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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/05/10
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今回は、ニコ生ゼミ04月28日(#279)から、ハイライトをお届けいたします。

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 『攻殻機動隊』第2話 徹底解説!(3~5ページまで)


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 「国家審議委員会に予算通過のレポートあり。再度確認――」と。この「再度確認」というのは「2回確認した」という意味です。

 フチコマがレポートを見つけました。

 「特殊部隊設立のための予算というのが、ちゃんと通過してます」ということをフチコマが確認したので、この瞬間、草薙素子はサル部長との取り引きに乗るわけですね。

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 「よし! 桜の24時間監視は中止。ヌードバーに連れてってやるぞ!」と。

 ここらへんはもう、単なる勢いで言ってるってやつです。

 別に、ヌードバーに行くわけでもなんでもないです。

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 ということで、フチコマに乗る。

 前かがみに乗って、ここにスロットルがあって、サドルがあって、燃料タンクみたいなものがあるという。

 この乗り方で分かる通り、実はこのフチコマというのは、ここではバイクのアナロジーなんですね。


 後のエピソードには、いろんなもののアナロジーとして出てくるんですけども、第1回の段階では、まだまだ、このフチコマっていうのは、作者自身が大好きなバイクのアナロジーとして出来ています。

 こういうふうに、上半身をもたれ掛けるように乗って、背中の方に接触端子がぐっと近づいてくる。

 さっきやった首筋の1箇所だけで繋がるのではなく、脊髄に到るところまで全部繋がる。

 そんな「巨大なコンセントがフチコマの方から近づいてきて、草薙素子の首の後ろから脊髄の真ん中辺まで、いろんなところでガチャっと繋がる」というシーンがあります。

 あんまりそれを細かく描くとグロくなるので、見せてないんですよね。


 その後、蓋が閉まりつつあって、車輪が回って、ガーッと走り出す。「退屈で死ぬかと思った」というようなことを部下たちは言っています。

 「暖機しておきゃよかったな」と。

 この「暖機」というのは、「エンジンを予め掛けておいて温める」ということなんですけど。

 そういうふうな部下たちのちょっとした軽口とかも出しながら、ようやっと動くシーンに行きます。


 この漫画において、こういった “動くシーンが出てくるまでの会話” が割りと重要なんですね。

 そこまでで、ほぼ設定説明をやってしまって、そこから先は走りながらの説明になるので。

 ここから先は、ここまでの話と流れが違ってきます。

 ここまでは止まったフレームの中でのお互いの会話ですけども、ここから先は、動いている絵の中でのセリフのやり取りになります。

・・・

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 ということで、まだ日本には存在しない“新居浜”というところを走っているわけですね。

 なぜ、こういう描き方をするのかというと。この風景、山みたいに見えるけれども、木が1本も生えてません。

 縁が削られたようになっているんですね。

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 実は、この『攻殻機動隊』というのは、10年か20年前に世界大戦があった後の世界なんですね。

 その世界大戦で、日本は核攻撃を受けるかなんかして、首都である東京がなくなってしまった。

 その結果、長期的には、消滅してしまった東京の代わり福岡に首都を移転することになった。

 それまでの中間地点として、神戸の沖に人口の島を作って、そこを暫定的な首都にしている。

 その神戸あたりの話というのが、この『攻殻機動隊』です。


 フチコマが走っているのは、当然、国道のような大きな道路なんですけども。

 この端っこの方には、核兵器か、もしくは大型爆弾で、大きく削られた海岸線というのが見えています。


 この辺も、なぜこういうシーンを入れているのかっていうのが、よく分からないんですね。

 でも、SF漫画やSF映画を見る時に、こういうふうに、木が生えていない山で、明らかに削られた跡があった場合は「何か大事故があったんだな」と読むようにしておくと、お話がすごく分かりやすくなります。

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 ということで、「全員、脳潜入(ブレインダイブ)用意!」というセリフが入ります。

 さっきまでは止まっていた構図の中での会話だったんですけども、ここから先は、全員が、おそらく時速何十キロ何百キロという速度で移動しながらの会話になってくるので、アクションシーンぽいセリフになります。

――――――

 少佐:全員、脳潜入(ブレインダイブ)用意!

 バトー:無線だと “枝” がつくぞ。(盗聴されるコト)

 少佐:状況説明しておいて欲しいでしょ?

――――――

 というふうなことで、草薙素子は「状況説明するために私の脳内に皆で入ってこい」というふうに言ってるんですね。

 これを、無線でやる。

 つまり「フチコマ同士の無線通信の中で脳に入ってこい」と言うんですけども。

 それに対して、バトーは「俺がさっきやったみたいにワイヤーで繋いでやらないと、盗聴されるぞ?」と助言します。

 でも、まあ「それよりも大事なのは、状況説明でしょ?」ということで、草薙素子はそれをやります。


 後のエピソードには、こんなシーンは出てきません。

 ここから先の話で、いちいち「情報共有のためにお互いの心の中に潜入して~」とか、「無線だと枝がつく~」とか、そういう話は出てこないんですね。

 これも、実質上の第1話だからこその、まだ混乱しているやりとりだと思ってください。


 「枝祓いに超天才(ウィザード)電脳技師の攻性防壁を使う。ハッカー殺しのハードな奴よ」ということで、つまり「セキュリティはあるから大丈夫よ」というふうに少佐は言っています。

 「チリチリする辺がゴーストライン。それ以上は潜るな」ということで、バトー達は「ブクブクブク」と言いながら心の中に潜って行きます。

 ここで “ゴーストライン” という言い方が出てくるんですけど、これは後で解説します。

 ここでは、とりあえず、さっきまでの静止している時のサル部長に対するやり取りの説明から、動き出してからのアクションに入ってからの短い説明の積み重ねに移ったということで、明らかにお話のテンポが変わってきたことをよく読んでください。

・・・

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 ということで、この漫画ではわりと珍しい「脳内がどうなっているのか?」という描写がザーッと出てきます。


 ここら辺がサル部長が言っていたセリフですね。「国際的対テロ機関の設立予算を出すまで仕事せんだとー!?」とか、「予算は通した!」とか、そういうふうな記憶が見えます。

 ここから、これまでこの部長さんとかなり言い合いがあったんだなということがわかります。

 他にも、少佐本人にしてみれば、みんなに読まれたくない、自分がもっと若くて純真だった頃の笑顔というところまで見えてたりするんですね。

 みんなは、こういう記憶の中から必要な情報を見ているんですけども。

 ここまでは前回、商務大臣だったか商務次官だったか、そういう人と殺し合いをした時のSPとか、荒巻部長とのやりとり。

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 ここまでが少佐にとって “読ませていい部分” で、ここから左の部分というのは、いわゆるゴーストラインという、彼女固有の魂の部分なので、読ませたくない部分ですね。

 そこらへんのギリギリまでみんなが潜ってきている。

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 「ノイズが多いな、お前の脳は」という言葉に対して、「生理なんだよ」と言い返す少佐。

 「少佐、義手が痛みますね」、「なんです、このニガいの。鎮痛剤ですか?」ということで、生理用の鎮痛剤を飲んでることを、部下にからかわれたりすると。

 「義手が痛みますね」というセリフからも分かる通り、みんなが少佐・草薙素子の心の中に潜ってくると、彼女の義手の部分が痛んでいること、「今の彼女の実際の肉体である義手の合いが悪い」ということまで知られてしまうわけですね。


 ということで、少佐の「さあ、情報は仕入れただろ。2秒で出ていかないと脳細胞焼くわよ。そろいも揃ってゴースト近くまで潜って来やがって、くそッ。これだからデリカシーのない野郎共を脳に入れるのは嫌なんだ」というセリフ。

 そのバックでは、都市が見えてきて、いよいよゴールが近いことがわかります。

 これがブレインダイブのシーンです。


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