その日も、朝から静かな一日だった。
午後の陽光が小さな窓を抜け、傷んだ木床を容赦なく炙る、静寂に包まれた兵舎。 歩を進めるたびガチャガチャと鎧が擦れ、頼りなさげに廊下が軋むその先に、古ぼけながらも見慣れたドアが私を迎えてくれた。いつものように手甲に魔力を籠め、丸いドアノブをゆっくりと捻る。なんの抵抗もないままに限界まで回るそれは、留守中、この部屋に侵入を試みた不届き者が存在しないことを告げていた。
その身を室内へと預け入れると同時に、肺に溜まった陰鬱とした空気をふぅっと吐きだし、ドアを閉める音でそれをかき消す。さきほどまでの鉄と汗にまみれた臭気は薄れ、薬草の類を乾燥させた香気が漂うこの部屋は、グリフォンが軽く寝がえりをうてる程度には広い。窓から入り込んだ陽射しの向こうには寝室へと続く扉が見え、その手前を、よく磨きあげられた木製の執務机が遮っている。
古書や魔法書が押し込められた書棚、薬液瓶が乱雑に並ぶ作業台などを横目に、それまで左手を占有していた書状の束を机上に叩きつけると、幾度目となるか分からない溜息がまたこぼれた。
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コメント
初投稿お疲れ様でっす。
執務室への侵入者警戒を要するようなお仕事。
不落さん大分ストレスフルなご様子(´・ω・)
ch会員分での描写、こういうの好きです(ι ゜ω゜)...一応バレ防止でだいぶぼかした表現になりますが。
続きはまったりお待ちします。たのしーみ。
ありがとうございますありがとうございます
ひどい顔をした不落さん…捗ります!!
静かな日がどうなるのか、次も楽しみです!
お疲れ様です。
続きが楽しみです!
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(ID:10449601)
不落さんの日常(任務)だぁー!
タイトル通りの静けさとは無縁になりそうな雰囲気に、次の投稿が待ち望まれますね。