岡田斗司夫ゼミからのお知らせ

岡田斗司夫の毎日ブロマガ「1969年7月21日、人類の歴史が変わった〜その日から50年後の世界」

2019/08/08 07:00 投稿

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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/08/08

 今日は、2019/07/21配信の岡田斗司夫ゼミ「【月着陸50周年記念】岡田斗司夫が、宇宙開発とアポロ月着陸を語りつくすゼミ、いよいよ大詰め!」からハイライトをお届けします。


 うちの家では、僕が幼稚園の時にボタン式のテレビ……初期のテレビって、本当にパチパチとボタンでチャンネル選択をするんですけど。そんなボタンチャンネルのモノクロテレビを買って、小学校3年生の時にカラーテレビが来たんですよね。
 でも、カラーテレビのはずなのに、画面の上で流れているのは白黒の画面で。画面には「月からの生中継」ってテロップが出ているんですけど、もう本当に、その月からの生中継は、やっぱりこれなんですよね。
(先程の新聞の荒い画像を見せながら)

nico_190721_02128.jpg【画像】アリゾナ・デイリースター

 本当に、テレビ画面の大きさも、ちょうどこれくらいで、何が映ってるのかよくわからない。
 だけど、そんな画面を、みんな延々とじーっと見てたんですよ。

 「ピーッ!」という交信音だけがテレビから聞こえて、英語のやりとりがある。しばらくすると同時通訳のお姉さんが、それを通訳するんですけど。
 しばらく家族と一緒に、そんな本当に動きのない画面を見ていると、2歳年上のお姉ちゃんも中学校から帰って来て、2人で台所に行って麦茶を大急ぎで飲みました。5秒でもテレビの前から離れるのが怖くって。

 そんな間も、僕はずーっと、両手でこの本を持ってたんです。
(本を見せる)

nico_190721_02228.jpg【画像】『月へ行くアポロ宇宙船』

 ちょうど、月着陸の1週間か10日くらい前だと思うんですけど、この本を買ってもらったんですね。『月へ行くアポロ宇宙船』という。
 これ、月着陸に合わせて出版されたので、アポロ11号の本じゃなくて、その前のアポロ8号の本だったんですよ。でも、僕は何回も何回も読み直していた本なんですけど。それをずーっと手に持ってテレビ画面を見てました。
 何度も読んでたから、もう、とりあえず、テレビを見ながら解説をしたんですよ。例えば「この絵は1.2秒遅れてるんやで!」とか、「月から地球までは40万キロ離れてるから、光でも1.2秒かかるんや!」とか。
 そしたら、おじさんに「光が遅くても、電波はもっと速いやろうが!」と言われて。「電波も光も同じやねん!」って言うたら、「なんでや!」という、なんか漫才みたいな返しをされたんですけど(笑)。
 そのおじさんはイライラしてチャンネルを変えるんですけど、どのチャンネルも、NHKも、教育テレビも、毎日放送も朝日もフジもTBSも、全部、同じ画面なんですね。

 お昼前から見てて、11時半くらいにアナウンサーがここまでの状況を整理して、僕らはそれまでに何百回も聞かされた、アポロ計画とか、サターンV型ロケットについてまた聞かされて、「アームストロング船長がどんな人か?」、「NASAっていうのはどんな組織か?」、そして、ケネディ大統領の演説の映像を見せられて。
 それから、12時ちょっと前くらいになって、ようやっと、テレビ画面が切り替わって、スタジオから月面の白黒の映像になったんですよ。

 そしたら、アポロの月着陸船の脚が、画面中央に映ってたんですね。
 おじさんに「何や?」って言われたんですけど、僕は月着陸船の形を知ってたので、「あれは月着陸船の脚や!」って言って。
 そしたら、ゆっくりとコマ落としのように人間がカタカタ動いて、その人影がはしごを降りて行くんですよね。よくわからないんですけど、どうも月に降りたらしいんですよ。はしごを降りて行って、下まで行って、月に降りたと思ったんです。
 なので、みんなアームストロング船長からの言葉を待ってたんですけど。そしたら、その人影は、またはしごの上に登り始めたんです。「やめるのか?」と思ったら、そこで同時通訳の人が「問題ない」という言葉を翻訳したんです。
 「なぜ、あの時、はしごを登ったのか?」 この謎が解けたのは、本当に50年後くらいだったんですよ。僕、つい2、3年前に、それはなぜかという解答を知ったんですけども。

 そして、人影がまた下に降りたんですよね。もう本当に、テレビ画面の中の荒い荒い映像で、人影が動いたように見えたら、アームストロング船長が英語で何か喋ったんです。
 すると、同時通訳の人が……今、一般にWikiとかに載ってるセリフではなく、「人間の一歩は小さいが、人類にとっては大きな飛躍だ」というふうに言ったんですね。

 何度も何度も、この同じ言葉をアナウンサーが繰り返します。「アームストロング船長の言葉です」と言って、このセリフを何回も何回も繰り返していました。
 それを聞いていると、テレビから急に「セイコーの時計が正午をお知らせします」と聞こえたんです。
 つまり、僕らは、11時前くらいから1時間以上、本当に何もない画面というのをずーっと見ていた、と。同じ解説を何度も聞いている内に1時間経っちゃってて、もう12時になってたんですね。

 そしたら、もう1人がはしごから降りてきた。ということは、これはオルドリン飛行士ですね。
 ずーっと灰色の月着陸船の脚ばっかりを映していた画面から、カメラが動いて、ようやっと月着陸船全体が映る位置に画面が動いた。つまり、アームストロング船長がテレビカメラを持って、オルドリン飛行士を映せるように後ろへ下がって行ったわけですね。
 僕は思わず「あっ! あれは月着陸船! さらにこの月の軌道の上ではマイク・コリンズが司令船で回ってて~」って言ったんですけど、おじさんからは「トシオは黙っとれ!」って言われました。

 それからも、2人の動きは何をしているのかよくわからなくて。解説員の「たぶん、地震計を出しているみたいですね」みたいな言葉を聞きながら待っていると、ようやっと、アメリカの国旗を広げだしたんです。
 荒い画面で見ても、ちゃんとアメリカの国旗ってわかるんですよね。それを、すごい苦労して月の上に立てて。もう本当に、上手く旗が刺さらなかったみたいなんですけど。それを月の上になんとか立てたんです。
 この時、オルドリン飛行士が、ぴょーんぴょーんというふうに月面の上を飛んでいるのを見て、「ああ、月は本当に重力が6分の1なんだ」とわかったんです。

 そんな映像を見ているうちに、また1時間が過ぎていて。昼の1時を過ぎたので、家のみんなは、もう仕事に戻り始め、姉ちゃんも部屋に帰っちゃったんですけど。僕だけは、ずーっとテレビを見てました。
 「とんでもないことが、今日、起こった!」というのがわかったんですね。「人類の歴史は、今日、変わった!」と思いました。

 テレビでも、その5年くらい前からアポロ計画というのは報道されていたんですけど。やっぱり、ニュースでも「それはちょっと無理じゃないか?」というニュアンスが多かったんですね。
 周りの大人の人も、うちの父親もおっちゃんも「それは無理や。人類が月に行くなんてことは、それはない」って、やっぱり誰も信じてなかったんです。
 「アメリカは月に行くことを諦めるだろう」と。「きっとそのロケットは爆発するし、ベトナムも今、エラいことになってるから、そんなことをやってるわけにいけへんやろう」と。または「ソ連に先を越されるだろう。ソ連の無人ロボットが先に行くだろう」とか、あとは「人類が月に行くより先に、第3次世界大戦が起きて、核戦争になるだろう」というふうに言いました。
 こういうことを真剣にテレビで言っている評論家の人も、何人もいたんですね。

 「人類が月に行く」と、その当時、本気で信じていた人というのは、たぶん、一部のマニアの人というか、報道でも科学関係の人と、あとは、こういう子供雑誌を本気で読んでいた子供たちだけだったんですね。
(本を見せる。当時の子供雑誌)

nico_190721_02842.jpg【画像】少年マガジン

 今回は、ちょっと2冊だけ持ってきたんですけど。
 東京オリンピックが終わって、メキシコでオリンピックがあって、1968年のクリスマスに、ようやっとアポロ8号が月の周りをぐるり周回飛行して帰って来て。この時に、ようやっと月から見た地球の写真が公開されました。
 それが新聞に載った時、ようやっと、周りの大人の人たちも、少しずつ信じるようになったんです。5年前から子供達が信じていたことが、ようやっと半年前になって大人達も信じるようになった。
 そして、NASAの科学者と子供達だけが信じた世界がついに現実になった瞬間というのを、僕は目撃しました。
 それがあの日。今日、7月21日から、ちょうど50年前のことです。

 あれから50年経ちました。
 人類の歴史は、確かにあの日から変わりました。生活の中にお掃除ロボットが入って来て、誰もが手のひらサイズのコンピューター電話機を使うようになり、何でもできるようになりました。
 だけど、そんな今でも未来は楽しくて面白いです。何があろうとも、どんな事件があろうとも、相変わらず僕にとっての未来というのは楽しくて面白いと思っています。空飛ぶタクシーなんて、「本当にいつ飛ぶんだろう?」と待ちきれません。

 でもね、同時に「やっぱり過去も面白い」と思うようになりました。
 よく「もう未来は面白くない」とか、「昔の方が面白い」と言う人がいるんですけど、そうじゃないんですよ。両方面白いんですよ。
 あの頃好きだったアポロ宇宙船とか、サターンロケットというのは、今、勉強すると、子供の頃の単なる憧れの対象から、興味深くて一生かけて調査したいような課題、勉強の対象になったんですね。


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