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岡田斗司夫のニコ生では言えない話
岡田斗司夫の解決!ズバっと 2015/01/03
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おはよう! 岡田斗司夫です。
今日も『解決!ズバッと』をお届けします。
今回は『「お金」って何だろう?』 からです。
僕が質問し、山形浩生先生に答えてもらった対談を、Q&A形式で、分載しながらお届けします。
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岡田斗司夫さん/56歳/作家/「日銀の存在は憲法違反?」
【質問】
岡田 今の話でちょっと気になったのが、金融政策を実行するのが日銀だということです。どうして国の政策を実行するのに、日銀なんて組織が必要なんでしょう?日本政府の「銀行省」ではダメなんですか?
通貨は国家の顔なのに、どうしてそれを発行するために別会社を立てるようなことをするんでしょう?「天皇陛下が発行しています」でいいじゃないですか?こうなっているのは、ユダヤの陰謀か何かのせいなんでしょうか?(笑)
【山形浩生先生の回答】
山形 昔はけっこうこれ(ジンバブエの100兆ドル札を見せながら)が起きたので、そうなると、国家の面目が丸つぶれになるからです。それを避けるため、日本銀行という、ある程度の独立性を持った組織を立てているんですよ。
岡田 そうなんだ。
山形 完全に政府のいいなりだと、政治家が好き放題できてしまう点があります。「道路を造ろう、あれもこれも作ろう。お金がない? それなら、赤字国債を ガンガン発行しろ」ということになってしまうんですね。日銀に独立性がなかったら、政府は好きなだけ日銀にお金を刷らせて、それで赤字国債を買わせるとい うことができてしまいます。
政府が赤字国債を発行して、日銀がお金を刷ってそれを買い、政府はそうやって得たお金で公共事業を行う……。それをやり過ぎると、誰もお金を信用しなく なる。「なんだ、お金って好きなように刷っているだけなんだ」「ただの紙じゃんか」とみんなが思うようになると、お金の価値を裏付けるものがなくなってし まうんですよ。
岡田 日本という国家は、立法、行政、司法の三権分立なんでしょう?日銀は四権目ということになってしまいませんか?
山形 持っている力からいえば、そのくらいと言っていいかもしれない。実際そうなっていて、日銀の存在はある意味、超国家的です。
岡田 日銀は日本国に属していないんでしょうか?
山形 もちろん属しています。日銀に限らず、中央銀行は政府とは独立していますが、政府機関でもあるんですよ。英国だと、中央銀行はクワンゴ (quango:quasi-autonomous nongovernmental organisation)、つまり準政府組織なんて呼ばれます。こうすることで、政府が赤字国債をバンバン発行して「お前ら、国債を買い取れ」と迫って きても、中央銀行は「俺らはそんなもの買わないよ。お前ら、ちゃんと財政を引き締めろ」と言い返せるんです。
岡田 だけど、日本は主権在民で、政府は国民の代理人ですよね。国民の代表者たる政府の命令を聞かない通貨の発行所があっては、国民主権の国家と言えなくなってしまうのではないですか? 日銀の存在は、憲法違反ということになりはしませんか?
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国民の代表者である政府の言うことを聞かないなら、日銀は憲法違反じゃないですか?
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山形 でも、裁判官って国民が直接選んでいないし、政府のいいなりでもありませんよね。とはいえ、独立機関ではあってもまったく好き勝手にされても困るの で、日本銀行法を改正しろと主張している人たちがいます。僕も改正支持派です。もうちょっと日銀が国民の言うことを聞くようになれ、ということですね。
歴史的に見ると、中央銀行はインフレを抑える側でした。中央銀行が政府の言うことばかり聞いているとインフレがひどくなって、こんな100兆ドル札を出す羽目になりますから、ある程度の独立性を持たせようとしてきたのが、これまでの経緯です。
日本では日銀の独立性が比較的低く、それが政府の暴走を招いて、年代のバブルにつながったとも言われています。この反省から、1997年に日銀法(日本 銀行法)が改正されて、日銀の独立性は大幅に高まりました。ところが、法改正によって日銀の独立性が高くなり過ぎてしまったんですね。日本銀行というの は、インフレを抑える上では非常に優秀だったのですが、その優秀さが裏目に出て、デフレになってしまいました。
岡田 だいたい、政府の判断ミスで起こる悲劇ということで言えば、戦争だって何だってそうじゃないですか。政府の判断ミスを防ぐためだからといって、自衛 隊とは別の組織を作ったりはしないわけで。だけど、日銀は政府とは別の立場から経済政策を判断して、暴走を防ぐための組織ということなんですね。そうやっ て、国民主権国家の建前をちょっとずらすという憲法違反に近いことを、ほかの国でもやっているのは面白い。
山形 そういう面はありますね。このあたりの議論は込み入っていて、かなり面倒くさいことになっています。国民も、ひいては政府も、放っておくとどうして も「お金をバンバン刷って好き勝手にやりたい」と自分にとって楽な方向に動いてしまいますから、それを抑制する組織が必要だという考え方はもっともではあ ります。
岡田 その思想で統一するのであれば、普通選挙に基づいた国民主権国家をやめればいいんじゃないですか。数パーセントのエリートが経済政策も含めて国家を 運営して、庶民は何にも考えなくてもいいというのであれば、政府から独立した組織が存在してもいいでしょうけど。今の状態は、建前と本音が変な風に混ざっ てますね。
山形 それを言ったら、最高裁判所にも同じ問題があることになりますよ。国民が最高裁判事を選んでいるわけではないのに、最高裁で憲法違反かどうかの判断 をするわけですから。国民の意思は重要ですが、あらかじめ決めておいたルールに基づいて判断する存在は必要なんでしょう。
経済に関しても、「これくらいの経済成長は維持したいよね」というコンセンサスに基づいて政策を進めているところに、国民が「もっと経済成長を!もっと国民にお金を!」と言い出したら、誰かがそれを抑えないとどこかに無理が起こってしまう。
アメリカの中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB: Federal Reserve Board)には、「物価が上がり過ぎないようにする」「インフレが進み過ぎないようにする」「失業率を抑える」というノルマがあり、最近は「インフレ率 を抑え過ぎてもいけない」ということが付け加えられました。
一方、日銀にはこういうノルマがないことこそが問題なのかもしれません。「物価を安定させる」ことが一応ノルマにはなっていますが、安定というのはどういうことか明確になっていませんでした。
「物価が上がるのはダメだけど、下がるのはいいんでしょ?」ということで、日銀があれこれ動いた結果、デフレになったという面はありますね。だから日銀 法改正派は、国民に対する日銀の義務を強めて、失業率が高い状態が続いたら日銀総裁のクビをすげ替えられるようにしたほうがいいと主張しているんです。
岡田 なるほどなあ。
山形 日銀に課せられるノルマは緩くて曖昧。この義務を強めるべきというのが、日銀法改正派の主張です。
【まとめ】
日銀が政府のいいなりになるとインフレがひどくなる。日銀の独立性が必要。バブルの反省から日銀法が改正され、日銀の独立性が高まったが、高まり過ぎてデフレになった。
【質問】
岡田 今の話でちょっと気になったのが、金融政策を実行するのが日銀だということです。どうして国の政策を実行するのに、日銀なんて組織が必要なんでしょう?日本政府の「銀行省」ではダメなんですか?
通貨は国家の顔なのに、どうしてそれを発行するために別会社を立てるようなことをするんでしょう?「天皇陛下が発行しています」でいいじゃないですか?こうなっているのは、ユダヤの陰謀か何かのせいなんでしょうか?(笑)
【山形浩生先生の回答】
山形 昔はけっこうこれ(ジンバブエの100兆ドル札を見せながら)が起きたので、そうなると、国家の面目が丸つぶれになるからです。それを避けるため、日本銀行という、ある程度の独立性を持った組織を立てているんですよ。
岡田 そうなんだ。
山形 完全に政府のいいなりだと、政治家が好き放題できてしまう点があります。「道路を造ろう、あれもこれも作ろう。お金がない? それなら、赤字国債を ガンガン発行しろ」ということになってしまうんですね。日銀に独立性がなかったら、政府は好きなだけ日銀にお金を刷らせて、それで赤字国債を買わせるとい うことができてしまいます。
政府が赤字国債を発行して、日銀がお金を刷ってそれを買い、政府はそうやって得たお金で公共事業を行う……。それをやり過ぎると、誰もお金を信用しなく なる。「なんだ、お金って好きなように刷っているだけなんだ」「ただの紙じゃんか」とみんなが思うようになると、お金の価値を裏付けるものがなくなってし まうんですよ。
岡田 日本という国家は、立法、行政、司法の三権分立なんでしょう?日銀は四権目ということになってしまいませんか?
山形 持っている力からいえば、そのくらいと言っていいかもしれない。実際そうなっていて、日銀の存在はある意味、超国家的です。
岡田 日銀は日本国に属していないんでしょうか?
山形 もちろん属しています。日銀に限らず、中央銀行は政府とは独立していますが、政府機関でもあるんですよ。英国だと、中央銀行はクワンゴ (quango:quasi-autonomous nongovernmental organisation)、つまり準政府組織なんて呼ばれます。こうすることで、政府が赤字国債をバンバン発行して「お前ら、国債を買い取れ」と迫って きても、中央銀行は「俺らはそんなもの買わないよ。お前ら、ちゃんと財政を引き締めろ」と言い返せるんです。
岡田 だけど、日本は主権在民で、政府は国民の代理人ですよね。国民の代表者たる政府の命令を聞かない通貨の発行所があっては、国民主権の国家と言えなくなってしまうのではないですか? 日銀の存在は、憲法違反ということになりはしませんか?
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国民の代表者である政府の言うことを聞かないなら、日銀は憲法違反じゃないですか?
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山形 でも、裁判官って国民が直接選んでいないし、政府のいいなりでもありませんよね。とはいえ、独立機関ではあってもまったく好き勝手にされても困るの で、日本銀行法を改正しろと主張している人たちがいます。僕も改正支持派です。もうちょっと日銀が国民の言うことを聞くようになれ、ということですね。
歴史的に見ると、中央銀行はインフレを抑える側でした。中央銀行が政府の言うことばかり聞いているとインフレがひどくなって、こんな100兆ドル札を出す羽目になりますから、ある程度の独立性を持たせようとしてきたのが、これまでの経緯です。
日本では日銀の独立性が比較的低く、それが政府の暴走を招いて、年代のバブルにつながったとも言われています。この反省から、1997年に日銀法(日本 銀行法)が改正されて、日銀の独立性は大幅に高まりました。ところが、法改正によって日銀の独立性が高くなり過ぎてしまったんですね。日本銀行というの は、インフレを抑える上では非常に優秀だったのですが、その優秀さが裏目に出て、デフレになってしまいました。
岡田 だいたい、政府の判断ミスで起こる悲劇ということで言えば、戦争だって何だってそうじゃないですか。政府の判断ミスを防ぐためだからといって、自衛 隊とは別の組織を作ったりはしないわけで。だけど、日銀は政府とは別の立場から経済政策を判断して、暴走を防ぐための組織ということなんですね。そうやっ て、国民主権国家の建前をちょっとずらすという憲法違反に近いことを、ほかの国でもやっているのは面白い。
山形 そういう面はありますね。このあたりの議論は込み入っていて、かなり面倒くさいことになっています。国民も、ひいては政府も、放っておくとどうして も「お金をバンバン刷って好き勝手にやりたい」と自分にとって楽な方向に動いてしまいますから、それを抑制する組織が必要だという考え方はもっともではあ ります。
岡田 その思想で統一するのであれば、普通選挙に基づいた国民主権国家をやめればいいんじゃないですか。数パーセントのエリートが経済政策も含めて国家を 運営して、庶民は何にも考えなくてもいいというのであれば、政府から独立した組織が存在してもいいでしょうけど。今の状態は、建前と本音が変な風に混ざっ てますね。
山形 それを言ったら、最高裁判所にも同じ問題があることになりますよ。国民が最高裁判事を選んでいるわけではないのに、最高裁で憲法違反かどうかの判断 をするわけですから。国民の意思は重要ですが、あらかじめ決めておいたルールに基づいて判断する存在は必要なんでしょう。
経済に関しても、「これくらいの経済成長は維持したいよね」というコンセンサスに基づいて政策を進めているところに、国民が「もっと経済成長を!もっと国民にお金を!」と言い出したら、誰かがそれを抑えないとどこかに無理が起こってしまう。
アメリカの中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB: Federal Reserve Board)には、「物価が上がり過ぎないようにする」「インフレが進み過ぎないようにする」「失業率を抑える」というノルマがあり、最近は「インフレ率 を抑え過ぎてもいけない」ということが付け加えられました。
一方、日銀にはこういうノルマがないことこそが問題なのかもしれません。「物価を安定させる」ことが一応ノルマにはなっていますが、安定というのはどういうことか明確になっていませんでした。
「物価が上がるのはダメだけど、下がるのはいいんでしょ?」ということで、日銀があれこれ動いた結果、デフレになったという面はありますね。だから日銀 法改正派は、国民に対する日銀の義務を強めて、失業率が高い状態が続いたら日銀総裁のクビをすげ替えられるようにしたほうがいいと主張しているんです。
岡田 なるほどなあ。
山形 日銀に課せられるノルマは緩くて曖昧。この義務を強めるべきというのが、日銀法改正派の主張です。
【まとめ】
日銀が政府のいいなりになるとインフレがひどくなる。日銀の独立性が必要。バブルの反省から日銀法が改正され、日銀の独立性が高まったが、高まり過ぎてデフレになった。
【最新著作】
山形浩生先生との対談本『お金って、何だろう? ぼくらはいつまで「円」を使い続けるのか?』は、僕が山形先生にどんどん質問して教えを乞う、という形式で進行しています。
このブロマガでは、その第二章を読みやすいサイズに分割して、順次お届けします。「経済の根本の根本」を、常識や思い込みにとらわれず、とことん質問し、かみくだいて、身もふたもなく解説してもらった第二章。
ぜひ、お気軽にお楽しみ下さい。
じゃあ、また明日。バイバイ!
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