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今回は、ニコ生ゼミ01月06日(#263)から、ハイライトをお届けいたします。
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「【『ナウシカ』の世界を歩いてみよう 3 】“風の谷” は幾世代も掛けて築かれた宝石のような場所」
これでようやっと風の谷に入るわけですね。
つまり、さっき話したように、この砂退け棚というのは、何重にも何重にもあることによって村を守っているということがわかりますね。
遥か向こうまで、谷が右向きに曲がっていて、砂退け棚が何重にもあるのが見えます。
ここまで運ばれてきた水を、この上まで汲み上げるためのものです。
壁も風車も全て石積みです。
だいたい、イギリスの田舎に行けば、レンガよりもこういう石造りの建物が多いんですけど、こういうのがあるのは決まって貧しい土地です。
この石も岩石ではもちろんなくて、さっきも言ったように、おそらく巨大なセラミックの建築物が倒れて砕けた後の破片を、丁寧に丁寧に選り分けて積み上げたわけですね。
いい加減に積んだら後で崩れますし、なによりも、これは水道を扱うものだから、貴重な水が溢れて地面に染み出してしまう。
だから、たぶん、この石と石の間は、セラミックの埃のような細かい砂をかき集めて、セメントのような物を作って固定しているはずです。
この風車は下にある水を汲みあげるんですけど、この「下にある水」というのは地下水ではありません。
後で説明しますけど、風の谷には、城の地下500mにしか水源がないんですよ。
その城の地下500mから汲み上げた水を、わりと低い位置にある城から、棚田の上にまでですね、いろんな風車を使って、揚水、つまり汲み上げを繰り返して持ってきて、最後にここに貯めているわけですね。
壁には溜まった水の吹き出し口があります。
この位置まで、風車の力で水を持ち上げているわけですね。
この吹き出し口の1つ1つに高低差があるのは「今、どれくらいの水位まで、この中に水が貯まっているのか?」を遠くからもひと目で判別出来るようにするためです。
全ての口が同じ高さだったら、その高さまで水位があるかどうかしかわからないじゃないですか。
でも、高低差がいろいろある穴から水が出ているおかげで、「ああ、今この村の貯水量はこれくらいなんだな」というのが、離れている人間にも一発でわかるんです。
低いところからしか水が出ていない時は、みんなが水を節約しなければいけない。
高いところから水が出ている時は、安心だから笑って暮らせる。
そういうものが、絵として、ひと目で分かる構造になっているんですよ。
今、コメントで、「わからねえ」とか「そういうのを説明してくれよ」というのが流れたんですけど。
こういうことを説明するためにワタクシはこの世の中に存在するわけですから。
補完システムとして使って頂けばOKです(笑)。
ここでユパはトリウマに水を飲ませています。
ささやかな貯水湖なんですけど、人口500の村では、この貯水量というのはかなり恵まれています。
さっきの位置関係から見てわかるように、ここにローマ水道があって水がザーッと落ちているんですけど。この貯水湖があるのは、風の谷の最も高い土地です。
つまり、ここまで水を汲み上げて持って来る執念が、この貯水池を作り上げたんです。
風の谷周辺の全体構造の地図を描いたので、後で見せますね。
水を飲むシーンで、少しだけ映るんですけど。
こういうのって、作るのも大変ですけど、しょっちゅう中がひび割れたり、水が染み出したりするので、途方もない手間と時間を掛けてメンテをしなきゃいけないんですね。
ユパがじいさん達と話しながら、ゆっくりと画面左の方に向かって歩いていくと、向こうの方が明るくなっていきます。
ここで、この谷の全景がやっと見えるんですね。
左右のパンとか、上下のパンとかを使って、とにかくスケールのある絵を見せようとしているんです。
こうやって、どこまでもどこまでも風車が続いていて、その遥か向こうに、ナウシカとお父さんが住んでいる城が見える。
そういう構造になっています。
周りには、ぶどう畑があるのがわかります。
遠くを見渡せる高い位置に住みたがるんですけど。
風の谷は逆で、谷の上に行くほど、腐海からの胞子が危険だから、実は族長が一番下に住んでいるという構造になっています。
全てナウシカたちの先祖が、生き残るためにゼロから作り上げた土地です。
この土もゼロから作りました。
セラミックしかない大地を丁寧に選り分けて、この破滅から僅かに残った本物の砂や土を、1粒ずつ探すしかないんですよ。
これ、本当に。
そうやって、1粒ずつかき集めて作った昔の本当の砂とか土を、落ち葉とか自分達の排泄物などの有機物と混ぜて、本物の土を何年も掛けて、かき混ぜて寝かせて作るわけですね。
なんでこういうことを僕がペラペラ言えるのかというと、もう開拓時代のアメリカでは、それが当たり前だったからなんですね。
開拓時代のアメリカというのは、広いんだけど、作物も何も採れない痩せた土地というのが、どこにでも当たり前にあったんです。
石を砕いて、カルシウムとか肥料を混ぜて、落ち葉を混ぜて、自分達の排泄物を混ぜて、とにかく徹底的に耕すことを毎日毎日繰り返すと、何年か後に、ようやっととうもろこしが採れる土地になる。
日本の農民みたいに、「ここは土地は豊かだ」とか「痩せてる土地がある」というのではなくて。アメリカ人の農民が自分の土地にものすごくこだわって、すぐにライフルとかを出して、隣の家と争いになったりするのは何故かというと、全ての土地というのは “作り上げた土地” だから、なんですね。
そうすると、全く表土がない状態に戻ってしまって、もう一度土を作らなきゃいけない。
この絶望感がツラくて、中西部のアメリカ人が土が全部飛ばされた時に、カリフォルニアに向かって逃げ出した『怒りの葡萄』という小説とか映画にもなった20世紀初頭の事件があるんですけど。
そういうことが20世紀の初頭になっても起こるくらい、土というのは、作らなければいけないものだったんです。
すると果樹園の木も枯れてしまう。
美しい自然に見えますけども、全てが何十世代もの人達が死ぬまで働いて作り上げた、もう本当に宝石のような土地なんですね。
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