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「【子供には教えてはいけないトトロの正体・3 】 なぜトトロ族は滅んだのか?」
この時代の日本は日本列島ではなく “日本半島” だったんです。
大陸から弓状に突き出した部分、これが縄文以前の日本です。
当時は日本海というのがなく、巨大な湖があるだけで、北海道、本州、九州、四国は全てひとかたまりになっていました。
朝鮮半島との境界も、海峡によって別れていたのではなく、大きめの河が1本流れていただけ。
そして、北海道とシベリアの辺りは完全に繋がっています。
これが2万年前の日本です。
瀬戸内海もありません。
今の日本列島では、このような巨大な森を維持することはできません。
日本が半島だった時代は、本当に巨大な大地だけがある状態だったんです。
だからこそ、神が存在できるスケールの森を育むことができたんですね。
この巨大な森を擁する広い大地があったからこそ、『もののけ姫』に出てくる “犬神” とか “猪神” が存在できたわけです。
あれは西の方、つまり九州を本拠地としていたんですね。
でも、乙事主は『もののけ姫』の中で、「見よ。今の我らの眷族を。身体は小さく、すでに言葉も話せない」と嘆いています。
つまり、乙事主たち猪神の一族は、『もののけ姫』のラストで描かれる人間との直接対決で衰退したわけではないんですよ。
では、なぜ滅びたのか?
……トトロが滅びた理由を説明するためには、『もののけ姫』の話をせざるを得ないんですよね(笑)。
しかし、それが縄文時代に入る頃には、今より+2度、つまりそれ以前の時代から比べると、7度から8度も上がっているんですね。
水というのは寒ければ縮小するし、暑ければ膨張します。
地球が温暖化すると、なぜ海面が上昇するのかというと、「南極の氷が溶けるから」というよりは「海水自体が温度が上がることによって、やや膨張するから」なんですね。
つまり、「今よりも平均気温が5度低い」ということは、「今よりも海面が低い」ということです。
その結果、日本は列島ではなく、半島みたいな形で浮かび上がっていたわけです。
これによって海面が100m近く上昇したと言われています。
この時に、日本の陸地のかなり部分は水没しました。
この時代は、今よりも遥かに多くの土地が海に沈んでいたんです。
乙事主たち猪神やトトロ一族といった古代の日本の神々を育んだ巨大な森も、その大部分が失われてしまったんです。
「昔、この辺は海だった」というのは、この6千年前から7千年前の気温の上昇が原因なんです。
九州の鹿児島の沖の方にある火山なんですけど。
現在も、ドーム部分にマグマが溜まり始めていて危険だと言われている場所です。
7300年前、この鬼界カルデラの大噴火というのがあったんです。
これはもう、本当に「次にこんな噴火があったら、人類は滅ぶんじゃないか?」というレベルの大噴火でした。
これによって、縄文初期の文明は全滅したと言われているんですね。
その結果、彼らは九州付近には住めなくなってしまい、一斉に、東へ東へと移動した。
これ、現実の歴史でもそうなんですよ。
縄文初期の文明これで全滅してますから。
そうやって、日本海が生まれ、南の方から温かい海流が入り込むようになりました。
一方で、北には間宮海峡が出来て、シベリアの冷たい水が入ってくるようになります。
人口もどんどん増えていきます。
その結果、乙事主たちのような猪神は “人類に滅ぼされていく” ことになるんです。
もっと大きな事件があったんですよ。
元々、2万年前から1万年前の日本には、広大な森があった。
それは、当時の日本が半島だったからです。
ところが、それから平均気温が7度も上がってしまったことにより、海位が100mくらい上昇し、森の大部分が失なわれてしまった。
それと同時に、鬼界カルデラの大爆発が起こり、おそらく、九州から中国地方の辺りまで、誰も住めない状態になってしまった。
その結果、古き神々は東へ東へ移動することになるんですけど、この時に “弥生民族” が中国の方から朝鮮半島を経由して日本に上陸してきて、稲作を始め、森をバンバン伐るようになった。
火を嫌うのは、鬼界カルデラの爆発を見ていたからです。
これは、トトロたちの祖先の話でもあるんですよね。
彼らこそが先住民族であり、人類は他所から来た新参者なわけです。
それが、鬼界カルデラの噴火で九州を追われて、6千年前に海面上昇で森が劇的に縮小し、生きる場を失った。
しかし、その後に渡ってきた弥生人たちの農業というのは大規模なもので、太古の森をみるみる伐採して、燃料を作ったり、畑や田んぼに改造したりしたんです。
古代のクヌギとかブナとかの樹木がどんどん失くなって、利用しやすい雑木林に作り変えられました。
だけど、あれは本当の意味での自然ではなく、大規模農業によって一度改造された後の自然なんです。
現在残っている森の内99%は、もう原生林ではなく、農業が作った雑木林に取って代わられています。
トトロたちの先祖である古代の神々は、そんな雑木林では生きられないんですよ。
彼らは原始の森から生まれたような存在ですから。
だから、乙事主が言うように「身体が小さく、言葉も喋れなくなった」んです。
『もののけ姫』の中で、散々「我々はもう終わりだ」とか「これからは身体がどんどん小さくなって、言葉を話す知性もなくなっていくだろう」なんて言われた、その成れの果ての子孫がトトロなんですよ。
そんなふうに、 “ひっそりと生きる方法” を覚えたんですね。
…つまり “僕ら” に見つからないように、ひっそり生きているというわけですね。
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