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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「CGで巨大セットが不要に!『スター・ウォーズ』エピソード1〜3が映画を変えた」

2020/01/01 07:00 投稿

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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2020/01/01

 あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 今日は、2019/12/15配信の岡田斗司夫ゼミ「『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』特集」からハイライトをお届けします。


 じゃあ、初めての『スター・ウォーズ』その2に行きましょう。
 さっき話したように、1977年から83年までの3部作の本家スター・ウォーズは「ルーク・スカイウォーカーという田舎の星に住む普通の兄ちゃんが、ジェダイの騎士になって銀河帝国を倒す」という、シンプルな大冒険のお話でした。
 まあ、「落ち込んだりしたこともあったけど、私のフォースは元気です」みたいな感じで、紆余曲折ありながらも、ストレートな良い話なんですよ。
 それが終わった後、「元祖スターウォーズというのを作る!」と、ジョージ・ルーカスがいきなり言い出しました。これが、1999年から2005年です。
 これは、ルークの父親の話なんですね。ルークの父親のアナキン・スカイウォーカーという、もう完全に子供です。その子が『クレヨンしんちゃん』くらいの歳から、青年に成長するまでの話ですね。
 ところが、「その成長の途中で、悪の手先に転がり落ちる」という悲劇を描いたんですよ。
 『スター・ウォーズ』が、ひたすら「正義はやっぱり勝つんだ! 正しいものが勝つんだ!」という盛り上がりなのに対して、この元祖スター・ウォーズというのは、ツラくて悲しい話を描かなきゃいけなかったんですね。
 本当は、ジョージ・ルーカスとしては、もともとシリアルシリーズという、「1本の映画を30分で作って、毎週、映画館で新作を掛ける」という、今で言うNetflixとか、ああいうテレビシリーズみたいなものとして作りたかったんですよ。
 それだったら、第1話から少々悲しい話で始まっても、4週目、5週目でバーッと盛り上がったら、ちゃんとお客さんもついて来てくれたんですけど。元祖スター・ウォーズシリーズって、悲しい話を2時間映画で3本作ったわけです。となると、かなりハンデがあるわけですよね。

 で、今やっている、続スター・ウォーズというのは、その先の話。「本家スター・ウォーズの後の時代に、正体不明のレイっていう女の子の過去探しに、アナキンの孫のカイロ・レンというヤツが色々と絡んでくる」という話なんですけど。

・・・

 もともと、作者のジョージ・ルーカスは、本家スターウォーズで止める予定だったんです。理由は「ここから先のイメージを本当に映像化したら、予算は無限にかかってしまうから」。
 ところが、スティーブン・スピルバーグという、ジョージ・ルーカスの友達……大学時代に自主映画を作ってた頃から、「こいつ、メチャクチャすごいな」という感じで友達になってたヤツなんですけど。そいつが『ジュラシック・パーク』という映画を作ったんですね。
 この『ジュラシック・パーク』を作る時に、特撮部分をILM(インダストリアル・ライト&マジック)というジョージ・ルーカスの会社に発注したんですよ。

 最初はスティーブン・スピルバーグは、恐竜を実物大の巨大なロボットで作るつもりだったんです。ベロキラプトルも何もかも、わりとロボットで作るつもりだったんだけど。
 でも「ロボットは、やっぱり動きがよくない」と。特にティラノサウルス・レックスって、デカいから、やっぱり動きが重くなってしまう。「恐竜は鳥の祖先である」という説を説明するためにも、やっぱり、恐竜の動きというのを、これまで誰も見たことがないくらい軽やかにしたかったわけですね。
 「どうやって撮ればいいんだろう? やっぱり、誤魔化してミニチュアとか、人間の手が中に入っているようなパペットで撮るしかないか」と思ってたら、ILMのコンピューターグラフィックスチームが、「コンピューターグラフィックスで恐竜を作ってみた」と言ってきたんですね。
 スピルバーグも、最初はそれを全然信じてなかったんだけど。実際に見てみたら「これ、メッチャ使える!」と。特に、ティラノサウルスなんか、一番最初、骨だけのティラノサウルスが動いて、その上に筋肉を付けたら、筋肉の動きが見えるようにちゃんと動いてて、上に皮膚を貼ったら皮膚が筋肉の動きで歪んでシワが出来て、ものすごいリアルに見える。
 スピルバーグは「コレだっ!」ということで、それまで発注していたロボットの恐竜を一部キャンセルして、結局『ジュラシック・パーク』は、コンピューターグラフィックスがメインのキャラクターになるという、すごく珍しい映画になったんですけども。

 それ以上のショックを受けたのが、ジョージ・ルーカスだったんですよ。
 ジョージ・ルーカスは自分の会社にそんな研究をさせておきながら、コンピューターグラフィックスによる生物なんて信じてなかったんですね。
 とりあえず、映像作家だから目の前にあるものは信じるんだけど、「そんなコンピューターグラフィックスとやらで、どこまでの物が出来るかな」と。もちろん、『帝国の逆襲』とかにも、一部使ってたんですけども、信じてなかったんです。
 だけど、『ジュラシック・パーク』を見て「これはいけるかもしれない」と思ったんですね。

 『ジェダイの帰還』の時に、やっぱり嫌になったのが、ジャバ・ザ・ハットというモンスターを動かしている時だったんですよ。
 『帝国の逆襲』でヨーダを出した時は、パペットとして出したんです。下から手を入れて動かす、いわゆるタオルくんタイプのキャラクターだったんですよ、ヨーダっていうのは。で、この動きがすごく良くて、まるで生きているみたいだったんですよ。

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【画像】タオルくん

 なので、これを使ったフランク・オズのチームに、金を山ほど渡して「今度は、長さ3メートル近いナメクジの化け物みたいなのを作ってくれ」と言ったら、フランク・オズのチームは、すごく頑張って、長さ3メートルのナメクジを作ったんです。本当に、20人掛かりで操作するやつですよ。
 でも、どう見ても、やっぱり「長さ3メートルの着ぐるみ」にしか見えないわけですよね。やっぱり、ジョージ・ルーカスが思っているようなものにはならなかった。
 『ジェダイの帰還』の中には、青い象さんとかが出てきて、エレクトーンみたいな楽器を弾くシーンがあるんですけど。それも、やっぱり「青い象さんの着ぐるみがエレクトーンを弾いている」ようにしか見えないんですよ。
 いや、あの時代のアナログ特撮って、味があって僕は好きなんですけど。やっぱりね、ジョージ・ルーカスは「味があって良いね」と言う人じゃないんですよ。映像作家ですから。
 本当に、ジョージ・ルーカスが、ジェームズ・キャメロンみたいなオタクの大馬鹿者だったら、たぶん『帝国の逆襲』とか『ジェダイの帰還』の時のお安い特撮でも、ニヤニヤしてOKを出してたと思うんですけど。ジョージ・ルーカスは映像作家ですから「味があって良いね」ではなくて、「これでは映像の革命にならん!」と思ったわけですね。

 なので、「この『ジュラシック・パーク』に使ったコンピュターグラフィックスの技術があったら、もっとまともなエイリアン作れるじゃん!」というふうに思ったわけですね。
 「これだったら、やっと元祖スター・ウォーズ、つまり、30年以上前の時代のクローン戦争を描いた映画を、本当に作れるかもしれない!」と思ったんです。

 しかし、ジョージ・ルーカスは、離婚したばかりで金がない、と。
 そこで、コンピューターグラフィックスの練習も兼ねて、本家スター・ウォーズを修正することを思いついたんですね。
 本家を修正して、一部のシーンにCGを足す。例えば、Xウィングファイターがデス・スターに行く時に、飛行機の数も少なくて、カメラアングルも単調だったので、ちょっとこれを立体的にした。さっき言ったモンスター達、エイリアン達も、デジタルで入れ替えました。
 そうしたら、まあ、映画はヒットして、ビデオも売れまくったんですね。
 つまり、ただ単に一部のシーンをデジタルに切り替えて、CGを足すだけで、ファンは喜んで見てくれる。それで、お金がいっぱい入って、やっと新作を作る金も出来た、と。

・・・

 さらに、この実験を通じてわかったのが、「背景の世界すらもコンピューターグラフィックスで作れる」ということだったんです。
 これは、モンスターとかエイリアンよりも遥かに映画界に革命を起こせるんですよ。
 かつてのハリウッドには歴史大作というジャンルの映画があったんですね。
 例えば、『クレオパトラ』とか『ベン・ハー』。昔は、そういう歴史を描いた映画がいっぱいあったんですよ。僕が小学生の頃くらいに見た『十戒』という映画も、モーゼが出てきて、「神の力を見よ!」とか言ったら、紅海が真っ二つに割れて、そこにユダヤの民達がわーっと逃げていくというのがあったんですけど。
 それらは、ある時期を境にパッタリとなくなっちゃったんですよ。
 なぜかと言うと「セット作るのが大変だから」です。
(パネルを見せる)

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【画像】『イントレランス』のセット

 これは、映画の歴史の中でも、ごく初期に作られた『イントレランス』(1916年公開)という映画のセット、古代に繁栄した悪の都バビロンなんですけど。これでセットの一部なんですよ。
 下の方で、無数にわーっとやっているのが人間で、メチャクチャ高い門を作って、その門の上に人がいて、さらにその上に塔があって、その塔の上にも人がいて、その上に象の作り物とかがあって、この上にも人がいたりするんですけども。
 とにかく巨大、あまりにも巨大で、このセットは壊すことすら出来なかったというんですね。「映画を作ったはいいが、セット壊せないよ」と。
 とにかく、こんな時代ですから、それでも一応、遠近法とかを使って大きく見せる工夫はしているんですけど、そんなに性能が良いレンズがないんですね。なので、もう、馬鹿正直に「実物大のセットを奥行きそのままで作る」しかなかったんです。

 これはグリフィスという監督が作った映画なんですけど。基本的に、歴史モノって、こういうものなんですよ。
 だから、『ベン・ハー』を撮るにしても、大航海時代の船の映画を撮るにしても、もう出来るだけ実物大のセットを作って、その中で人間を動かすしかないので、歴史ものってメチャクチャ金がかかるんですよ。
 そんな歴史モノが、ハリウッドで、特に映画がカラーになった時代に流行ったんです。
 「映画がカラーになりました。じゃあ、何を見せましょうか?」と。最初は「踊り子さんたちの服が綺麗だ」とか、そんなの見せてたんですけども、それだけだと観客が納得しないんですね。そうじゃなくて、エジプトとかローマとか中国とか、いろんな時代の、もう本当に絢爛豪華できらびやかな宮殿の中を見せると、やっと観客が映画館に来てくれるわけですよ。
 その結果、映画を1本作るのにとにかく金がかかった時代というのが、1950年代から60年代にあったんです。
 で、そんなに金をかけているから、映画が1本外れると、つまり大ヒットしないと、映画会社が潰れてしまった、と。
 まあ、一時期のエニックスみたいなもんですね。とにかく『ドラクエ』が1回でも外れるとエニックスが潰れる。とにかく『ファイナルファンタジー』が1回でもヒットしなかったらスクウェアが潰れるという時代があったんですけど。あれと全く同じ状態だったわけですよ。
 その結果、映画会社がバッタンバッタン潰れた、と。まあ、そんな時代が1960年くらいにあったんですけども。結局、それによって、大作映画とか歴史モノというのがジャンルごとなくなってしまったんですね。

 ジョージ・ルーカスというのは、映画界に革命を起こすことで、同時に、失われたジャンルの映画を復活させたいと思っていたんですよ。
 『スター・ウォーズ』の新しい特撮によって、モンスター映画、宇宙映画、SF映画、怪獣映画という、ハリウッドでは作られなくなってしまったオバケ映画みたいなものを復活させた。結局、『スター・ウォーズ』がヒットしたおかげで、あの技術があったおかげで『ゴースト・バスターズ』みたいな映画も出来たわけですから、本当にそうなんですよ。
 ジョージ・ルーカスが元祖スター・ウォーズでやりたかったのは何かと言うと、「歴史モノを復活させたい」ということだったんですね。
 金がかかってしょうがなくて、1本コケたら映画会社が潰れてしまうような歴史映画。もう作られないと思われていたこのジャンルだけど、もし、コンピューターグラフィックスで背景を作って、その中に人間を入れ込むことが出来たら……つまり、今となっては評判が悪い「全部グリーンの幕の前で演技しろ」ということなんですけど。でも、これが出来れば「コストをそんなにかけずに『グラディエーター』みたいな歴史大作が作れるようになる」ということなんですよ。
 そんな革命をジョージ・ルーカスはやってくれたわけですね。
 これが、元祖スター・ウォーズで、ジョージ・ルーカスがやったことです。
 それが出来たのは「自分の映画を作りたい!」という以外に、「新しい革命を起こして古いジャンルの映画を蘇らせたい!」というジョージ・ルーカスの夢があったからなんです。
 例えば、これも前に見せたことがあるんですけど、『タワーリング・インフェルノ』という、1970年代にハリウッドで作られた「ただ単に、高いビルが火事になって、スティーブ・マックイーンとかが消防士としてそこに行く」というだけの映画なんですけど。
(パネルを見せる)

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【画像】『タワーリング・インフェルノ』のセット

 これは、その映画の中で出てくるグラスタワーというビルのミニチュアなんですけど。ここに立っているのが作業員なんですね。作業員がクレーンを使って立ててるんですけど、このミニチュアの高さが、もう40メートルくらいあるわけですよ。
 ここまでのセットを作らないと、パニック映画を作れなかったんですね。パニック映画も、とにかく金がかかって仕方なかった時代なんですけど。
 これも、ジョージ・ルーカスが元祖スター・ウォーズの時に確立させた「コンピュータ・グラフィックスを合成させる」という技術によって、こんなデカいミニチュアは作らなくてよくなったわけですね。

・・・

 そうやって完成したのが元祖の3部作です。
 元祖3部作では、ジョージ・ルーカスのイメージ通りに、いろんな惑星の風景を出せたわけですね。
 例えば惑星ナブーにある水中の都市とか、あとは、クライマックスの溶岩に覆われた火山の惑星とか。
 あとは、その中で、ルークの父親アナキン・スカイウォーカーが、どのようにしてダース・ベイダーになってしまったのかというのを、溶岩の上での決闘というので語ることが出来た。
 これは、本家スター・ウォーズを作っていた時からルーカスが思っていた「この一家の悲劇、お父さんは悪の手に落ちてしまって、息子はどうなるのかという流れを描かないと、息子の話だけ描いてもしょうがない」という、大変大事な前フリだったんですけど。それをやっと撮ることが出来た。
 ともかく、この元祖3部作というのは、ルーカスの思い通りに作れたわけです。

 ルーカスは、この出来に満足して、またもやファンたちに宣言するわけですね。
 「『スター・ウォーズ』はこれ以上は作らない」と。「本家があって、元祖があって、もう、これ以上は作らないよ」と。
 なぜかと言うと、「今や、デジタル技術でどんな風景でも見せることが出来るし、どんなモンスターも出すこと出来るようになった。もう、これ以上、映画の歴史を変えるような革命は存在しない」というふうにジョージ・ルーカスが思ったからです。
 だって、元祖スター・ウォーズでは、嵐の海というのすら出したわけですから。いわゆる、海みたいなものも、雲の中も、水中も、全てCGで作って、その中に俳優さんを入れることが出来るとわかったから、「もうこれで、これ以上の映画の革命はないな」と。
 まあ、ジェームズ・キャメロンが、3Dで『アバター』を撮った時に「あれ?」と思ったジョージ・ルーカスは「じゃあ、『スター・ウォーズ』も3Dで作るよ」って、ちょっと言い出してたことがあったんですけど。
 それは「3Dで作ることによって新しい映画の革命があるかも」と思っていたからのことであって、やっぱり、ジョージ・ルーカスとしては「そこまでのものじゃないな」と思い直したので、3Dで作ることを止めたわけですね。
 だから『スター・ウォーズ』というのは、実はこの2005年の元祖シリーズが終了した時点で終わるはずでした。
 ここまでが、『最後のジェダイ』の前振りなんですよ。ここから『最後のジェダイ』の話を軽くするんですけど。


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