岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/10/11

 今日は、2019/09/22配信の岡田斗司夫ゼミ「【雑談スペシャル】“中国製のパチもんレゴ”を作ってみた、最後の『なつぞら』解説などなど」からハイライトをお届けします。


 よっしゃ! じゃあ、次に行こうか。
 ハンドルネームぽんぬきさん、25歳です。

(パネルを見せる)

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【画像】声優と舞台経験

私は声優を目指し現在養成所に通っています。よく役者仲間から「舞台を経験した方がいい」と薦められます。
確かに舞台は良い経験になると思いますが、どうも踏ん切りがつきません。それはチケットノルマです!!
何人かの友人から「舞台やるから見に来てね!」とよく誘われるのですが、チケット料金が高い!! 大体3000円~5000円!!
友人の付き合いも兼ねて買っているのですが、ぶっちゃけ9割つまらない!! 下手! 金返せー!!
一人暮らしで余裕がないので、何度か断ったら、付き合いが無くなった友人もいます。
自分は友人にこんな思いさせるのなら、やりたくありません。
けれども、「演技力を向上させるにはやはり舞台をやるのが一番手っ取り早いなぁ……」と思います。
舞台以外で演技力を上げる方法は何かありますでしょうか?
岡田さん、よろしくお願い致します。


 えーっ、これに答えるのか。
 いや、「答えるのか」って、自分で選んだんだから、答えるしかないんですけども(笑)。
 正直に答えていいのかな?

 うーんとね、まず、前から言ってるんですけど、声優になるために必要なのはコネであって、養成所で伸ばすのは能力でなくて有力者へのコネ、コネクションなんですね。
 これはどういう意味かというと、「友達の機嫌を取っても無駄だし、先輩の機嫌を取っても無駄」ということなんですよ。周りの友達と仲良くした方が有利かというと、全然そういうことにはならない。自分達よりもちょっと威張っている先輩のコネではなく、既に声優になっている先輩と仲良くしても、やっぱりダメなんですね。
 音響監督に繋がる人に可愛がられなかったら、もう、役なんか回ってこない世界。だって、1人の声優の裏には、1万人くらいの声優になりたい有象無象がガーッといるわけですよ。
 おまけに、最初に出演する時は、みんな1言か2言のセリフなんだから、演技力もクソもないんですよね。
 というか「演技力なんて、あって当たり前」なんですよ。声優学校に行って、養成所まで行ったんだから、全員、演技力はある。そこまでの演技力はあって当たり前。あとはプラス何かの世界なんです。
 あと、舞台をやると舞台貧乏に落ちちゃうこともあるんですよ。

 ただ、青二塾とか、三ツ矢雄二がやってるような声優劇団ならば、そりゃもう舞台に出るべきですよね。三ツ矢雄二が座長をやってる劇団の中で、三ツ矢雄二から良く思われたら、三ツ矢雄二の引っ張りで舞台に出れるわけだし、アニメの声優も回ってくるから。
 そういう、声優養成所の主催者自身とか、音響さん周りの人達がやっている舞台だったら、そりゃ、コネクションとしては出るべきだと思うんですけど。

 「じゃあ、どうやって演技上手くするのか?」と。
 さっき「声優として出ていく時には演技なんて上手いのが当たり前だ」と言ったんですけど。『少年ジャンプ』だって初連載のマンガ家はみんなマンガが下手じゃないですか。つまり、絵の上手さではなく、何かを感じるからこそ、そいつを連載に起用するわけですよね?
 声優も同じで、「演技が上手いから役がもらえる」というのは、それはもうベテラン声優だけなんですよ。渋い役は絶対に演技が必要なんですけど、新人として出て行く時は、サムシングの方が大事なんです。それでも、そういったサムシングというのは、さっきも言ったように、若手の時はコネクションくらいしかないんですけどね。
 演技自体の上達法としては……たぶん、あんまりこれを言う人はいないと思うし、否定されてるのかもわからないんですけど、「自分が好きな上手い声優さんの口真似」が一番良いですよ。
 絵は真似したら上手くなるし、アニメも真似したら上手くなるし、映画だって真似したら上手くなるんですよ。小説だって真似したら上手くなる。世の中のクリエイティブなことというのは、基本、真似することでどんどん上手くなっていくので、上手い声優さんの声の演技というのをテレビで聞いたら、そのまんま、それを何回も口真似して声を出すくらいが、一番良い訓練法です。
 これは、舞台に出るよりよっぽど手っ取り早いし、逆にいえば、これくらいしかやることがないのが声優養成所のキツさなんですよね。
 演技というのは、ある程度、コストゼロで上手くなれちゃうものだから、あとはもう、膨大にある暇な時間と、自分の中の焦る心というのを、何か結果に結びつけようとして、やっぱりみんな舞台をやっちゃうわけなんですけど。

 まあ、舞台だの、チケット売りだの、人間はとりあえず何か努力しないと不安になっちゃう生き物なんですよね。
 だから、舞台に出るんだったら面白い劇団、チケット売りで苦労しないような劇団にしか参加しないというのが僕のお勧めなんですよ。
 そういう面白い、チケットがすぐに売り切れちゃうような劇団に参加できないんだとしたら、「自分には向いてない世界だ」と割り切って、まあ、趣味として楽しむ。
 諦めるという言い方をあんまりしちゃうのはナンですけど、ぶっちゃけで話すと、そういうことだと思います。

 あんまり意に沿うような答えは……もう本当にね、クリエイティブなジャンルは、適当な夢みたいなことを言って、それを引き伸ばしてお金取ろうという大人があまりにも多いから、ちょっとキツい目のことを言わせていただきました。
 すみません。

「平野綾:いや、実力でしょう」(コメント)

 だから、なった人間は実力って言うんですよ。
 なってからは実力なんですよ。でも、なるまでは、もう本当に偶然なんですよ。一旦、声優になったら、始めてそこで演技の力が問われるわけで、なるまでは偶然なんですよね(笑)。

 じゃあ、次に行きましょう。
 ハンドルネームニューおでんさんからのお便りです。

(パネルを見せる)

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【画像】ゼミの正しい見方

わたしは学がないこと、教養がないことがコンプレックスです。
岡田先生のチャンネルのような、マニアックな話題は大好きなのですが、聞いているそばから忘れてしまい、知識として残りません。
質問①
岡田先生は、どのように得た情報をご自身の知識として蓄えられているのでしょうか?
質問②
また、岡田先生のチャンネルは、どのようなスタイルで見るのが正解なのでしょう?
ながら見を前提とされているのでしょうか。それとも、ノートとペンを持って、授業のように拝見した方が良いのでしょうか。
なにかアドバイスいただければ幸いです。
追伸:タオルくんステッカー希望です!


 ああ、タオルくんステッカーを指名してきたということは、この『ガンダム』風のステッカーの評判が悪いということだね? わかったよ。お前らがそんなにタオルくんが好きだとは、俺、知らなかったから(笑)。
 なんかもう、一時期、コメント欄がタオルくんに対する恨みというか、憎しみで溢れてたから、俺、もういいと思ってたんだけど。タオルくんステッカーをちょっとだけ作ってみたら、タオルくんステッカーが一番評判がいいというね。
 もう本当に上手くいかない(笑)。

 真面目に答えると、基本的に知識を得ようという努力はわりと虚しいんですよ。退屈だし、知識って覚えてられないんですよね。僕もそうです。
 なので、僕が言えるのは「好きなことに関して手を抜かないしかない」ということなんですよ。
 「知識を蓄える」とか、「何かを好きだ」とか、そういうことは才能だと思うんですけど、「手を抜かない」というのは才能ではなくて、ただ単に努力の問題だから、やろうとして出来ることだと思うんです。
 興味のないことは知らなくていいんですけど、好きなことには手を抜かない。

 例えばで言うと、僕は『天空の城ラピュタ』というアニメが好きなんですよ。これを好きだということは『天空の城ラピュタ』に関して、手を抜いちゃいけないんですよね。
 手を抜かないということは、舞台になっているウェールズ地方の歴史とか、あと石炭を掘る炭鉱の構造まで、やっぱり調べなきゃいけない。だって、それを知ったら面白いかもしれないんですよ?
 いや、面白いかどうかは調べてみるまでわからないんだけど、『ラピュタ』が好きなんだったら、「宮崎駿は、こういうのが好きで、この世界観を作ったはず」と、宮崎駿が好きなことは、一応、調べておかないと、全部を味わい尽くせないかもわからないじゃないですか。
 『天空の城ラピュタ』という作品を、そういう予備知識を全く入れずに、ただ見て楽しもうというのは、本当に「一番上のトッピングの部分だけを楽しもうとしている」ようなもので、その下にあるもっと美味しい本質部分に行き着いていない気がしちゃうんですよね。
 なので、『ラピュタ』を味わい尽くすために、僕は勉強してるわけなんですけどね。

 こういうふうに、好きだったら手を抜かない。
 反対に、好きじゃないんだったら、別に手を抜いても全然構わないです。興味もないことへの余分な情報に脳を使わない方がいいです。
 僕、今、オリンピックとかサッカーとかラグビーとか、何一つ知りません。そこに脳を使いたくないからですね。
 ところが、『ゴーストバスターズ』の背中に背負っているバックパックがありますよね? あれ、プロトンバックって言うんですけど。あのプロトンバックって、ダン・エイクロイドが自分で設定を作ったそうなんですよね。
 あのECTO-1というゴーストバスターズが乗っている車と、プロトンバックっていうのは、ダン・エイクロイドという『ゴーストバスターズ』に出てくる太っちょの俳優、あいつ自身がシナリオを書いてるんですけど、あいつ自身が設定を考えて、一生懸命、周りに説明したんですけど、誰1人聞いてくれなかったそうです(笑)。
 美術さんが適当にでっち上げて、「こんな感じ?」って言ったら、そしたらダン・エイクロイドが「すごいよ! これだよ!」って言って、大喜びで背負ったそうなんですけど。
 だから、ダン・エイクロイドが背負っているやつだけ、ちょっと他よりも重いんですよね。本式にいろいろ機械が入っているから。他の人間は、みんな「ガワだけでいい」って言って、ハリボテを背負っているんですけど。
 『ゴーストバスターズ』好きだったら、「じゃあ、ダン・エイクロイドはどこまで考えたんだろうか?」っていうのを掘っていった方が、やっぱり楽しいし、そういうのをニコニコ生放送で話していくのも、僕は楽しいと思うんですけど。

 好きだったら手を抜かないということですか。
 僕も、この間、やっぱり『ラピュタ』で語った時にスラッグ渓谷の模型が中途半端だったことが、すごく気になっているんですよ。
 「やっぱり、スラッグ渓谷の谷の深さ自体を表現するために、あの模型はもっと下半分を大きくしなきゃいけなかったな」と、のたうちまわっているんですけど(笑)。
 こういう、手を抜かないということだけ。ニューおでんさんが自分が好きなことだけでいいんです。その好きなことに関して手を抜かなければ、知識なんて勝手に溜まってくるし。
 あと、僕、61歳ですよ? 61でこれくらいで構わないわけだから、25歳だったら25歳、30歳だったら30歳なりの貯まり方っていうのがあるので、そんなに急がなくても人生は長いし、オタク人生はもっと長いですから。長期戦で考えるのでいいと思います。


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