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「【『ホモ・デウス』とはどんな本か? 3 】 3大害悪を克服した人類は遂に “神” を目指すことになる 」
なくなりはしないんです。
だけど、今や、戦争での犠牲者は、年間でたったの12万人になりました。
こう言うと、「いや、まだテロがあるじゃないか!」と思う人もいるかと思います。
そうなんですよ。
戦争の次はテロという恐ろしいものがある気がするんですけども、でも、年間のテロでの犠牲者というのは、8000人以下なんですよね。
長い歴史の中で、人類はこの3つの害悪を「解決出来るはずがない」と思っていたんです。
だからこそ、神に祈ったわけです。
国家や政府を作って、家族制度や友情など人間関係というのを信じて、お互いを裏切らないことを、ずっと続けてきたのも、全ては、「この3つは絶対になくならないものだ」と思っていたからなんです。
人間の本能には「生き延びるために、何かの努力していなきゃヤバい!」という不安がプログラムされています。僕らは不安になりやすい猿なんですね。
その結果、「今、残っている問題はなんだろう?」、「どこに落とし穴があるんだ?」という、この不安のエネルギーを、一体何に使えばいいだろうかと、考えることになりました。
おそらく、人類というのは、今、ちょうど、入学試験もテストも授業も全部終わらせてしまって、数百年続く夏休みに入ったんですよ。
だから「夏休みを何に使えばいいだろう?」と考えるわけです。
これについては、Googleの子会社の “Calico” という会社があるんですけど、この会社は「死を解決すること」を目的に、何億ドルというお金を使って研究を進めています。
このエピクロスじいさんは「神々の崇拝は時間の無駄。死後の世界や不滅の魂は存在しない。現世の幸福こそが唯一の目的である」なんて、ものすごいことを言った人なんですよ。
なかなかアナーキーですよね(笑)。
この考え方、エピクロス主義とか快楽主義というふうに言われ、これを信じる者は “エピュキュリアン” と言われました。
このベンサムは「国を豊かにする」ということを言い出したんですね。
「国家の発展のためには、国民は健康でないといけない。だから、国家による医療の充実が必要で、医者や病院みたいなのを作らなければいけない」とか、「経済の発展のために、国民には教養が必要だ。数が数えれなきゃだめだし、時間通りに動けなければいけない。そのためには、学校が必要だ」とか、「戦争をするためには、健康で教育を受けた国民が大量に必要だ」ということで、福祉制度や教育制度を広げようとしました。
国家のための健康とか教育とか福祉というのが、全て “国民の幸福のため” のものになったんです。
あくまでも国家の発展がメインだったことが、全て個人個人のために変わったんです。
ハラリの言う神様というのは、一神教の “全能の神” みたいなものではなく、インドの古代の神様みたいな「遠く離れた人と会話する」とか、「空を飛ぶ」とか、「天気を操る」とか、「死なない」とか、そういう意味での神通力を持った存在だと定義しています。
人間は、この程度のセコい神様になった程度では満足しない、と。
死なない身体や、無制限の幸福の追求のためには、文字通り、自分を神のレベルまでアップグレードしようとしているんです。
これは「病気にならない身体や、いくら食べても太らない身体にするために、自分の遺伝子を操作する」ということです。こういった欲望が、人間にはどんどん生まれてきています。
次に、“サイボーグ工学” です。
これは、ソフトバンクの孫さんが言っているように「自分の脳の中にスマートフォンを埋め込む」とか、「自分の眼に、映像の録画・再生ができるコンタクトレンズを埋め込む」みたいなことです。
これは、やりたがる人はかなり多いと思います。
最後に、“非有機生命を生み出す工学” です。
自分の脳の中身の記憶とかをネットワークに丸々移し替える、みたいなことですね。
この辺のことを「21世紀のこれから、神へのアップグレードとして、人類が目指すことになるだろう」とハラリは言っています。
死なない永遠の身体や、最高に幸福な状態をずっと維持する幸福の追求を実現するためには、アップグレードが必要だ、と。
ホモ・サピエンスというのは、立ち上がっただけの人類であるホモ・エレクトゥスや、ホモ・ネアンデルターレンシスとは根本的に違った種族です。
同じく、アップグレードの結果、神の属性を獲得した人類というのは、それまでのホモ・サピエンスとは、根本的に違った種族となるだろう。
それこそが、神になった猿 “ホモ・デウス” である……というのが、第0章にあたる、ハラリによる長い前置きです。
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