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「【 ZOZOTOWN前澤氏の月旅行について 1 】 あれは “月旅行” とは呼べない」
ここに地球の模型が置いてあります。
この模型は直径13センチ。
つまり、この模型は1億分の1の縮尺だと思ってください。
地球と比べて、遥かに小さいです。
地球と月がどれくらい離れているかというと、これらを結んだ紐の長さが、1億分の1での距離になっています。
月と地球の距離は37万キロですから、3.7m離れてます。
1億分の1の縮尺で表現すると、月があるのはこの辺なんですね。
地球と月というのは、これくらい離れているんです。
この紐の真中くらいの位置にあるのかというと、そんなことないんです。
国際宇宙ステーションというのは、地球の表面から400kmしか離れていません。
つまり、この1億分の1の縮尺で言うと、4mmちょっとくらいです。
だいたい “ミカンの皮の薄いところ” くらいですかね。
そこら辺にちょこっと浮いているのが国際宇宙ステーションです。
と、聞いて「えっ!? 人工衛星って、そんなに低いところを飛んでるの!?」って思ったかもしれませんが、それは違います。
人工衛星、特に静止軌道の人工衛星というのは、赤道上の3万6千kmくらいのところを飛んでいるので、一応、この縮尺だと36cmくらいのところにあるんです。
ところが、宇宙ステーションというのは、大気圏の少し上辺りを飛んでいるようなものなんです。
こういう模型を見せられて、3.7mも離れて見せて「ほら、こんなに遠い!」って説明されたら、地球と月ってメチャクチャ離れているように見えるでしょ?
でも、案外そんなことないんです。
「だったら、月まで行くには、いったいいくらくらい掛かるんだ!?」って考えちゃいますよね。
だけど、実はそうでもないんですよ。
これが、アポロ計画でのロケットの軌道図です。
地球から発射されて、衛星軌道に乗って、加速して月に向かうところまでは一緒なんですけど。
月の周りを回って、そこからもう一度加速して地球に帰ってくるというコースなんです。
専門の人から見たら、この差はエラい違いなんです。
「月まで思いっきり跳ねて、落ちてきている」のと同じなんです。
こういうのを、大雑把に言って弾道コースと呼びます。
宇宙空間の軌道というのは、一度 乗ってしまえば、放っといても乗りっぱなしなんですよ。
スペースX社のロケットを使った前澤さんの旅行というのは、高速バスみたいなものに乗って、月というインターチェンジで降りずに、そのまま高速道路を通過して自宅に戻ってきているだけなんです。
正しくは「熱海の辺りを通った」なんですよ(笑)。
一旦、料金所で降りて、最悪、自動車から降りなくてもいいから、その土地で一息つけば、それは「熱海に行った」だと思うんですけど。
高速から降りずにそのまま帰ってきたんだったら、「熱海の辺りを通った」だと思うんですよね。
今、彼の会社は本当にガタガタになってるんですけども(笑)。
イーロン・マスク自身が「僕はもう、二度と麻薬はやりません!」って宣言して、テスラ社の自動車生産ラインを整備して、あんな仮設住宅のテントみたいなところで自動車を作るんじゃなく、ちゃんとした工場で作ることにして、バックオーダーもきちんとこなして儲かったら、話は違ってくるかもしれませんけど。
それでも、ロケットエンジンの研究って、こないだホリエモンが失敗したみたいに、メチャクチャ難しいんですよね。
月面に着陸したから。
アポロ8号に関しては、今回の前澤さんのプランと同じように、月の周りを回ってきただけなんですけど。
ちゃんと月の近くで逆噴射エンジンを掛けて、月のパーキング・オービット(周回軌道)に乗って、地球からの電波が届かないところで独自計算をしてロケットエンジンを吹かして、もう一度トランスファー軌道(地球帰還軌道)に乗ったんです。
そんな、かなり難しいことを、船内に2つ3つ積んであった “ファミコン” 並の処理能力しかない当時のコンピューターを使ってやったので、「そりゃすごいな」って思ったんですけども(笑)。
にも関わらず、これを「熱海に行った」というのは、「アメリカに行きたいかー!?」でお馴染みの『アメリカ横断ウルトラクイズ』で、アンカレッジの上空で出されたクイズに不正解したおかげで、そのまま飛行機から降りずに日本に帰るのと同じなんですよ。
福留さんから「アメリカを目の前にして残念だなあ。みんな、来年もまたやろうな!」と言われる、あれと全く同じなんですよ。
「月の周回軌道に入っていなければ、月に行ったことにはならない」んです。
だけど、今、出回っている記事の中でそこにツッコんでいる記事を僕は全く見たことがない。
前澤さんというのは、業界ですごく力を持っているので、「あれ、本当は月旅行じゃないぞ」とは、誰も笑わないんですよね。
取材に対して「いやあ、俺にはそんな金はないから、行かないよ」なんて冗談めかして言いながらも「……まあ、金があっても行かないけどね」なんて言ってるんですよ。
彼はあれが月旅行とは言えないって知ってるからですね(笑)。
「月旅行に行く」と思っている人は、錯覚ですという話です。
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