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今回は、ニコ生ゼミ6月2日分(#284)から、ハイライトをお届けいたします。
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「『カリオストロの城』でやり残したことを詰め込んだ『死の翼アルバトロス』」
この『カリオストロの城』というのは、もう何回も話している通り「東宝が始まって以来の赤字になった劇場アニメ」です。今でこそ名作とか、面白いアニメと言われてるんですけど、当時は本当に記録的に劇場に人が入らなくて、大赤字だったんです。
「このおかげでアニメ界から干された」というふうに、宮崎駿本人も言ってます。
そんな、仕事がなくなることになった作品なんですね。
というか、まあ、スタジオも仕事に困ってたので、2本だけ仕事を受けることになったんですね。
その時に、宮崎駿が大揉めに揉めながら作ったのが、この「死の翼アルバトロス」と最終回の「さらば愛しきルパンよ」なんです。
ありがたいことに、今、YouTubeで、全編かなりいい状態の映像で無料配信されてますので、皆さんもぜひ見てください。
なので、また今度、何かの時に話してみようと思います。
なので、もしやりたいアイデアがあったら「演出や監督の人は、まず、脚本チームに発注して、脚本チームから上がってきたものが違うと思ったらリテイクを出して~」というように、社内で対話しながら作るシステムでやらないといけなかったんです。
ところが、宮崎駿は決まっていた脚本家チームに発注せずに、まず、自分でやり始めちゃうんですね。
で、後に脚本家チームに発注したら、出されたものにあれこれ文句を言う。
脚本家たちが「書き直しなのかな?」と思ってリテイクの準備をしていると、いつの間にか、宮崎駿が勝手に別の人に脚本を発注したりする、と。
「それでは会社の仕事にならない!」と言っても、なんかもう、ズルズルそれを現場で続けられてしまったというような。
これ、アニメ界にはよくある話なんですけど。
こちら側からはあんまり語られないんですね。
この時の宮崎駿は若手ですから!
宮崎駿は “老害” ではなくて、“昔から迷惑なヤツ” なんですよ!
ちなみに、アルバトロスを作った時に、宮崎駿がどうやって他の回の3倍以上の作画枚数を使って好きなように作ったのかというと、「トップと直に交渉する」ということをしたんですよね。
この交渉術は、実は庵野秀明にも引き継がれていて。
庵野秀明も、やりたいことをやる時は、直にトップと交渉するというようなことをやるので、間に挟まれる樋口真嗣が苦しむことになるんですけど(笑)。
そこら辺も、本を読んでて、ちょっと面白かったですね。
基本的には「『カリオストロ』でやり残したことを全部やる」というのが、アルバトロスの目標なんですよ。
アルバトロスの模型って、良いのがなかなか出てないので、これを使わざるをえないんですけども。
これらは、実は、『未来少年コナン』の “巨人機ギガント” と “小型機ファルコ” で、そっくり同じことをやってるんですけども。
それらは全部、『ルパン三世カリオストロの城』の中でやりたかったことなんですね。
それは既に、2018年3月18日のゼミの後半で語っているので、そっちの方を見てください。
『カリオストロの城』でやりたかったことの1つ目が、それですね。
その結果、シリーズの後半から宮崎駿・高畑勲コンビが入ることになりました。
TVシリーズ『ルパン三世 Part1』の後半では、主人公のルパン三世は、なんかちょっと貧乏くさくなって、車もベンツからフィアットの小型車になったんです。
なぜかと言うと、この時期のルパンというのは、もう贅沢をやり尽くしているので、金をバブルに使うことに飽きていて、「むしろ、こじんまりとした生活でやっていこう」というふうになってきたから。
宮崎駿はこの路線変更をすごく気に入ってたんですね。
…まあ、それが原因で高畑宮崎のところに演出が移ったんですけども。
それでも視聴率は上がらずに、打ち切られてしまいました。
その数年後の1972年、『ルパン三世 Part2』が始まったんですけど。
この時にも、宮崎駿は、Part1後半のルパンに対する思い入れが強かったんです。
どんな思い入れかというと、「もうルパンは泥棒とかをしなくていいんじゃないか?」と。
そういう「悪いことするヤツがカッコいい」という時代は、もう古い。
そうじゃなくて、もっと社会の悪者達、戦争とか組織犯罪とかに対して盗みを働くようなルパンでありたいと、正義の味方としてのルパンを描きたかったんです。
この辺が、この「死の翼アルバトロス」の中では、原爆を憎むルパンとして出てくるんですね。
プルトニウムではなくてウランを使った、いわゆる “広島型原爆” なんですね。
原爆というのは、確かに小さく作るのが難しいんです。
本来だったら、原子爆弾というのは、ウラン235なら46キロくらい、プルトニウム239なら10キロくらい集めると、自然に爆発させることが出来るんです。
だけど、そんなに沢山、核物質を集めるのは大変だし、爆弾としても使えない。
なので、“タンパー” といわれる反射材で、核物質全体を覆って、中で反射させるんです。
これによって、ウランだったら15キロ、プルトニウムだったら5キロくらいで原子爆弾を作ることが出来るんですね。
ロンバッハ教授の核爆弾というのは、この形状から、明らかにウランを使ったガンタイプです。
ガンタイプというのは「半球系にしたウランの塊を2つ、タンパーの両端に置いて、片一方に爆薬を置き、これを爆発させることによって、強制的にガーンと2つをくっつける」という仕組みでできています。
この2つのウランの塊がすごい速さでくっついたからといって、臨界量にはまるで達しないんですけども。
その瞬間に、2つのウランの中央にある “イニシエーター” という装置が中性子を発生させることによって、臨界反応を起こさせるというふうになっています。
そして、爆薬が爆発してから、ウランの半分の塊がもう片方にぶつかるまでには、数万分の1秒のズレがあるはずなんですね。
つまり、「火薬に点火してから、数万分の1秒後に中性子を発生させる」というのが、点火プラグの役割になるんですね。
まあまあ、ルパンが感心するほどの仕掛けなのだから、わりと複雑なものなんだと思います。
金にうんざりしたルパンというのをやりたい、と。
第1シリーズでも、まあ、初期の段階ではベンツSSKに乗ってるんですけども、後期に入ると、小型車のフィアットに乗り換えることになります。
『カリオストロの城』でルパン達がフィアットに乗っていたのは、そういったこだわりからですね。
もう、宮崎駿の中では “ルパン年表” が出来ているんですね。
だから、このシーンでも「この時期は、ベンツSSK。この時期はフィアット。ということは、時系列的にその間のエピソードであるアルバトロスは、その中間期だから、ベンツSSKで貧乏なキャンピングカーを引っ張ってて、そのドアの中には、ルパンがランニングシャツとステテコ姿で座っていて、その上にパンツが干してあるんだ」という指定をしているわけです。
泥棒として贅沢をしてて、華麗に活躍してたのは、『ルパン三世』が漫画連載されていた1967年から69年。
その5年後の1972年を描いたテレビシリーズPart1の後半というのは、贅沢に飽きてフィアットに乗っている。
アルバトロスというのは、その時代辺りが舞台です。
これが、第2シーズンの最終回「さらば愛しきルパンよ」の時には、字幕ではっきりと「1981年」と出てくるんですね。
つまり、「ルパンが人前に姿を見せなくなって10年。死亡説さえ出ていたルパンが、ついに帰ってくる!」という話が、「さらば愛しきルパンよ」なんですよ。
単に宮崎駿の脳内だけの設定なんですけど。
それを、セリフとか演出で、「『ルパン三世 Part2』に出てきたルパンは全部ニセ者で、最終回に出てきたルパンだけが本物です!」というふうにやっちゃったもんだから、もう現場のスタッフからは、もちろん大顰蹙でした。
それに対して、宮崎駿は「これはやらなきゃいけないんだ!」と言ってたんですけど。
後になって、流石の宮崎も反省して「あんなことまでは言うべきではなかった。第2シーズン全てを否定したのは、やり過ぎだった」と言ってるんですよね。
1.「空中戦」
2.「正義の味方としてのルパン」
3.「貧乏でまだ不二子が好きだった頃のルパン」
着陸脚に “スパッツ” と言われる風防がついていて、ガルウィングで、エンジンのカウリングがちょっとデカい機体なんですけど。
もちろん、これは『風立ちぬ』で二郎が最初に作って「みにくいアヒル」と言われた “七試単座戦闘機” という機体に形を合わせてるわけですね。
ここら辺の、後に『風立ちぬ』に出てくるメカとか、演出というのも、「死の翼アルバトロス」の楽しみ方だと思います。
ちなみに、この中に出てくる “ロンバッハ航空博物館” というのは、イタリアの北部トレントに実在する “カプローニ航空博物館” がモデルになっています。
そこら辺も楽しめたらいいのではないかと思います。
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