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「【『ホモ・デウス』とはどんな本か? 2 】 21世紀においては疫病も戦争も “対処可能な問題” 」
僕も、最初に見た時は、これが何かよくわからなかったんですけど、要するに「ペストが終わってくれてありがとう」という塔なんですね。
それも「戦って勝利した」ではなくて、「なんとか通り過ぎた! 良かった、良かった!」という記念塔なんです。
さっきの飢餓の話を覚えてますか?
1693年というのは、フランスで大飢饉があった年です。
つまり「ペストが終わって14年掛かりで塔を立ててたら、それと同時期に大飢饉が始まって、また人口の4割ぐらいが死んじゃった」ということなんですよ。
皮肉なことに、17世紀の末というのは、そういう時代でもあったわけですね。
だけど、こんなとんでもないペストですら人類の歴史上、最悪の伝染病ではありません。
この時、アフリカから運ばれてきた奴隷の中に “天然痘” を患っていた男がいました。
その奴隷はセンポワランという小さい町で売られて、そこで潜伏期間を終えた天然痘が発症したんです。
その結果、わずか10日間で、センポワランの町は全滅しました。
スペインの艦隊は3月5日に上陸したんですけど、半年後の10月には、天然痘は当時のアステカ帝国の首都にまで広がり、それから2か月余りでアステカ帝国の人口の3分の1が死に絶えました。
この時、皇帝も死んでしまいました。
なので、「スペインとの戦争で死んだ」というのに加えて、もう1つ「天然痘との戦いで中部アメリカ文明は滅んだ」と言われています。
さらに、スペイン人が “インフルエンザ” と “はしか” を持ちこんだこともあり、その50年後には人口200万人を切ってしまいました。
塹壕戦ってわかりますか?
第一次世界大戦というのは “機関銃” が生まれた戦争であり、同時に “鉄条網” が生まれた戦争なんですね。
で、この間、戦場にはいろんな物資が届けられることになります。
まさに、世界中から戦場に物資が集められたんです。
「第一次世界大戦こそ、人類の歴史初のグローバルネットワークの戦争だ」と言われたんですね。
狭いフランス北部の塹壕の一部に、世界中からの物資がバーっと集中して、さらに、そこで使った空の容器や、それを運んだ人間が、またバーッと世界中に散っていく。
その結果、この塹壕で流行っていた悪性のインフルエンザ、通称 “スペイン風邪” というのが、世界中にばらまかれることになったんです。
日本でも、全人口の4割が感染して、総人口の1割が死んでしまいました。
これが100年前の出来事です。
このスペイン風邪は、たった1年で1億人を殺しました。これは当時の世界人口20億人の5%に相当します。
この100年前のとんでもない出来事を思うと、『アベンジャーズ・インフィニットウォー』は絵空事ではないなと思いました。
地球人口の3分の1に伝染しましたからね。
1979年、世界保健機構WHOは、メキシコを壊滅させた天然痘の根絶を宣言しました。
その10年前の1969年には、まだ、天然痘で2500万人ぐらい死んでいたんですけど、今世紀に入ってからは、感染した人も死んだ人もゼロです。
他にも、“SARS” とか、“鳥インフルエンザ” とか、“エボラ出血熱” とか、みんな怖い伝染病の話をいろいろ聞いているじゃないですか?
「パンデミックが起こる!」って、散々脅されてましたよね?
でも、結局、そういう事態は起こらなかったですよね。
これらも、発生してから数年の間に押さえつけられて、WHOにより終結宣言が出されています。
しかし、今や人類の死因のトップ3は “心臓病” と “ガン” と “老衰” なんですよ。
人類はすでに、長生きし過ぎているから心臓病に掛かるし、ガンが発症するし、老衰になる。
現代では、これらが3大死因になってしまうという時代になってしまいました。
おまけに、2015年にイギリスで発見された “テイクソバクチン” という、まったく新しい抗生物質があります。
これは、すさまじく強力な抗生物質で「今現在、地球上に存在するあらゆるバクテリアは、このテイクソバクチンへの耐性を持っていない」と言われています。
しかし、そんな戦争すらも、第二次世界大戦の後は、どんどん減りつつあるんです。
この核抑止論というのは、「核兵器を作ってしまったおかげで、一回、戦争を始めちゃったら、地球上すべてを巻き込んだ全滅戦争になってしまうようになった。 だから、簡単に戦争を起こせなくなった」という、アメリカ人なんかがよく言う能天気な意見であって、日本人としては「そうか?」って思うんですけども。
イスラエルという国が、まだ成立できているのは、核兵器のおかげな気もしますし、リアリティのある言葉だと思います。
古代農耕社会では15%も死んでいたところから、20世紀に入ると5%になり、21世紀に入ったら1%になってしまったんですね。
で、その62万人の内訳としては、戦争で12万人、残りの50万人は犯罪で死んでいます。
これに対して、自殺した人は80万人。“糖尿病” で死んだ人は150万人と言われています。
でも、知識というのは戦争では奪い取れない。
そして、この知識が、今よりももっと重要な経済基盤になると、戦争で得られるものはどんどん減っていく。
コンゴを侵略した理由は「“コルタン” というレアメタルの鉱山を奪い取るため」で、この戦いは、第二次コンゴ戦争、あるいは、アフリカ大戦と呼ばれています。
ハラリは「このような戦争が起こるのは、アフリカという土地が、まだ地下資源などの “物” による経済だからだ」と言っています。
シリコンバレーには富を生み出すシリコンの鉱脈なんかないし、そこでAppleとか、FacebookとかGoogleの本社を奪ったとしても、何の得にもならない。
中国はそんなことをするよりも、シリコンバレーにあるAppleやMicrosoftと手を組めば、ルワンダがコンゴから奪った鉱山の年間収益である2億ドルを、わずか1日で稼ぐことができる。
なので、先進国であればあるほど、戦争というのは無意味化する。
世界が平和になったのは「平和な方が儲かる上に、管理が簡単だから」だ。
「平和というのは予想できるけど、戦争というのは予想できないとわかったから」だ、と。
これについてハラリは、「ドイツのメルセデスベンツ社の年次報告には、来年度はポーランドに侵攻して安い労働力を手に入れよう、なんて書かれていないんですよ」なんて、嬉しそうに書いてるんですけど。
キッツい “ユダヤジョーク” ですよね(笑)。
第二次世界大戦が終わるまで、どの国も次の戦争の準備をやっていて、どの国も「こういう兵器の開発が済んだら、そろそろこの国と戦争を始めよう」と当たり前のように考えていたんです。
それが、「戦争はやって当然」という考え方から、「戦争は避けるべきアクシデント」に変わってきたんです。
その理由は「管理ができないから」ですね。
結果、今や戦争は、中東やアフリカなどの “いまだに戦争が起きる土地だけの現象” になってしまったわけですね。
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いかがでしたか?
「え?!それってどういうこと?」「そこのところ、もっと詳しく知りたい!」という人は、どんどん、質問してみて下さい。
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/09/25
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「【『ホモ・デウス』とはどんな本か? 2 】 21世紀においては疫病も戦争も “対処可能な問題” 」
次は、感染症と疫病の話。歴史上もっとも有名な疾病についての話です。
これは、ウィーンの “ペスト塔” というものです。
大理石と金属でできた、10数メートルもある立派な建物です。
こういったペスト塔って、ヨーロッパに行くと、結構、街のそこらへんに建っているんですよ。
こういったペスト塔って、ヨーロッパに行くと、結構、街のそこらへんに建っているんですよ。
僕も、最初に見た時は、これが何かよくわからなかったんですけど、要するに「ペストが終わってくれてありがとう」という塔なんですね。
それも「戦って勝利した」ではなくて、「なんとか通り過ぎた! 良かった、良かった!」という記念塔なんです。
これは、1679年にウィーンで猛威を振るったペストの流行が終わたことを記念して、マリア・テレジアの祖父である当時の皇帝レオポルド一世が建てた塔です。
最初は木で作られたんですけど、あまりに嬉しかったので、14年掛かりで建て直して、93年にメチャクチャ立派な塔に生まれ変わりました。
さっきの飢餓の話を覚えてますか?
1693年というのは、フランスで大飢饉があった年です。
つまり「ペストが終わって14年掛かりで塔を立ててたら、それと同時期に大飢饉が始まって、また人口の4割ぐらいが死んじゃった」ということなんですよ。
皮肉なことに、17世紀の末というのは、そういう時代でもあったわけですね。
・・・
もともと、ペストというのは、14世紀に中国で発生しました。
これによって、人口のおよそ半分が死んだそうです。
本当に、三国時代での戦死者とか目じゃないですね。
巨大な中国の人口の半分を減らして、その後、ヨーロッパに伝わった、と。
これによって、人口のおよそ半分が死んだそうです。
本当に、三国時代での戦死者とか目じゃないですね。
巨大な中国の人口の半分を減らして、その後、ヨーロッパに伝わった、と。
最終的に、ペストはヨーロッパの人口の3割を滅ぼしました。
イタリアの北部では住民がほとんど全滅しました。
イングランドでは人口の40%が死滅。
イタリアのフィレンツェでは5割の人が死んでいます。
イタリアの北部では住民がほとんど全滅しました。
イングランドでは人口の40%が死滅。
イタリアのフィレンツェでは5割の人が死んでいます。
だけど、こんなとんでもないペストですら人類の歴史上、最悪の伝染病ではありません。
・・・
時は1520年。
16世紀の頭ですね。
日付も分かっています。
3月5日に、スペインの艦隊がメキシコに到着しました。
16世紀の頭ですね。
日付も分かっています。
3月5日に、スペインの艦隊がメキシコに到着しました。
この時、アフリカから運ばれてきた奴隷の中に “天然痘” を患っていた男がいました。
その奴隷はセンポワランという小さい町で売られて、そこで潜伏期間を終えた天然痘が発症したんです。
その結果、わずか10日間で、センポワランの町は全滅しました。
そして、全滅した町から、いろいろな人が逃げた結果、近くの町に次々と天然痘が伝染していったんですよ。
で、近くの小さな町も次々と全滅していきました。
なにせ、当時のラテンアメリカの誰も、天然痘の免疫というのを持っていなかったんですよ。
で、近くの小さな町も次々と全滅していきました。
なにせ、当時のラテンアメリカの誰も、天然痘の免疫というのを持っていなかったんですよ。
スペインの艦隊は3月5日に上陸したんですけど、半年後の10月には、天然痘は当時のアステカ帝国の首都にまで広がり、それから2か月余りでアステカ帝国の人口の3分の1が死に絶えました。
この時、皇帝も死んでしまいました。
なので、「スペインとの戦争で死んだ」というのに加えて、もう1つ「天然痘との戦いで中部アメリカ文明は滅んだ」と言われています。
このたった1年間で、当時、2100万人いたと言われているアステカ帝国の人口は、1400万人に減りました。
さらに、スペイン人が “インフルエンザ” と “はしか” を持ちこんだこともあり、その50年後には人口200万人を切ってしまいました。
つまり、人口の9割が伝染病で死んだわけですね。
・・・
しかし、歴史上最悪のパンデミックというのは、実は20世紀に起きたんです。
それが第一次世界大戦です。
フランス北部の “塹壕戦” では、世界中から物資が集まっていました。
フランス北部の “塹壕戦” では、世界中から物資が集まっていました。
塹壕戦ってわかりますか?
第一次世界大戦というのは “機関銃” が生まれた戦争であり、同時に “鉄条網” が生まれた戦争なんですね。
それまでの戦争というのは「勇敢な騎兵たちがパッカパッカと走って行って、100人とか200人ぐらいが死んだら大被害」みたいなものだったんですけど。
第一次世界大戦というのは、世界初の “国家総力戦” であり、おまけに新兵器である鉄条網で、お互いの陣地を守っていたんです。
第一次世界大戦というのは、世界初の “国家総力戦” であり、おまけに新兵器である鉄条網で、お互いの陣地を守っていたんです。
その鉄条網を超えようとして、引っかかって怪我をしている兵隊たちを狙って、1秒間に100発ぐらい弾丸を撃てる機関銃をバリバリ撃つ。
そんな皆殺しが始まってしまったんです。
なので、これを避けるために “塹壕” と呼ばれる溝を何十キロも掘って、その中でお互いがじっと我慢して戦っていたんです。
「わずか5メートル前進するのに2か月ぐらい掛かり、そこからまた3か月ぐらい掛けて3メートルぐらい後退する」なんて戦いを、4年くらい続けたんですね。
そんな皆殺しが始まってしまったんです。
なので、これを避けるために “塹壕” と呼ばれる溝を何十キロも掘って、その中でお互いがじっと我慢して戦っていたんです。
「わずか5メートル前進するのに2か月ぐらい掛かり、そこからまた3か月ぐらい掛けて3メートルぐらい後退する」なんて戦いを、4年くらい続けたんですね。
で、この間、戦場にはいろんな物資が届けられることになります。
第一次世界大戦というのはヨーロッパでやっていたんですけど、そこに送られる物資は地球全体から集まっていました。
まず、中東から石油が来て、インド、アメリカ、オーストラリアからは食料や衣服が来ました。
南米のアルゼンチンからは牛肉が来て、アフリカのコンゴからは武器とか弾薬に使う銅が、アジアのマレー半島からはゴムが来ました。
南米のアルゼンチンからは牛肉が来て、アフリカのコンゴからは武器とか弾薬に使う銅が、アジアのマレー半島からはゴムが来ました。
まさに、世界中から戦場に物資が集められたんです。
「第一次世界大戦こそ、人類の歴史初のグローバルネットワークの戦争だ」と言われたんですね。
狭いフランス北部の塹壕の一部に、世界中からの物資がバーっと集中して、さらに、そこで使った空の容器や、それを運んだ人間が、またバーッと世界中に散っていく。
その結果、この塹壕で流行っていた悪性のインフルエンザ、通称 “スペイン風邪” というのが、世界中にばらまかれることになったんです。
・・・
(中略)
この第一次世界大戦におけるスペイン風邪というのは、今からちょうど100年前の1918年の秋から世界各地で流行り始め、数か月のうちに地球人口の3分の1に伝染しました。
インドでは全人口の5%が死んで、タヒチでも15%の人が死にました。
さっきも話した、砲弾や弾丸の先端に使うための銅を採取していたコンゴにも、この病気は流れていって、コンゴの銅山の労働者の5人に1人が死んでしまいました。
さっきも話した、砲弾や弾丸の先端に使うための銅を採取していたコンゴにも、この病気は流れていって、コンゴの銅山の労働者の5人に1人が死んでしまいました。
日本でも、全人口の4割が感染して、総人口の1割が死んでしまいました。
これが100年前の出来事です。
このスペイン風邪は、たった1年で1億人を殺しました。これは当時の世界人口20億人の5%に相当します。
『アベンジャーズ・インフィニットウォー』というのをみなさん見ましたか?
あの映画の中に、「宇宙の人口を半分殺す」という、究極の悪党 “サノス” というキャラクターが出てきます。
あの映画の中に、「宇宙の人口を半分殺す」という、究極の悪党 “サノス” というキャラクターが出てきます。
こいつは、みんなが思いつくSF映画に出てくる一番悪いキャラクターなんですけども、スペイン風邪というのは、それとほとんど同規模のことを100年前に実際にやっているわけですね。
この100年前のとんでもない出来事を思うと、『アベンジャーズ・インフィニットウォー』は絵空事ではないなと思いました。
地球人口の3分の1に伝染しましたからね。
ちなみに、「第一次世界大戦は歴史上最悪の戦争」と言われたんですけども、この戦争での死傷者は、5年間で4千万人です。
この数字は、スペイン風邪が1年間で殺した人数の半分にもなりません。
・・・
ところが、さっきの飢餓の話と同じように、その後の50年で感染症の発症率も、その影響も、劇的に減りました。
1979年、世界保健機構WHOは、メキシコを壊滅させた天然痘の根絶を宣言しました。
その10年前の1969年には、まだ、天然痘で2500万人ぐらい死んでいたんですけど、今世紀に入ってからは、感染した人も死んだ人もゼロです。
他にも、“SARS” とか、“鳥インフルエンザ” とか、“エボラ出血熱” とか、みんな怖い伝染病の話をいろいろ聞いているじゃないですか?
「パンデミックが起こる!」って、散々脅されてましたよね?
でも、結局、そういう事態は起こらなかったですよね。
これらも、発生してから数年の間に押さえつけられて、WHOにより終結宣言が出されています。
いまだに蚊が媒介する “マラリア” では、年間数百万人が死んでいます。
これは事実なんですけど。
これは事実なんですけど。
しかし、今や人類の死因のトップ3は “心臓病” と “ガン” と “老衰” なんですよ。
これまで、心臓病とかガンが死因のトップに上がってこなかったのは「それまでの人間は、そこまで長生きしなかったから」です。
もちろん、20世紀に入るまでは餓死と伝染病と戦争がトップ3を占めていたようなものでしたから。
もちろん、20世紀に入るまでは餓死と伝染病と戦争がトップ3を占めていたようなものでしたから。
人類はすでに、長生きし過ぎているから心臓病に掛かるし、ガンが発症するし、老衰になる。
現代では、これらが3大死因になってしまうという時代になってしまいました。
おまけに、2015年にイギリスで発見された “テイクソバクチン” という、まったく新しい抗生物質があります。
これは、すさまじく強力な抗生物質で「今現在、地球上に存在するあらゆるバクテリアは、このテイクソバクチンへの耐性を持っていない」と言われています。
つまり、ここまでをまとめると、「人類にとって、数万年続いていた感染症や伝染病を恐れる時期は、もう終わってしまった」ということなんです。
すでに我々は、感染症や伝染病で死ぬリスクを、ほとんど考えなくてよくなってしまったんです。
・・・
では、これまで人類を悩ませてきた問題の3つ目である “戦争” はどうか?
戦争とは、いつの時代も人類にとっての最大の恐怖でした。
日本人は第二次世界大戦が終わってからの70年以上「戦争は何よりも怖い」とか、「人類最悪の罪だ」と教わってきました。僕もそういうふうに教わりました。
日本人は第二次世界大戦が終わってからの70年以上「戦争は何よりも怖い」とか、「人類最悪の罪だ」と教わってきました。僕もそういうふうに教わりました。
しかし、そんな戦争すらも、第二次世界大戦の後は、どんどん減りつつあるんです。
これについてハラリは「戦争がなくなった原因の1つは、核兵器による抑止力だ」と言っています。
この核抑止論というのは、「核兵器を作ってしまったおかげで、一回、戦争を始めちゃったら、地球上すべてを巻き込んだ全滅戦争になってしまうようになった。 だから、簡単に戦争を起こせなくなった」という、アメリカ人なんかがよく言う能天気な意見であって、日本人としては「そうか?」って思うんですけども。
実際にイスラエルに住んでいる人間が言っているんだから、なかなかこれも、腹に来るところがあるんですよね(笑)。
イスラエルという国が、まだ成立できているのは、核兵器のおかげな気もしますし、リアリティのある言葉だと思います。
・・・
ハラリの調べによると、古代農耕時代において人間の死因の15%は戦争だったそうです。
すごいですよね。
農耕時代になる前は “組織的な戦争” なんてものはなかったんですけど、農耕を始めると同時に、人は自分の土地を守らなければいけなくなり、大規模な戦争というのが起こるようになった。
そして、人間の死因の15%ぐらいは、この戦争や戦いによるものだった、と。
農耕時代になる前は “組織的な戦争” なんてものはなかったんですけど、農耕を始めると同時に、人は自分の土地を守らなければいけなくなり、大規模な戦争というのが起こるようになった。
そして、人間の死因の15%ぐらいは、この戦争や戦いによるものだった、と。
しかし、20世紀に入ってから、戦争以外のものも全て含めた “暴力” によって死ぬ人というのは、人類の5%になってしまいます。
さらに、21世紀に入ると、戦争とか犯罪とか全部含めた暴力で死ぬ人の数は、全体の1%になってしまいました。
古代農耕社会では15%も死んでいたところから、20世紀に入ると5%になり、21世紀に入ったら1%になってしまったんですね。
2012年の1年間で世界中で死んだ人の数というのは6500万人。
その内、暴力で死んだ人は62万人。
1%を切っています。
その内、暴力で死んだ人は62万人。
1%を切っています。
で、その62万人の内訳としては、戦争で12万人、残りの50万人は犯罪で死んでいます。
これに対して、自殺した人は80万人。“糖尿病” で死んだ人は150万人と言われています。
これを指して「いまや、銃の火薬よりも砂糖の方が多くの人を殺している」とハラリは書いています。
・・・
じゃあ、なぜ戦争はなくなりつつあるのか?
これについてハラリは、さっき話したような “核抑止” も原因の1つだと言いながら、その他に「世界経済の基盤が “物” であった時代から、“知識” である時代へとシフトしているからだ」と言っています。
これ、どういうことかというと。
かつての富というのは、穀倉地帯とか、鉱脈とか、油田といった “土地” に由来するような資源だったんです。
かつての富というのは、穀倉地帯とか、鉱脈とか、油田といった “土地” に由来するような資源だったんです。
こういった土地に由来するような資源というのは、戦争で奪い取れるんです。
でも、知識というのは戦争では奪い取れない。
そして、この知識が、今よりももっと重要な経済基盤になると、戦争で得られるものはどんどん減っていく。
「今現在、戦争が起こっているのは、中東やアフリカなどの、物とか土地に由来した“古い経済”に縛られた土地に限定されるようになってきた」とハラリは言っています。
たとえば、1998年に、ルワンダはコンゴを侵略しました。20年前のごく最近の話です。
コンゴを侵略した理由は「“コルタン” というレアメタルの鉱山を奪い取るため」で、この戦いは、第二次コンゴ戦争、あるいは、アフリカ大戦と呼ばれています。
コルタンとは、スマホを作るためとか、バッテリーの寿命を延ばすためなど、いろいろな使い道がある世界戦略物資です。
ルワンダは、この時に奪ったコルタン鉱山で、年間2億ドルの儲けを得ていました。
まあ、そのために戦争を始めたんですけども。
ルワンダは、この時に奪ったコルタン鉱山で、年間2億ドルの儲けを得ていました。
まあ、そのために戦争を始めたんですけども。
ハラリは「このような戦争が起こるのは、アフリカという土地が、まだ地下資源などの “物” による経済だからだ」と言っています。
・・・
ハラリは、こういう思考実験をしています。
たとえば、今、中国がアメリカのカリフォルニアに上陸して、シリコンバレーを奪い取ったとしよう。
しかし、何も意味はない。
アメリカのシリコンバレーを奪ったからと言って、そこには何の資源もない。
しかし、何も意味はない。
アメリカのシリコンバレーを奪ったからと言って、そこには何の資源もない。
シリコンバレーには富を生み出すシリコンの鉱脈なんかないし、そこでAppleとか、FacebookとかGoogleの本社を奪ったとしても、何の得にもならない。
中国はそんなことをするよりも、シリコンバレーにあるAppleやMicrosoftと手を組めば、ルワンダがコンゴから奪った鉱山の年間収益である2億ドルを、わずか1日で稼ぐことができる。
なので、先進国であればあるほど、戦争というのは無意味化する。
世界が平和になったのは「平和な方が儲かる上に、管理が簡単だから」だ。
「平和というのは予想できるけど、戦争というのは予想できないとわかったから」だ、と。
これについてハラリは、「ドイツのメルセデスベンツ社の年次報告には、来年度はポーランドに侵攻して安い労働力を手に入れよう、なんて書かれていないんですよ」なんて、嬉しそうに書いてるんですけど。
キッツい “ユダヤジョーク” ですよね(笑)。
“戦争を行う予定” なんていうのは、今やどの国のスケジュールにも書いていないんです。
だけど、実はこれは、20世紀前半までの世界ではありえなかったことなんですね。
第二次世界大戦が終わるまで、どの国も次の戦争の準備をやっていて、どの国も「こういう兵器の開発が済んだら、そろそろこの国と戦争を始めよう」と当たり前のように考えていたんです。
それが、「戦争はやって当然」という考え方から、「戦争は避けるべきアクシデント」に変わってきたんです。
その理由は「管理ができないから」ですね。
結果、今や戦争は、中東やアフリカなどの “いまだに戦争が起きる土地だけの現象” になってしまったわけですね。
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