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岡田斗司夫のニコ生では言えない話
 岡田斗司夫の解決!ズバっと 2015/08/10
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おはよう! 岡田斗司夫です。
メルマガ読者の方から、多数質問をいただいています。
かたっぱしから答えてみましょう。

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「小林よしのり氏の“道徳心が痛む”発言に違和感」
こけしさん/24歳

 小林よしのり氏が投票権目的で大量に購入したAKB48のCDを廃棄するのも、売却するのも「道徳心が痛む」と発言していますが、以前 岡田さんは小林よしのり氏と道徳について語っていますが、私はイマイチ小林さんの道徳心にピンときません。
 岡田さんはどう思われますか?


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 ビジネス的に考えると、AKBグループの「CDに投票権をつけて大量に買ってもらって、その売り上げによって、順位決める」という戦略は正しいんだよね。
 ただ、「ビジネス的に考える」と「道徳心的に考える」は別の問題だよな。
 

■ビジネスとして正しくても、ビジネス道徳としては疑問

 「単に投票権だけ売ればどうか?」って話もあるけど、それはどうしようもない。
 投票権だけを売って、総選挙をやっても、それはただ単にAKB内のニュースでしかない。
 投票券をCDで売る事によって、オリコンという他の音楽との順位付けにおいて勝った負けたができるんだ。
 つまり、CDじゃなくて投票権を売ってたら、それはファンの間の話でしかない。
 でもCDを売る事によって、社会に対しての参加が出てくるわけだ。

 なのでビジネス的に正しい。
 ただ、元々CDの売り上げはよくよく考えてみたら、「何人がこれを欲しがったか」「何人がお金を出して買ったか」なんだ。CDの売り上げの本質は、"枚"じゃなくて、"人"なんだよ。
 「何枚売れたか」じゃなくて、「何人が買ったか」が本質。
 その為のオリコン順位でもあるんだよね。

 「視聴率は猫が見ても1%」と言われるけど、それは本質じゃない。
 視聴率というコンセプト・概念・目指すべき理念は、「何人が見てるのかを調査したい」という事であるはずなんだ。

 同様にCDに投票権をつけて売って、1人100枚とか1,000枚買って投票する時点で、オリコンの順位とか音楽のチャートを、言い方悪いけども足蹴にしてるのは否定できない。
 ビジネスとして正しいんだけど、「ビジネス道徳として正しいのか」はちょっと疑問になってきてるんだよな。


■捨てられる前提でCDを作るクリエイターはいない

 ただ、売れないアイドルグループみたいな人たちがいる。
 秋葉原に来たらいつでも歌って踊ってる人たちが成り上がってる時点で、「イレギュラーな方法を取るのはそんなに悪い事じゃない」と思っている。
 これがドンドン一般的になって、CDの売り上げに対して、「何人が聞いてるのか?」と「何枚が売れたか?」が、関係してこなくなったらどうなるのか。

 本来ならここで、「AKB48はそういう商売やめます」みたいな話になっていってもいい。
 でも逆に言えば、「こういう商売をやらないと音楽業界が支えられない」という、別のビジネス道徳も出てきちゃうわけだよね(笑)

 小林さんがここで「道徳心が痛む」と言ってるのは何か。
 小林さんも本を売って商売してる人だから、商売の理屈はよく分かっている。
 この仕組みを分っていながら、「CDを買って廃棄する、売却する」行為に心が痛む。
 アイドルを支えたいなら、その子に対して10万とか20万突っ込む行為は構わない。
 でも本来は、1枚1枚丁寧に聴いて欲しい。

 だって、「ファンが1,000枚も2,000枚も買うから、その後捨てるもんだ!」と思って、歌ったり踊ったり、作詞したり作曲したり、録音してる技術者なんて絶対に1人もいないんだよ。
 そんな気持ちでものは作れない。
 それは小林さんもマンガを描く人間として、クリエイターとして分かると思うんだよ。
 捨てられる為に作ってるワケじゃないよと。

 「捨てられる運命にあるのはやるせない」という気持ちを、AKBを批判しないように言ったら、「道徳心が痛む」って言葉になっちゃうんだろうと思うよ(笑)

(次号へ続く)


【まとめ】
 小林さんは商売の理屈を分かりつつも、クリエイターとしての気持ちも分かります。
 その気持ちをAKBグループを批判しないような言い方でいうと「道徳心が痛む」になると思います。