有明大会では四角の外枠に円という闘技場でした。「道場マッチ」では、八角形の中に円という闘技場でした。
もちろん、最終的には円の闘技場が理想です。
ただ、設計を御願いしていた段階で、円だと闘技場全体にゆがみが発生しやすいということが分かってきたのです。一つのリングを長く使い続けることは、角の闘技場より、円の闘技場のほうが難しいのです。そして円の方が、加工も角のモノより時間とお金が掛かってしまう。この点でディファ有明・ラジアントホール大会でも、円形の闘技場が実現していないのです。
求む!スポンサー様!
そして、「議論」でも上がっている場外に「水を張る」ということについても触れたいと思います。これが、出来れば「転落」の時に一目で分かる。大衆ウケもイイ!でしょう。
しかし、冒頭でも書かせて頂いたように、選手の安全を観客も楽しめる範囲で担保しなくてはならないと考えている以上、現状での実現はかなり難しいと思っています。
難しいと思う点は何点もあります。
1)水は重い。水圧はすごい!
2)血液の感染病
3)全体予算の圧迫
4)会場選定の難しさ
大きくこの4つが障壁になります。
1)水は重い。水圧はすごい!
蛇口をひねればジャバジャバ水は出てきます。このときに重さを感じる人はいないでしょう。しかし現在、巌流島の闘技場周りには、闘技場の端から3メートルほどの保安距離を取っています。
仮にざっくり計算すると・・・
(16m×16m×0.3m)-(10m×10m×0,3m)=46.8立米の水が闘技場周りに入ることになります。
1立米の水の重さは1tなので、なんと46.8tの水を漏れ出さないような水槽を作らなければなりません。これを、仮設構造物たる闘技場とその外周に壁を作るとなると、現状では正直、現実的な金額でできないのです。ここを追求するのも、さらに頑張りたいとは思っていますが………。
2)血液の感染病・経口感染
「水に落ちる!」という話を聞いたときに実は最初に思ったリスクです。選手は、出場に際し主催者の求める疾病について事前に検査を受けてもらっています。現状では、これは血液感染だけになっています。
しかし、水に落ちる以上、経口感染と呼ばれるものも加味しなくてはなりません。経口感染の代表はO157のことを皆さんご存じかと思いますが、他にも色んなものがあります。これを全て、防止できる水浄化フィルターがあれば良いのかもしれません。しかし、世界各国から選手が来て闘う以上、本人が気づいていないまま、感染してしまうこともあるかもしれません。そんなリスクを、命をかけて闘う選手に課すことは出来ない。そう考えています。
3)全体予算の圧迫
1)でも記載したとおり、ものすごい水を使うことで掛かる費用は莫大です。そして、その水を受け止める水槽を作るための費用も現実的ではありません。2)で記載したように感染症の事前検査費用の高額化(単純に検査する疾病が増えること)。万が一、水が漏れ出した際のリスク回避のための費用等、本当にお金がかかってしまうのです。
4)会場選定の難しさ
日本全国には色々な会場があります。しかし、これだけの重さの闘技場に耐えられない会場の方が多いのです。このことは、ファンの皆さんに『巌流島』という格闘技を届ける上で、ものすごいリスクとなります。実は、会場ってそんな簡単に予約が取れないのです。そんな中、選択肢を狭めてしまうのは得策ではないと思います。
この4点から場外の水は難しいのです。
では、闘技場の高さはどの高さが一番見やすいのか。
これは、ファンの皆さんからの意見を参考にしたいと思う部分です。皆さんが見慣れた通常のリングは、おおよそ90センチの高さがあります。『巌流島』のディファ有明大会では、およそ70センチ。ラジアントホールの「道場マッチ」ではおよそ50センチでした。
「どの席から見たときは見やすかった!」「見にくかった!」等のご意見は、非常に参考になりますので、ぜひお伺いしたいところです。
個人的には、マットを柔らかくするなど安全性を担保した上で、高さを3メートルの闘技場を作り、「落ちたら負け」の一発勝負も有りな気がしていますが、いかがでしょうか?
広さについては選手からのフィードバックやファンの皆さんの見やすさなど、ご意見を伺っていきたいと思っています。正直、格闘技経験者ではないので、「どの広さが良いのか?」は、いろいろな意見が必要だと考えています。
さて、長々と色々書かせて頂きましたが、普段はただの裏方ですので、どうかご容赦ください。皆さんの力で「巌流島」を、本物の「巌流島」で開催できればっ!と、常日頃思っています。
ぜひ皆さんで盛り上げて頂ければ、裏方としても嬉しい限りです。
コメント
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(ID:49001733)
リングの高さはある程度高い方が観やすいし迫力も増すのではないでしょうか?
高くなった分選手のリスクが上がると思いますが、行きなり落ちる様な形でなく、転がり落ちる様なピラミッド形等良いのでは?と思います。
ただ傾斜がついた物で無く、段々になったピラミッド形。