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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/11/02
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今回は、ニコ生ゼミ10月21日(#253)から、ハイライトをお届けいたします。

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 実はすごくエッチな『もののけ姫』の話


 では次は、“実はすごくエッチな『もののけ姫』”の話なんですけども。


 村を追い出された後、アシタカは村の出口で自分を慕う少女・カヤに呼び止められます。

 それでカヤは愛の告白をして「いつまでも、いつまでも、お慕い申しています」という事を言って、黒曜石で出来た小さいナイフをアシタカに渡します。


 それでアシタカはそれを貰って、「私もだ、いつもカヤを思おう」と言うんですけども。

 めっちゃイケメンの表情で、にっこり笑いながら言うんですね。

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 それで「これからも、ずっとお慕いします」というのは どういう意味かというと、「生涯、他に誰とも恋をしません」という意味なんですね。

 それで黒曜石の小さなナイフを渡されて、さわやかに笑うと。


 で、女の人で、このシーンを、「アシタカのこういう所が好かん!」と嫌う人が かなりいるんですよ。

 何でかっていうと、ここまで言われて、イケメンな感じで微笑んで、大切な黒曜石の小刀を受け取っておきながら、後でコイツは事も無げにサンに渡すんですね(笑)。


 自分が次に好きになっちゃった女の子に。

 同じ石田ゆり子が声優しているもんですからですね。


 サンに、それも直に渡すんだったらともかく、犬を通して渡すんですよ。

 「これをサンに渡してくれ」って言ったら、犬が「ガッテン承知!」って言ってサンの所に持って行って、そしたらサンが「まぁ!」って言って、その瞬間に女の顔になったりするんですけども。

 それで「なんじゃ、このアニメは?」と、お姉さま方は怒るわけですよ(笑)。


 確かに怒って当たり前なんですよ。


 「私はまた時々 来よう」とか「来てくれ来てくれ」みたいな感じの事を両者が言うんですけども。

 ラストでサンといちゃつく暇があるんだったら、呪いはもう解けたんだから、生まれ故郷の村に戻ってカヤに会ってやれよと。

 「村に帰ってこんかい!」と怒る人が、ジブリの公式本にすら書いてあるんですね(笑)。

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 『ジブリの教科書 もののけ姫』っていうジブリの公式本の、女性の研究者とかライターの人が「こういう所は許せん!」と書いてあるぐらい怒ってるんですけども。


 ま、怒る気持ちは よく分かるんですけども、実はこのシーンは意味が違うんですね。

 これは、すべて象徴なんですよ。


 ここが宮崎駿が描く部分と描かない部分で、「必要な事はすべて描くけども、分かるようには描かない」というふうにやってる所なんですね。

・・・

 村の外れに、夜中に女の子が忍んで会いに来て、そして自分の生涯恋をしない=貞操の印っていうのをくれるわけです。

 これが どういう意味かっていうと、「二人は人目を忍んで○○○○した」って意味なんですね。

 それで、その○○○○シーンを宮崎さんは描きたくないので、わざわざ「いつまでも自分は貞操を守ります」という小刀を渡す事によって、メタファーとして表現してるんですよ。


 だから本当は、ここでカヤとアシタカは人目を忍んで○○○○しているので、カヤの中にはちゃんとアシタカの血筋は残っていて、それがあの一族の土面の形となって、アシタカ皇子の伝説となってかえっていくって話になっているんですけども。

 宮崎さんは、こういうとき人一倍恥ずかしがり屋だから、描かないんすね。


 それで、これは別のシーンなんですけども、『もののけ姫』の中にはもう一つ○○○○の話題が入っていて。

 それはアシタカがサンに看病をされていて、傷が治って、何日も寝たきりの所から起きるシーンがあります。


 岩屋の中ですね。

 岩で出来た小屋みたいな所の中なんですけども。


 アシタカがサンを見つめていると、サンは無防備な寝顔で寝ていて、オマケに足も見えているんですね。

 それで、このシーンのコンテを見たときに、鈴木敏夫が「ピン!」と来て「これ、この二人は○○○○しましたよね?」ってふうに聞いたそうなんですよね(笑)。


 そしたら宮崎駿って、こういう時には絶対に「いや、違う!」とか「そうです」って答えるんですよ。

 「絶対に何か答えるんですけども、この件に限って宮崎駿は一切 答えようとしない」っていうのを、鈴木敏夫が凄く嬉しそうにラジオで言ってるんですけどですね。 


 いつも明確に「そうです」とか「違います」って言う宮崎駿が、こういう○○○○とかに関する場面だけは絶対に答えないと。

 それで問い詰めると、「サンとアシタカがここで○○○○をしましたよね?」って聞くと、「そんなのワザワザ描かなくても分かりきってるじゃないですか!」って言ったそうなんですけども。


 そういう事なんですよ。


 宮崎駿が、今回の『もののけ姫』で取っている表現技法っていうのは、「カヤは夜中に会いに行く」というだけで、この部族にとっては「関係があった」と見なされるわけですね。

 オマケにカヤは「連れて行って」とも言わないし、出て行くことに関してグズグズ言わないと。

 それは何でかっていうと、「もう○○○○して、すでに子供を貰っているからだ」って意味なんですよ。


 それでアシタカの血筋は残って、それはカヤが受け継ぐと。

 なので、「そういう事もこのシーンを見て分からないようなヤツは、そもそも俺の映画が分からない」っていうね。


 そんなモン、分かるハズがない(笑)。


 僕は映画館で見ても分からなかったですし、VHSで見ても分からなかったですし、DVDで見ても分からなくて、今回のこの企画用にブルーレイでみて「あれ?」ってなって、「あ、そうか!」と。

 それもやっぱり、あらかじめ鈴木敏夫がラジオで言っていた「サンとアシタカは、ちゃんと○○○○してる」っていうのを聞いた上で このシーンを考えると「あ、そういう意味なのか」というのが分かるように出来ているんで。


 本当に必要な事は描く。

 つまり、こういう部族で、別れで、夜に男女が会っているっていう事は、もう関係があったということだと。

 だから “関係があった” という事実は描きたい。

 しかし、それを表現はしたくないっていうですね。


 この宮崎の描き方なんですね。

 なので、この “アシタカ伝説” という、土面の所に「我らの先祖の偉大さ」みたいなものが刻み付けられているのは、それはカヤが血筋を残しているからであって。

 
 宮崎さんも聞かれたそうです。

 「何でアシタカは、もののけ姫のサンとイチャイチャするんじゃなくて、カヤの待つ村に帰ってあげないんですか?」と聞かれたそうです。

 そしたら、「それは女性記者にも聞かれたし、アニメーターのスタッフの女の子にも聞かれたんだけども、そんなのは別に俺が描いてないだけだ」と。


 「この映画の中で描いてないだけで、あの後でアシタカは村に帰ったかもしれないし、それどころかサンを連れて帰ったかもしれない」。

 「サンを連れて帰って、カヤと会わせて、カヤとサンの両方を嫁にしたかもしれない」と言ってるんです。

 「なんでかっていうと、それがこの世界だし、そういう話なんです」と。


 「王族の話だから、そうなんです」っていうふうに言ってるんですけども。

 やっぱり僕らは、「そういう事を言われてみりゃ、そうかな」と。

 「あっ、古代日本の王だから、確かにそうかな」って思うんですけども、それを言われるまで思わないじゃないですか(笑)。


 現代人の感覚で見てるから、「サンを連れて帰って、両方を嫁にするって何よ!?」って思っちゃうわけですね。


 だから『真田丸』のなかで、「真田幸村って武将は、何人も何人も嫁がいて、側室がいた」って内容をNHKのドラマの中では一切それを描かないのと同じように、「描かなくても、分かっている人は分かっている」って描くのとの違い。


 宮崎さんも、そこらへんは “そういう事” を描かないんだけども、「もしそこが気になるんだったら、アシタカは田舎に帰ったって事にしても構いません。 その時はサンも連れて帰って、嫁が二人という状態になったでしょう」というふうに言ってるわけですね。

 
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