岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/11/15

 今日は、2019/10/27配信の岡田斗司夫ゼミ「思考実験教室~「論」を語る」からハイライトをお届けします。


 じゃあ、次は「地方再生論」ですね。
 ペンネームタオルくんだいすきさん。


私は、名古屋市在住なのですが、最近ニュースで「名古屋駅周辺にアニメ・サブカルロードなるものを整備し、観光客を呼び込もう」という方針があることを知りました。
具体的には、アニメキャラのモニュメントを設置するようです。
お隣の岐阜県では『君の名は。』や『聲の形』の舞台となった場所に多くのファンが訪れたと聞き、「地元にそういう場所があって羨ましいな」と思っています。
しかし、今回の計画は「愛知県や名古屋市が舞台だから」とか「縁のある作家さんの作品だから」というわけではないようです。
現時点では、どんなアニメキャラがモニュメントになるか不明ですが、はたして、それを見たい観光客がいらっしゃるのか疑問ですし、あまり効果のあるお金の使い方でないように思いました。
岡田先生は、この名古屋市のアニメ・サブカルロード計画について、いかが思われますか?


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【画像】サブカルロード

 ええとね、僕、基本的に、これには大賛成なんですよ。
 昔、アニメ作ってた時の知り合いに、メディア系の人がいたんですね。いわゆるメーカー系じゃなくて、メディア系の知り合い。その人は、こういう、日本各地にアニメの聖地を作るというプロジェクトをやってるんですけど。
 その人から話を聞くと「もちろん『聲の形』とか『君の名は。』の岐阜県みたいに本当にその聖地があった方がいいんですけども、そういうのがないからといって、あまり気にしなくていい」と。
 「それは、なぜかというとお台場のガンダムで実証されている」と。確かに、かつて、お台場に歴史上、ガンダムが来たことはないわけですよ(笑)。

 『機動戦士ガンダム』のストーリーで、お台場に来たことはないし、バンダイのプラモデル工場は静岡県だし、営業所は浅草ですし、お台場は一切関係ないんですよ。
 でも、「お台場ガンダム」と言われたら、なんか、みんなその気になるじゃないですか。みんな、あれに騙されて見に行っちゃってるわけですよね。
 日本の中でガンダムが来たことがあるのは、僕が知っている限り、鳥取だけです。鳥取砂丘にホワイトベースが着陸して、アムロがお母さんと再会したので、少なくとも鳥取には来ているんですけど。
 それくらい、関係なくていいわけですよね。

・・・

 その、今、聖地を開発しているメディア系の知り合いの人に言わせると「大事なのは、ちゃんとしたものを作ることだけだ」と。
 ちゃんとしたものというのは、例えば、ショップとか銅像とかモニュメントとか、あとは商店街の整備。そこをちゃんとすれば聖地として機能する。機能したら、好きな人が勝手に集まって来て、盛り上がる。
 この「盛り上がる」ということが一番大事なのであって「無理矢理、生まれたところだから」とか「作家さんの出身地だから」といってもあんまり意味がないんだよね、って。

 そう言われて、僕が「あっ」と思ったのが、以前、鳥取砂丘を見に行った時に、空港に降りたら「鳥取コナン空港」って書いてあったんですよね。
 『名探偵コナン』の作者の青山さんの出身地だからということで、コナン空港と書いてあって、コナン空港の中にはコナン君のブースみたいなものもあったんですけど。なんか唐突で変だったんですよ。
 「作者の出身地だから」とか、そんなことでそれだけ作っても、変なだけなんです。盛り上がらないんですよ。
 だって、空港って、みんな別に普段から用はないから行かないじゃないですか。だから「コナン空港」という名前つけても、たとえラッピングでコナン君の絵をつけた飛行機を飛ばそうと、空港の中にそんなブース作ろうとも、空振り感がしたんですよね。

 それに対して、同じ鳥取でも、境港に水木ロードというのがあるんですけど。
 水木しげるというのは、僕と同じく、大阪市の住吉区の出身で、鳥取では「育っただけ」なんですよね。だいたい、2歳くらいから中学校卒業くらいまではそこで育ったんですけど、その後、やっぱりまた大阪に移って、中卒で仕事しているので。
 でも、出身地だからといって、住んでいた家とかを利用しているわけではなく、すごくちゃんとしたモニュメントをいっぱい作って、ショップとかも全部、水木さん推しでやっていて、色んなところがお互いの商売というのを伸ばそうとしている、すごくちゃんとした商店街なんですよ、水木ロードって。
 たぶん、あれって、キャラクター系というか、聖地系としては、世界で最も整備されてるんじゃないかと思っているんですけど。

 他にも、広島県の呉市には……これも松本零士さんとは全く関係ない土地なんですけど、松本零士ギャラリーがあります。これも、関係ないところです。でもちゃんと機能してるんですよ。
 池袋にある乙女ロードだって、別に、池袋なんて乙女が行くところじゃないじゃないですか。でも、それでOK。「そこに行く理由」があって「行った時にちゃんと楽しい仕掛け」というのが出来ていればいいんですね。
 そもそも、秋葉原にメイド喫茶があるというのも変な話で。電気街とメイドさんは、本来は関係ないんですけど、それが成立しているのは、やっぱり、そこに行けば、ちゃんと楽しめる仕掛けが用意してあって、そういうのが好きな人がいっぱい集まるというフォーマットがあるからなんです。

 モニュメントがちゃんとしてて、ショップが整備されていて、そのショップ同士の連携が取れていれば、地方のアニメファンにとっての「集まれる場所」が出来る。この集まれる場所って大事なんですよ。
 だって、集まれる場所がないところでは、若い人はコンビニの前で集まって話をするし、コンビニもないような地方では、もう、田んぼのど真ん中の自動販売機の前で、みんなタバコを吸ってるじゃないですか。
 あれ、何かと言うと「集まれる場所が何か欲しい」ということなんですよ。
 集まれる場所が何かあればいいので、そういう場所を作ってさえくれれば、地方としては、全然関係ないとはいえ話題になって幸せだし、街の人はお金が落ちて幸せだし、アニメファンは集まることが出来て幸せだし、もう三方一両得なんですね。

 僕の地方論では、地方というのは1つの独立国みたいなものであって「東京行けばなんとかなる」とか「大阪に行けばなんとかなる」ではなくって、それぞれ独立国である地方ごとに中心街があるように、アニメの聖地というのをそれぞれで作って構わないと思うんですね。
 だから、別に、新潟にガンダムの聖地があってもいいし、栃木にガンダムの聖地があってもいいし、鳥取にガンダムの聖地、それこそ本当に鳥取砂丘にあってもいいんですよ。
 そういう聖地というのを本当に作っちゃって「ここは集まる場なんだ」と考えておけばいいと思いますよ。
 僕が博物館を作ろうというのも、似たようなもんですよ。自分が持っているものを集めておいて、いつでも人が来れるようにしておけば、ニコ生ゼミが好きな人が集まって来て、その人らが話し合ったり「あれ、面白かったよな」とか言えれば、一番楽しいと思います。
 というわけで、ステッカーあげますので、名古屋に変なアニメの聖地が出来るかもわからないですけど、納得してあげてください。


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