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「【『王立宇宙軍』で作ろうとした“完璧な異世界” 3 】 文字の設定は全体の数百分の1に過ぎない」
ロケット発射直前の風景として “ニキシー管” という真空管の中に細いネオンが入っていて、これの一部が光ったりすることで数字を表すデジタル機器を見たことがある人もいるでしょう。
こういう部分に使いました。
だけど、実はこの文字についての話って、『王立』を作る時に考えた設定全体から見れば、本当に何百分の1なんですよね。
たとえば、このシーンですね。
なぜ、こんなシーンが出来たのか?
こういう設定はいかにして作られたのか?
たぶん、このカットを見た人は、一発で「ああ、これは現実とは違う世界なんだ」とわかるくらいの力があるんですけども。
こういうものは、どうやって作られたのかという話をします。
このシーンを描いた庵野秀明と、後で「いやあ、しまったなあ」とか「でも、たぶん、誰も気が付かないから、このままでいきましょうよ。これをリテイクしてたらキリがない」と言い合ったようなシーンなんです。
でも、僕、3日くらい前に、深夜1人で『王立宇宙軍』を見た時に思ったんですよ。
「なんで当時の俺は、これを “誰でも見たらわかる” と思ってOKを出したんだ!?」と(笑)。
「俺も山賀も馬鹿なんじゃねえか!?」なんて思いながら…
…でも、まあ、最後まで見たら「いや、これ、よく最後まで作ったなあ」と、自分を褒めることで、ようやっと心が落ち着いたんですけど。だけど、見てる最中は、本当に「こんなもん、伝わるはずないよ!」って思ってたんですよね。
「あの時の俺って、絶対に無理してたよな」と。
心のどこかで「うん、これは伝わらないかもしれない」と思いながら作ってたよな、と(笑)。
まあ、そういう話もあるんですよね。
そんな話も、ほんのちょっとだけします。
あくまでも「ほんのちょっとだけ」ですよ。
もう本当に、こんなもん全部やってたら、僕は死んでしまいますから(笑)。
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いかがでしたか?
「え?!それってどういうこと?」「そこのところ、もっと詳しく知りたい!」という人は、どんどん、質問してみて下さい。
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/10/17
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「【『王立宇宙軍』で作ろうとした“完璧な異世界” 3 】 文字の設定は全体の数百分の1に過ぎない」
文字というのは、まず最初に、言い伝えを図案化した紋章があり、その紋章から象形文字が生まれて、その象形文字から毛筆文字が生まれて、次に活字が生まれる、といった時代ごとの変化があります。
これを更に応用するとどうなるのかというと。
これも、八王子で展示されている資料なんですけど、『王立』に出てきた “デジタル文字” の表ですね。
王立の世界の文字を、更にデジタル機器が再現するためにドットに起こされた文字です。
王立の世界の文字を、更にデジタル機器が再現するためにドットに起こされた文字です。
ロケット発射直前の風景として “ニキシー管” という真空管の中に細いネオンが入っていて、これの一部が光ったりすることで数字を表すデジタル機器を見たことがある人もいるでしょう。
こういう部分に使いました。
あとは、白黒の丸いモニターにロケットが映ってて、発射までのカウントダウンの数字が表示されているんですけど、こういう部分での数字として、このようなデジタル数字を使っています。
・・・
こんなふうに、異世界の文字を考える時というのは、1つの言語やパターンを作り込んだだけで安心するのは甘いんですよね。
日本語でも、漢字、平仮名、カタカナ、数字、アルファベットと、最低でも5つのパターンがあるんです。
僕らの言語体系では「カタカナを使って表されるものは外来語である」とか、もしくは「アルファベットそのものを使って表現すると、ネイティブなニュアンスが強めである」というような隠れた意味がありますよね。
『王立』という映画の世界の文字というのは、こういった、言語というものが本質的に持っている “多様さ” まで含めて考えているんです。
「1つの文字体系が千年くらいの歴史の中で、象形文字から毛筆文字、活字、さらにはデジタル文字というふうに移り変わっていった」ということを、1つの画面内、1つのシーン内で、色々なパターンで見せることで表現しようとしてるんですね。
・・・
まあまあ、そんな話をしている間に、もう30分近く経っちゃいました。
文字の解説をしているだけで無料部分が終わっちゃうんですよ。
だけど、実はこの文字についての話って、『王立』を作る時に考えた設定全体から見れば、本当に何百分の1なんですよね。
後半では、さらに映画のシーンの実例を見せながら「なぜ、こうなったのか?」というのを説明しようと思います。
たとえば、このシーンですね。
これは、映画の1時間30分くらいのクライマックスシーンで「追いかけてきた清掃車がドーンと突っ込んでてきて、シロツグが駅の構内から外へ逃げた」という場面です。
沈む夕日をバックに、背景には複雑な形の鉄塔みたいなものがズラーッと並んでいます。
こんな景色の中を主人公のシロツグが走っていくという、ちょっと美しいシーンでもあるんですけど。
こんな景色の中を主人公のシロツグが走っていくという、ちょっと美しいシーンでもあるんですけど。
なぜ、こんなシーンが出来たのか?
こういう設定はいかにして作られたのか?
たぶん、このカットを見た人は、一発で「ああ、これは現実とは違う世界なんだ」とわかるくらいの力があるんですけども。
こういうものは、どうやって作られたのかという話をします。
・・・
あとは、最初にも言った通り “言いたくない話” もしましょう。
たとえば、このシーンは明らかな失敗なんですよ。
これ、戦闘シーンとして結構有名な「共和国軍の戦闘機の機関銃の弾が、王国の戦闘機に当たる」という場面です。
ここ、本当に綺麗に、弾が当たったところだけ翼にバババっと穴が開いて、左の翼がバチンと切れて墜落するシーンです。
ここ、本当に綺麗に、弾が当たったところだけ翼にバババっと穴が開いて、左の翼がバチンと切れて墜落するシーンです。
結構カッコいいシーンなんですよ。
ところが、これはもう大失敗です。
このシーンを描いた庵野秀明と、後で「いやあ、しまったなあ」とか「でも、たぶん、誰も気が付かないから、このままでいきましょうよ。これをリテイクしてたらキリがない」と言い合ったようなシーンなんです。
「これの何が失敗なのか?」という話も語りたいと思います。
・・・
他には “テーマ” ですね。
『オネアミスの翼』という作品自体が持っているテーマというのも、絵を見せながら話さないと、なかなか説明しにくいところがあるんですけど、やってみようと思います。
『オネアミスの翼』という作品自体が持っているテーマというのも、絵を見せながら話さないと、なかなか説明しにくいところがあるんですけど、やってみようと思います。
……とはいえ、あんまりね、自分たちの作品のテーマって語りたくないんですよ。
僕、今回『王立宇宙軍』の話をすると決めてから「さあ、どう話そうか?」と思った時に、ようやっと、なぜ宮崎駿や鈴木敏夫が自分の映画のテーマを話さないのかというのが分かったんですよ。
そして「普段、僕がやっていることが、どれくらい彼らにとって嫌なことなのか」というのもよく分かったんです(笑)。
たしかに、作品のテーマを他人に解説されるのって、嫌なものなんですよ。
いや、作ってる側としては、隠してるわけでも何でもないんです。
むしろ、前から言ってる通り「テーマなんて映画を見たら誰にでもわかるだろう」というつもりで作っているんです。
宮崎駿も高畑勲も、そう思って作ってるんですよ。
むしろ、前から言ってる通り「テーマなんて映画を見たら誰にでもわかるだろう」というつもりで作っているんです。
宮崎駿も高畑勲も、そう思って作ってるんですよ。
でも、僕、3日くらい前に、深夜1人で『王立宇宙軍』を見た時に思ったんですよ。
「なんで当時の俺は、これを “誰でも見たらわかる” と思ってOKを出したんだ!?」と(笑)。
「俺も山賀も馬鹿なんじゃねえか!?」なんて思いながら…
…でも、まあ、最後まで見たら「いや、これ、よく最後まで作ったなあ」と、自分を褒めることで、ようやっと心が落ち着いたんですけど。だけど、見てる最中は、本当に「こんなもん、伝わるはずないよ!」って思ってたんですよね。
いや、作ってた時は「絶対に伝わる」と思って作ったんですよ?
バンダイの山下社長と話した時も「これで絶対に伝わります!」と力説したんですけど。
バンダイの山下社長と話した時も「これで絶対に伝わります!」と力説したんですけど。
「あの時の俺って、絶対に無理してたよな」と。
心のどこかで「うん、これは伝わらないかもしれない」と思いながら作ってたよな、と(笑)。
まあ、そういう話もあるんですよね。
だからこそ、ジブリの人たちは自分の作った作品のことを、あれこれ説明しないし、それを勝手に説明している僕に対して「嫌なヤツだ」と思うのも仕方がないんですよね。
僕だって、これから話す後半の話を他人にされたら、メチャクチャ嫌ですから。
そんな話も、ほんのちょっとだけします。
あくまでも「ほんのちょっとだけ」ですよ。
もう本当に、こんなもん全部やってたら、僕は死んでしまいますから(笑)。
では、今日の無料公開分はここまでです。
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