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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/03/07
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今回は、ニコ生ゼミ02月24日(#270)から、ハイライトをお届けいたします。

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 【『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』を徹底解説 1 】まさに現代社会を支配する秘密結社!」


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 今日、取り上げる本は『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』。

 スコット・ギャロウェイという人が書いた、東洋経済社から出ている、1800円もする本です。

 かなり分厚いですね。


 昨年のベストセラーであり、この「GAFA」という言葉は流行語大賞を取ったりしました。

 まずは第1章「世界を創り変えた四騎士」というところから見ていきましょう。

・・・

 この「四騎士」というのは、あんまり日本人には馴染みがない言葉なんですけども。

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 四騎士というのは “ヨハネの黙示録” に登場する4人の騎士なんですけども。

 「キリストが解く7つの封印のうち、始めの4つの封印が解かれた時に現れる」という、世界を支配する魔物であります。地上の人間を殺す権威を与えられているというやつですね。


 いちばん右側が、第1の騎士。

 弓を持っているやつですね。

 第1の封印が解かれた時に現れる、勝利の上の勝利、つまり “支配すること” を目的としている騎士です。


 第2の騎士は、この赤い馬に乗っている、赤いやつです。

 第2の封印が解かれた時に手に大きな剣を持って現れ、地上の人間に戦争を起こさせる役目を担っている。

 つまり、僕ら自身にお互いに戦争をさせようとするわけですね。


 第3の騎士は、黒い馬に乗っているこいつですね。

 手には食料を制限するための天秤を持っていて、地上に飢餓をもたらすんですって。

 そういう役目を担っているとされるそうです。


 第4の騎士は、青白い馬に乗っているやつです。

 死を司り、地上に病気をもたらして人を殺すという役目を持っているそうです。


 GAFAというのは、Google、Amazon、Facebook、Appleの頭文字4文字を取った言葉です。

 「この4大企業と、それに続くいろんなグローバル企業が、今や地球を乗っ取ろうとしている!」という本なんです。

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タオルくん:
 わかった、陰謀論だね! トンデモ本だ! 

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岡田:
 いや、違う違う。

 陰謀本ではありません。


 ……はいはい、君は引っ込んでください。

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 このGAFA4つの騎士に代表される4大企業というのは、あくまで合法的に、僕らの生活を便利に快適にするんです。

 嫌がる人間に無理やり使わせようとしているわけでもない。

 売ろうともしていないんです。


 極めてシンプルにスマートに、僕ら自身に「使いたいから使ってるんだ」と思わせながら、実は僕らを支配しつつあるんですよ。

 「それを皆さんご存知ですか?」っていうような本です。

 まあ、「支配しつつある」と言うか、「実は支配はすでに完了してますよ」という話なんですけど。

・・・

 「大企業が人々を支配する」と言うと、たとえば「愛知県の豊田市というのはトヨタ自動車に支配された街!」というふうに、昔はよく週刊誌とかにも書いてありました。

 最近は、もう全くそんなこと書かれなくなりましたけど。


 他にも「大阪府の門真市はパナソニックに支配された街だ!」というふうに、僕が子供の頃には、雑誌によく書いてありました。昔はこんなふうに言われてたんですけども。

 でも「GAFAが支配する」というのは、全然 違う意味なんですね。


 産業革命以降、トヨタやパナソニック以上に莫大な利益を上げてきた巨大企業というのは、いくらでもあるわけですね。

 だから、そういう企業が “城下町” にしていた街は「支配されている」と言われてたんですけど。


 しかし、そういう巨大企業というのは、デュポンにしても何にしても、それに見合うだけの雇用、つまり「労働者に対してお金を払う」という環境を生み出していたんです。

 しかし、GAFAはその逆なんですよね。


 これを見てください。これは、22ページに載っている図なんですけども。

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 何十億人もの人間が、GAFAの製品とサービスを便利に使っている。

 しかし、経済的利益を得ている人は腹が立つ程少ない。


 ゼネラル・モーターズ(GM)の一人当たりの時価総額は、およそ23万ドル。

 大したものだと感じるかもしれないが、Facebookは一人当たり2050万ドルだ。

 前世紀のアイコン的企業であったGMの約100倍である。


 同社の従業員数は2万人に満たない。

 それで先進国1国規模の経済価値を生み出していると考えてみて欲しい。

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 つまり、ゼネラル・モーターズが21万人も雇って23万ドル得ていた時代に、Facebookは1万7千人くらいの従業員でその100倍くらいの売上を上げている。

 「これはどういうことなんだ?」と。


 昔から世界を支配していると言われる巨大企業というのは、系列グループにしてもなんにしても、それだけの雇用を生み出していたから、実は、なんだかんだ言って「人々の役に立っていた」と言えないこともない。

 それに対して、このGAFAの4社とも、雇っている人間が恐ろしく少ないわりに、売上とか時価総額が恐ろしく高い。

 「このアンバランスはどうなっているんだ?」という話です。

・・・

 僕がこの話を聞いて「似てるな」と思ったのものがあってですね。

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 それは『青の6号』という漫画の中に出てきます。

 1967年に『少年サンデー』で連載されていた、小沢さとるの漫画です。


 この漫画の中に、世界征服を狙う秘密結社の “マックス” というのが出てくるんですけども。

 そのマックスの総統がですね、新しい幹部に演説するシーンがあります。

 ここですね。

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 いいかね?

 マックスは今、世界の通貨の80分の1を動かすことが出来る。

 この経済力はアメリカ、ソビエトという2大国に次ぐ大きさだ。

 だがしかし、アメリカでもソビエトでも、2億3億という国民がその経済力に頼っている。

 そのために、両国とも膨大なる予算を必要とする。

 我がマックスには養わねばならぬ人口は両国の100分の1にも満たない。

 従ってマックスの経済力は世界一だ!

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 こんな内容の漫画を1967年の『少年サンデー』で連載してたんですから、なかなかすごい漫画なんですけど(笑)。

 もちろん、このマックスは、知ってる人は知ってる通り、『ふしぎの海のナディア』に出てくる秘密結社 “ネオアトランティス” や “ガーゴイル” の元ネタになっています。


 ネオアトランティスという集団が、なぜ潜水艦を使って他の船を破壊するのかというと「 “通商路” を破壊することによって経済支配を目論んでいるから」です。

 この「世界経済の80分1を動かす!」というセリフは、ちゃんとガーゴイルが演説するシーンの中にも入れ込んでいたんですけど。

 これは「元ネタ、わかりますよね?」というサインのつもりでやっていたんです。

 マックスの首領の演説はまだ続きます。

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――――――

 もはや我がマックスは、この地球上において何をやることも可能だ。

 事実、我々の援助なしにはやってはいけない国も10カ国を越え、マックスの資本を導入している国は、すでに30カ国。

――――――

 要するに「膨大な経済力がありながら、国民がものすごく少ないので、逆に言えば自由に使える金がナンボでもある」と。

 本当に、これが50年以上前の漫画だなんて思えないんですけども。

・・・

 この世界征服を企むマックスとGAFA って、ほとんど同じじゃないですか。

 違いというのは「マックスは非合法な武器で船を破壊し、通商路を断絶して、貿易に頼っている国を支配しようとした」というところなんですけど。


 でも、これも中国やロシア、アメリカが、今やっていたり、かつてやっていたことと同じです。

 大英帝国も、フランスも、スペインも、海賊たちに略奪の免許証を発行しましたし、それと全く同じことをやってるわけですよね。

 だから、「マックスがやっていることっていうのは、本当に悪いことなのか? それはかつて植民地支配をしてた国と全く同じことじゃないか」というふうにも考えられる。


 また、GAFAもマックスと同じく、得た利益を大衆に分配しない。

 人を雇ったりしないんですね。

 彼らが雇う労働者というのはメチャクチャ少なく、おまけにGAFAの4つの企業は、税金まで収めないから、その利益は弱者へと分配されない。

 まさに「民主主義の敵」ともいえるんですけども。
 

 それゆえに、ですよ。

 GAFAが面白いところは、民主主義の敵とも言えるがゆえに “民主主義に絶望している知的エリートの皆さん” ……つまり、どんな人かというと、ホリエモンとかZOZOTOWNの宣伝の田端信太郎さんとか、そういう人がいますよね?

 ああいう人たちから支持されてるんですね。


 ああいう人たちには「民主主義のシステムを信じて、たくさん稼いだ人や企業が国家や政府に多額の納税をしたところで、頭の悪い政府の役人や国家に使われるんだから、それよりはAmazonとかが研究開発費に投資してた方がいいじゃん!」という理屈があるんです。

 そして、Facebookとかを見ていると、それに対して賛成する人も多い。


 そういうふうに賛成する人は、だいたい頭が良い人に限られているんですよ。

 つまり、もう民主主義のシステムというのを正面きって批判しても、もう誰もツッコまないような状態になっている。


 まあ、GAFAがやっている税金逃れというのについては、非難する人はいるはいるんですけども。

 つまり、「もう “国家” というシステムを諦めて、GAFAみたいなグローバル企業に国家の代わりをやってもらおうよ」と考える人がかなり増えているってことになるんですね。

・・・

 GAFAに限らず、このIT企業というのは、だいたいどこでもそうなんですけど、「少数精鋭のエリート達が、スマートに、泥臭くなく、実にカッコよく巨万の富を手にする」ということを目的としています。

 しかし、その影では、当たり前ですけども、大部分のGAFAとかIT企業と競合している大部分の中小事業者は廃業することになり、失業者は増えて行きます。

 彼らは、人をあんまり雇いませんから。


 その結果、中産階級というのが空洞化することになります。

 この「中産階級」というのは何かというと、かつて、日本にもいっぱいいた「そこそこのお金を持って、そこそこの年収をもらって、定年まで働いたら当たり前のように年金で食っていける、生活に不満はあるんだけど不安があまりない人」というものなんですけど。

 まあ、子供も大学に行かせたり出来る、そういう普通の家庭というのが、徐々に空洞化して行って、貧富の差は広がる一方です。


 この本の中では「僕らが便利な暮らしを手に入れた代償として、そういうことが、いずれ我が身にも振り返ってくる」というふうに警告しています。

 つまり、コンビニで安くて美味しいものが手に入る代償として、地域で地味に頑張っている定食屋が潰れて、農民とか漁民とかも後継者がいなくなってしまうほど儲からなくてシンドい仕事になってしまうのと同じですね。


 安くて美味しいいろんなものが手に入るようになった。

 じゃあ、その美味しいものは、なぜ安く手に入るのかというと、それを作る人たちが買い叩かれてるからですよね。


 GAFAというのは、僕らを快適にしてくれるんですよ。

 ひたすら便利にしてくれるんですよ。

 おまけに楽しくしてくれるんですよ。

 
 すごいですよね。

 快適にして便利にして、楽しくしてくれる。


 だけど、僕らを豊かにはしてくれないし、幸せにしてくれるわけでもない。


 いろんなことを深く考えないようにしてくれるし、発作的に欲しいと思ったものを最安値で手に入れることが出来るようにもしてくれる。

 そういう快楽は得られるんですけど、その奥にある幸福ということに関しては、彼らは感知してないわけですね。


 このように、四騎士の素晴らしさというよりは、「こいつらが、いかに巧く僕らを騙したのか?」を紹介している本なんですよ。

 なので、この本の中ではGAFAに対する悪口に、メチャクチャ力が入っています。


 今日の話の後半では、どんな話をするのかというと、「実は、僕らは貴族になっちゃったんだ。Appleという城に住んで、衣装を身に着けて、Amazonという執事を使いこなし、Facebookというサロンに通い、Googleという礼拝堂で祈るようになっちゃったんだ」と。

 こういうのを最後のまとめで語りますので、ちょっと楽しみにしておいてください。

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